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連載

ヤンヤン(東京・高円寺):連載「あの本屋に行こう」

他者の足跡を通して世界と触れ合う足がかりになれれば

一冊の本に出会うことは、新しい扉をひらくこと。たとえば頭や心にもやもやと霧がかかっているようなとき、世界の未知の側面に手を伸ばしたいとき、旅に出たとき、いつもは歩かない街に行ってみたいなとふと思ったとき……。そんなとき、本屋を訪れてみるのはいかがでしょう?

この記事では、me and youがおすすめしたい本屋さんをご紹介します。me and youが出版している小さな本を取り扱ってくださっている独立系の書店を中心に、自分の意思でお店を立ち上げたり、心地よい方法を日々工夫しながら、その土地に根づいた場所づくりを行っているお店たち。つくり手の表情が見える本屋は、そこに集まった人たちが想いや考えを交換したり、学びあうような場になったりしていることも。訪れればきっと、さまざまな形の居心地のよさに出会えるような本屋たちです。

今回ご紹介するのは2023年11月にオープンした東京・高円寺の「ヤンヤン」。店主の城李門さんに言葉を寄せていただきました。記事の最後には、『あの本屋に行こう』のGoogle Mapも埋め込んでいるので、お散歩や旅のおともにぜひご活用くださいね。

他者の足跡を通して世界と触れ合う足がかりになれれば

ヤンヤン・城李門さん

1.どんなことを大切にしている本屋ですか?
一貫した関心として、わたしは、隣にいる人物が感じ得るような目の前の景色と、同一の景色を望むことの可能/不可能性について考えてきた経緯がありました。
それを思考し続けるためのひとつの手がかりとしたいこの書店は、「歴史」から取りこぼされた空白の地点、些少なエピソードから、「わたしたち」や「ある人たち」が経験した小さな「出来事や営み」の痕跡を浮かび上がらせることを目指しています。
有名・無名を問わず、叙述された作品やもの、過去の出来事を、安易に年代や当時の流行りの言説、ノスタルジーと照合させるのではなく、そこに潜む一つひとつの選択や抱えるエピソード、レトリックを紐解きながら、この場所で本を手に取る誰かが、その声に呼応できるように、細々と届けてゆくこと。またそれは、誰か別の人と、一緒にものを作ったり行動するときの指針を照らし出すかもしれないし、叙述の手段でもある物語や絵画や写真、映像や音楽といった、さまざまな作品の鑑賞の態度を作り出すことにもなるでしょう。本という媒体にとどまらず、他者の足跡を通して世界と触れ合う足がかりになれればと考えています。

過去はたやすくその人の思う通りに編まれ、ある人のあずかり知らぬところで語られもし、そうかと思えばそのうち大多数が残されもせず藻屑となって記憶の闇へ消えてゆくものです。ですが、そんな止め処のない流れのなかにも、過去を想起して誰かに伝え分かち合うそのとき、多かれ少なかれその出来事は、誰かのもつ記憶と溶け合いながら、そのひとの経験としても改めてインプットされることがあります。
わたしはあなたその人自身にもなれるし、あなたはわたしにもなれる、そんな瞬間が存在し、過去や記憶がそれとして残る。反芻、反芻、反芻……その連続がわたしという人間をつくっています。ある人間によって綴られた記録や物語に触れることで、人は生き続け、反面教師としての一つのエピソードとしてでも、また別の誰かの歴史の空白地点を埋めることができるかもしれない。そして誰かがまた生き続けることができるのであれば、わたしはそのような叙述を残す方法をお店を通して考え続けてゆきたいと思っています。

2.選書のこだわりは?
「書き残したもの」を収集するのが、基本的なお店のスタンスです。
出版されているエッセーや日記、書簡集やその批評のほか、いわゆる「古道具」として扱われる、無名の個人が残した手書きの日記やアルバムを扱いますが、一貫して大事にしているのは、のべつさまざまな本が出版される中で、「これは紛れもなく自分に宛てられたものだ」とか「自分の抱える茫漠とした気持ちに言葉を与えてくれるもの」と出会えること。その本にしか見つからない言葉を時空を超えて探せるよう、この東京という都市で大きく取り沙汰されていないものの、改めて世界との間合いを測ることができる小さな声を収集するよう努めています。
また、刊行時期に関しては特にこだわりなく選書しています。

3.お店の空間のこだわりは?
このお店は、大変狭く急な階段を登った先にある、まるで屋根裏部屋のようなスペースです。そんな点から、来ていただく方には、狭い店内ながらも気分を休めてもよいし、考えごとをしても良いような場所づくりを意識しました。少しでも居心地の良さを感じていただければうれしいです。
また、店内にそびえ立つオリジナルの階段状の棚は、階段が特徴なお店なだけに見て楽しんでいただきたいです。


4.「わたしとあなた」というテーマで、おすすめしたい本を1冊教えてください。

ヤンヤン(東京・高円寺):連載「あの本屋に行こう」

『細倉を記録する 寺崎英子の遺したフィルム』(著:寺崎英子、発行:荒蝦夷/2023年)

かつて存在した、日本を代表する鉛と亜鉛の細倉鉱山(現宮城県栗原市)。ここで暮らした寺崎英子さんが13年間にわたって撮りためた、10,000点を超す写真たちと文章をまとめた記録集です。その生活や人々の表情、景色を眺めていると、そこにいる人々の声や風のざわめきが聞こえてくるよう。些細な一瞬が大切な一瞬に感じられる、そんな輝いた写真の連続があります。

📍書店情報
ヤンヤン
住所:〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-44-18 2F(スナックなべ 階上)
営業時間:13:00-20:00
定休日:火曜・水曜
URL
書店 | ヤンヤン | 東京都
Twitter
Instagram

🚶‍♀️本屋を訪れてみよう
me and youがご紹介したい本屋を地図にまとめました。
ヤンヤンさんのほか、全国の本屋を都度更新していきますので、おでかけのお供にチェックしてみてくださいね。

me and youの「あの本屋に行こう」マップ

城李門
1995年、東京生まれ。ヤンヤン店主。
ほか、執筆・音楽ライブ運営などの場づくり・デザイン等を通して、制作手法を問わず人の叙述活動やその制作プロセスに着目して活動。東中野のカフェ・バー「なかなかの」の運営・選書なども行う。

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