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同じ日の日記

モーニング、日暮里、キラキラしたもの/Yusho Kobayashi

ロンドンから帰国し、東京に住み始めて3年。雑多な街の中を歩く朝

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2023年2月は、2023年2月28日(火)の日記を集めました。生活とアートから得たマテリアルと色彩をもとに、すべて手作業によるファッションコレクションを製作・販売するYusho Kobayashiさんの日記です。

最近は早起きだ。いつもはスタッフが来る30分前に起きて準備をしているが、どうしても、終わらない仕事が多すぎて、すこしだけ早く起きて仕事をする。春夏コレクションの立ち上がりが今週土曜日からある。タグ付けや、納品の目処もようやくたった。あとすこしだけ頑張れば、新しいコレクションに取り掛かれる。

明日の夜に、韓国から来るアーティストの友人みみちゃんに会う。みみちゃんは、以前よりインスタグラムに載せていたキティーちゃんやセーラームーンの作品がとてもかわいくて、フォローしていた。それまでDMを通して連絡をとっていただけだったのだが、先月韓国に行った際に初めて会ってご飯を食べた。
みみちゃんもまた、私たちの取引先であるSHEEP原宿にて土曜日より個展をする。そこに合わせてコラボレーションした帽子や、カバンを販売しようという話になった。日本に帰ってきてすぐに、みみちゃんからもらった作品のデータを、生地に印刷してもらい、それをカバンや帽子の形にしたのだが、何か足りない。昨晩ビーズやモチーフをそれらの上にならべてみると、みみちゃんの世界観と私たちの世界観がとてもよく混じり合っている気がした。明日の夜に会うまでに完成させないといけないし、告知画像用の写真も撮らなければいけない。なのに材料が全然足りない。焦っていた。
今日は、それを買いに日暮里に行ったのだが、その前に、モーニングを食べながら締め切りが近い文章の仕事を終わらせようと、駅前にある「談話室」という名の喫茶店にすこし早起きして行った。

ロンドンに留学していた頃は、よく友人とモーニングやブランチをしていたなと思い出す。東京に来てからは、朝からやっている喫茶店が少ないのと、朝からそんな余裕もなく、あまりモーニングをできていなかった。

窓ぎわの席につき、注文したモーニングセットが届くまでのあいだ、本を読もうとするが、様々なタスクを思い出して心が落ち着かない。窓から世界を眺める。向かいのベトナム料理屋さんは、朝9時なのにもう営業をしていた。日暮里には買い出しのたびに自分へのご褒美として、好きな店に入る。向かいのベトナム料理は一度だけ入ったことがある。カレー屋、洋食屋、台湾料理、韓国料理など好きなお店がたくさんあるが、最近はゆっくりとご飯を食べるのも、めんどくさく、立ち食いそばばかり行っていると気がついた。

ここの喫茶店もよく来ていた。前回来た時は、外で30分くらいずっと同じ場所を行ったり来たりする怪しい男を見た。最後に、若い男から謎の札束を受け取って、駅に消えていった。その前に来た時は、隣の席で友人関係と思わしき老人の男女がマルチ商法まがいの勧誘をしていた。この辺りは、良くも悪くもいろんなものが混じっていて、自分とは関係のない社会が回っているような気がして落ち着く。

ここでモーニングを食べるのは初めてだった。目玉焼きが2個もついているし、ケチャップもついていた。絶対に目玉焼きにはケチャップ派だ。うれしい。

食べ終わり、コーヒーをおかわりして、ようやくパソコンを開き文章を打ち始める。いつも不思議だ。布を切って、服にする。文字をならべて文章にする。それに誰かお金を払ってくれて、仕事になる。立ち上がり前やポップアップのたびに、自分たちが作った洋服を求めている人はほんとうにいるのだろうかと、不安が強くなる。そんなことを文章に書く。
日暮里に来るたびになぜここに地下鉄が通っていないのだろうと思う。以前それを友人に話すと、「みんなそんなに日暮里を使わない」と言われてしまった。多い時は週に二度ほど買い物に来るし、最寄りの駅よりも、東京の反対側にあるこの駅の方がいろんな店に入っている気がする。
ロンドンから帰ってきて、家を探しているときも、この辺りのボロボロのビジネスホテルにすこしだけ滞在していた。墓地を抜けてホテルまで歩く途中のの夏から秋に変わる夜の空気や、じめじめとした半地下のフロントをいまだに覚えている。この駅に生地屋が集まっていることも知らなかったし、たまたま手頃なホテルをみつけたのがそこに泊まった理由だったが、この街が私にとって最初の東京のイメージだった。成田空港と原宿や新宿のちょうど真ん中あたり、ゲートウェイのような存在だった。
住み始めて3年経って、知り合いやお客さんも増え、すこしだけ東京が自分の街と思えるようになった。住んでいる街はもちろんのこと、ここもまた私が生活している街の一部だと思う。海外から来る友人のために、パーツや生地を用意するために日暮里に訪れているのが、すこし不思議だった。今日も雑多な街の中を歩き、キラキラしたものを集めた。

Yusho Kobayashi

yushokobayashi デザイナー
立命館大学を卒業後、ロンドン芸術大学セントラルセントマーチンズへ留学。
在学中より活動を開始。年二回コレクションを製作し、2019年同大学ファッションデザイン/ウィメンズデザイン学科を卒業後、 2020 s/s collectionより東京に拠点を移しコレクションを発表する。生活とアートから得たマテリアルと色彩を元に、全て手作業によるファッションコレクションを製作・販売する。衣服の制作のみでなく、ドローイングや彫刻、空間を含めファッションの世界観を表現する。

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