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【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

藤岡亜弥×寺尾紗穂、清原惟×ゆっきゅん×井戸沼紀美、原田郁子らを迎えて

2026年7月4日(土)、7月11日(土)、7月12日(日)の3日間にわたり、渋谷ヒカリエ 8/COURTで開催した『わたしのまなざし、あなたのまなざし SHIBUYA ART WEEKEND』。

このイベントは、Bunkamuraザ・ミュージアムによる8月26日(水)まで開催中の展覧会『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』(ヒカリエホール)の関連イベントとして、東急株式会社主催、Bunkamura / me and you企画制作でおこなわれました。

クロストーク、音楽ライブ、フォトブックフェア、ワークショップ、渋谷の街の記憶を集める展示などを楽しむ、お祭りのような3日間。この記事では、多様なまなざしに触れたイベントの様子をダイジェストでお届けします。前編の記事では、藤岡亜弥さん×寺尾紗穂さん、清原惟さん×ゆっきゅんさん×井戸沼紀美さんのトーク、原田郁子さんのライブなどが行われたDay1の様子をお届け。

もくじ

Day1
◆まなざしトーク:藤岡亜弥×寺尾紗穂「うつろうことで見えるもの」
◆石内都×竹内万里子『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』開催記念トーク
◆石田克哉×綾智佳×佐藤正子「ギャラリストのお仕事」トーク
◆まなざしトーク:清原惟×ゆっきゅん×井戸沼紀美「映画作品から見るFemale Gazeの地層」
◆まなざしライブ:原田郁子(クラムボン)

Day2後編記事へ
◆10店舗による写真集や書籍、ZINE、雑貨が並ぶ「SHIBUYA PHOTO BOOK FAIR」
◆この街で関わってきた人々のまなざしが交差するミニ展示『わたしと渋谷と』
◆まなざしワークショップ:つめをぬるひと「1本から塗れる“写真爪塗り”」
◆まなざしトーク:長島有里枝×和田彩花「撮る、撮られるの女性のまなざしの現在地」

Day3後編記事へ
◆まなざしワークショップ:小池アイ子「偶然のまなざし」
◆まなざしライブ:浮(ぶい)ライブ

Day1

まなざしトーク:藤岡亜弥×寺尾紗穂「うつろうことで見えるもの」

1日目は、『まなざしの奇跡』展にも出展している写真家の藤岡亜弥さんと音楽家・文筆家の寺尾紗穂さんによるトークからスタート。

広島県出身の藤岡さんは、被爆地としての歴史を感じながら現在の広島を見つめてきたなかで、出身が広島市ではなく呉市であることから、自分がよそ者だという感覚や、わからなさ、恐れも抱えていたと言います。そんな藤岡さんが広島を写した写真集『川はゆく』のなかから、寺尾さんが気になった一枚一枚の背景を聞きつつ、話が広がりました。

【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

藤岡亜弥さん

【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

寺尾紗穂さん

「白いキョウチクトウがわーっと満開で咲いていて、地面にたくさん花が落ちている写真を見たときに、もういなくなってしまった命と残った命を連想しました。いなくなってしまった人たちとも一緒に生きているようなイメージも感じられて、とても好きな1枚です」と、寺尾さん。

藤岡さんは、「何がいい写真になるかはわからないんですけど、なんでもないように見える写真でも、想像できることがたくさんあるというのが大切なんじゃないかと思うんですよ。写真を撮る瞬間は、偶然と出会ってそれを掴み取るようなイメージ。写真は後から見て考えることができるメディアなので、撮った瞬間はこんな当たり前のもの撮ってどうするんだろうと思ったとしても、自分がもう見ることができないものがそこに写ってるっていう意味で、10年後に思わぬ価値を持つことがあると思います」と答えます。

さらに、南洋への関心を出発点に移民の人々への聞き取りをおこない、著書『南洋と私』や『日本人が移民だったころ』などを発表してきた寺尾さんと、東広島で「小田みんぞく事始めの会」を立ち上げ、歴史からこぼれ落ちてしまうような記憶を振り返る活動をしている藤岡さんが、聞き書きについて話す場面も。寺尾さんは「縁のあったテーマや場所で、さまざまな人たちから話を聞きたい。有名な人でなくてよくて、ただ、世界が多様であるということを確認したい。その人がどう生きて、何を感じたかを知りたいと思っています」と話しました。

