「わかる」「わからない」「わかりあいたい」「わかりあえない」「わかってもらえない」「わかられてたまるか」……。これらが身近な言葉として存在するのは、人を含む生き物は、どの個体もすべて同じではない、という前提があるからです。それにもかかわらず、一人ひとりをいともたやすくひとまとめにしてしまう言葉や号令や、あるいは自分とは異なる他者を排除しようとする動きが世の中に存在し、居心地の悪さや息苦しさを覚えた経験がある人も少なくないのではないでしょうか。
「声のポスト」最初の問いは、「わたしとあなたのわかりあえなさをつなぐ『and』はなんだと思いますか?」。
長引く感染症の流行の影響もあり、多くの人が、周りの人との距離感に悩んだり、孤独感を覚えたり、心地よいコミュニケーションのありかたを探り直している状況でもあります。他者のみならず、自分のことも「完璧にわかる」ことは難しいのかもしれませんが、「わかる」や「わからない」のどちらかに永久に決めつけずとも、時間をかけて両者の「間」を考え続け、揺らぎ続けることは、わたしたちがともに生きることを諦めないためのひとつの希望になるかもしれません。ここ集まった19名の声が、これを読んでくださっている方々にとって、現在やいつかの自分自身と反響することがあれば嬉しく思います。