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ジュディ・シルしか聴けなかった夜/me and you’s eye

映画『ジュディ・シル 贖罪のシンガーソングライター』を観て(竹中万季)

 
 
 

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ジュディ・シルしか聴けなかった夜

映画『ジュディ・シル 贖罪のシンガーソングライター』を観に、恵比寿へ。『Lost Angel: The Genius of Judee Sill』というタイトルでアメリカで上映されているのを知ってからずっと観たいと思っていて、日本でもいつか上映してほしい! と応援メッセージを送っていたほどだった。

いつジュディを知ったかは忘れてしまったけれど、彼女の曲しか聴けなかった夜のことをいくつも覚えている。たとえばルシア・ベルリンの小説を読みながらたまたま聴いていたときのこととか。表現の仕方はまったく異なるけれど、傷や弱さを隠さず言葉にし、痛みを伴いながらも決して哀れんだりはしない、魂から掴み取ったような表現はどこか重なって感じられる。二人とも、広く読まれ、聴かれるようになったのは没後だった。

心の奥底をなぞるような歌詞はもちろん、誰も想像しないようなメロディの展開はこの世界で生きることの輝きのようで、彼女自身が神から音楽を授けられたと信じていたのも頷ける。当時の流行にかかわらず自分の世界を貫き、それがきっと誰かを救うだろうとまっすぐに信じていた彼女が、その想いが十分に受け入れられなかったことの苦しみが痛いほど感じられた。身近な人の死、幼少期に経験した虐待、犯罪、薬物依存。自分は悪い人間だ、どうかよくありたい、という気持ちを抱えながら、オーバードーズで35歳の若さで亡くなった。

でも、彼女と恋愛関係だった男たちや、関わりのあった人たちの証言を聞いていると、どこか神聖で崇高なイメージを抱いていたジュディはきっと、破天荒なチャーミングさを持った人でもあったんだろうということが伝わってきた。

若い音楽家たちも彼女の歌を歌う。彼女の歌は時代を超えて歌われ、語られ続け、痛みを抱えた夜に寄り添い続ける。

愛のある、素晴らしいドキュメンタリーだった。証言だけでなく、監督たちが9年かけて集めたという日記や楽譜、イラストが織り混ざり、イラストはアニメーションとして生き生きと動き出していた。パンフレットも充実した内容で、これから読むのが楽しみ。しばらくはずっと、彼女のことを考えていそうだ。

(竹中万季)

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『ジュディ・シル 贖罪のシンガーソングライター』

映画『ジュディ・シル 贖罪のシンガーソングライター』が10/23に公開。70年代にデビューし、35歳でこの世を去ったジュディ。監督が集めた日記や楽譜などの膨大な資料に、同世代のスターや影響を受けたビッグ・シーフらの証言を絡め、彼女の音楽の魅力と人物像を蘇らせる。

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