また、二人が女性というジェンダーにどう向き合ってきたかについてや、街を歩いて写真を撮ってきた藤岡さんと、各地で歌を歌い、聞き取りをしてきた寺尾さんが、自分の身体をさまざまな土地に運び、発信することといった話題にも広がりました。

石内都×竹内万里子『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』開催記念トーク

ヒカリエホールの特設会場では、写真家の石内都さんと、『まなざしの奇跡』展キュレーターの竹内万里子さんによる展覧会開催記念トークが開催。世界各地を巡回してきたこの展覧会の様子や、東京展ならではの特徴、石内さんの初期から現在までの写真との向き合い方や、今回出品した作品などについて、1時間半にわたって話しました。

【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

左から、竹内万里子さん、石内都さん

竹内さんは東京展の開催にあたり、「作家一人ひとりが日本で今、何を見せたいのか」を一番重視してキュレーションしたと説明。「女性はこれまでひと括りにされたり、搾取されたり、といった扱いを受けてきた。一方で、実際には一人ひとりが複雑なアイデンティティや思考を持っていて、それぞれの独創的な世界や異なりをどれだけ発揮できるかが、特に東京展の真髄だと思っています」と、思いを伝えました。

石内さんは、「今回は、私がずっと写真をやってるのと、年が上だから、その責任感で参加しました。責任感なんてないほうがいいのに、残念ながら責任を負っています。ただね、一つ言えるのは、私はどこにも所属してない。先生も生徒も誰もいない。本当にたった一人でやってきたので、すっごく自由なんです。 その自由さが私にとって一番の力になってます」と締めくくりました。

石田克哉×綾智佳×佐藤正子「ギャラリストのお仕事」

1日目の夕方には、『まなざしの奇跡』展の関連企画として『STILL/LIFE 静寂の余韻に』を開催しているBunkamura Gallery 8/が主催の、3名のギャラリストによるクロストークが。

現代美術を紹介する一般公開のギャラリーを続けながら展覧会の企画や出版を手がける、MEMの石田克哉さん。大阪のギャラリー The Third Gallery Ayaを率い、展覧会の企画やアートフェアへの参加を通して日本人アーティストの魅力を世界へ発信する綾智佳さん。株式会社コンタクトの代表で、長年にわたり日本人アーティストの海外展開を支援し、『まなざしの奇跡』展や『STILL/LIFE 静寂の余韻に』展の企画協力もおこなっている佐藤正子さんの3名が登壇。

左から、佐藤正子さん、綾智佳さん、石田克哉さん

それぞれがギャラリーをオープンし写真家たちと関わるようになるまでの経緯から、展覧会を開催して作品を売買するだけでなく、アーティストに寄り添い、マネージメントをも担うギャラリストの仕事について話しました。

Q&Aの時間には「ギャラリストという立場から見て、もっと作品を見たいと思う写真家の共通点は?」「SNSを通して作家と直接つながったり作家から直接作品を買ったりできるなかで、ギャラリーの役割は?」といった質問に、3名が答えました。

まなざしトーク:清原惟×ゆっきゅん×井戸沼紀美「映画作品から見るFemale Gazeの地層」

友人同士でもあるという3名。司会進行を務めた井戸沼さんは、このイベントのタイトル「わたしのまなざし、あなたのまなざし」にちなんで、まず清原さんとゆっきゅんさんの表現者としてのものの見方について触れました。

「ゆっきゅんの楽曲“Oh My Basket!”は誰にも強烈な感情を抱かれなかったスーパーマーケット、まいばすけっとのことを歌にしていますね。惟ちゃんの映画『すべての夜を思いだす』では、主人公が自分の誕生日に仕事を探しにハローワークに出かける様子が描かれています。それぞれ、惟ちゃんやゆっきゅんがまなざさなければ出会えなかったかもしれない存在を描いてくれているな、と思います」。

左から、清原惟さん、ゆっきゅんさん、井戸沼紀美さん

清原さんはこう答えます。「創作物のなかで光の当たりづらい人やもののことを取り上げているっていう話だと思うんですけど、私としては、『光が当たっていないから、自分が光を当てなければ』という感覚はあまりないんです。いま、紀美ちゃんが話してくれた主人公は知珠さんというんですけど、仕事を失ってしまい、ハローワークに行って、あるものを探して街を彷徨ったのが自分の誕生日だった。寂しい一日ではあると思うんですけど、知珠さんを描きたいと思ったのは、そういう人がこの世界にいたら自分自身が勇気づけられるから。いてほしい、一緒にいたい人たちを描きたい気持ちがあります」。

清原惟監督 映画『A Window of Memories』予告編|8月7日(金)公開

ゆっきゅんさんは、「“Oh My Basket!”は、自分のせいで恋人と破局を迎えて、何を見ても悲しくて、自分を受け入れてくれる場所がまいばすけっとだけにはあったっていう女の子の歌なんですね。思いついちゃったから書いてるんですけど、なんで書かなきゃいけないかっていうと、『そういう悲しみを抱えてる人が聴く歌はないかもしれない!』って危機感として迫ってくるんです、自分に。その人の心を死なせるわけにはいかないので、歌にする。まだ歌われていないものを普段から見逃さないようにはしています」と話しました。

さらに「フィメールゲイズ」の話題に。「映画史には、見る主体としての男性、見られる客体としての女性という、男性中心的で二元論的なメールゲイズが横たわっていると言われてきていて、そのカウンターとしてフィメールゲイズが培われてきた文脈がある」と井戸沼さん。

父権社会の無意識と映画形式の関係を説いたローラ・マルヴィによる1975年の論文「視覚的快楽と物語映画」が発表されてからの歴史をはじめ、フィメールゲイズを感じる作品として、ニナ・メンケス監督の映画『ブレインウォッシュ セックス-カメラ-パワー』、ジャック・リヴェット監督作品の話に。さらに、2022年にシャンタル・アケルマン特集がおこなわれてからフィメールゲイズ的な観点を持ったキュレーションが増えていることや、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下でこの夏上映されるデルフィーヌ・セリッグ監督の『美しく、黙りなさい』などに触れながら、話が展開しました。

Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 7/24(金)よりロードショー予定『美しく、黙りなさい』予告編

まなざしライブ:原田郁子(クラムボン)

1日目の最後は、ミュージシャンの原田郁子さんによる弾き語りライブ。約30年前、原田さんはBunkamuraの地下にあった書店・丸善でアルバイトをしていたそう。ライブ前のミニトークでは、当時の思い出を話しました。

【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

原田郁子さん

【前編】渋谷の街で、まなざしが交差した3日間。『わたしのまなざし、あなたのまなざし』イベントレポ

そんな原田さんが1曲目に演奏したのは、この日の午前中にトークした寺尾紗穂さんの楽曲“楕円の夢”のカヴァー。続いて、忌野清志郎さんとの共作曲“銀河”、“青い闇をまっさかさまにおちてゆく流れ星を知っている” では、角銅真実さんの楽曲“寄り道”を織り交ぜて、シームレスに演奏が続きます。

「歳を重ねていくと段々、見えにくくなったり、聞こえにくくなったり。でも第六感みたいに、若いときにはなかったツノが生えてくる。ニョキニョキ〜っと。そういうことを、友部正人さんが歌詞にしてくれました」と話した後に“ユニコーン”を演奏。

そして最後には、谷川俊太郎さんとの共作曲である“いまここ”を『まなざしの奇跡』展にも参加している写真家・川内倫子さんが映像化した「HERE AND NOW」の上映とともに。谷川さんの心臓の音、ブレス音、朗読、0歳から91歳までの声、rei harakamiさんのサウンド、原田さんの歌声とピアノが、川内倫子さんのみずみずしい映像と重なりあいました。

『まなざしの奇跡』展と一緒に訪れたい、書店マップ
『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』は8月26日(水)までヒカリエホールで開催中。SHIBUYA PHOTO BOOK FAIRに参加していただいた書店も一緒にまわれるように、マップをつくりました。ぜひ併せて訪れてみてくださいね。

『わたしのまなざし、あなたのまなざし SHIBUYA ART WEEKEND』

会期:7月4日(土)、7月11日(土)、7月12日(日)
時間:11:30オープン
場所:渋谷ヒカリエ 8/COURT
主催:東急株式会社
企画・制作:Bunkamura/me and you

※イベントは終了しました

詳しくはこちら

『まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険』

会期:2026年7月4日(土)〜8月26日(水)※会期中無休
時間:10:00〜19:00(最終入場 18:30)
場所:ヒカリエホール(渋谷ヒカリエ 9F)
入場料:一般 2200円、U-30 1500円、高校生・中学生・小学生 1000円
主催:Bunkamura

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