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同じ日の日記

北九州にいる/コムアイ

2022年4月22日(金)の日記

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年4月は、2022年4日22日(金)の日記を集めました。水曜日のカンパネラの初代ボーカルを務め、声や身体表現を主としてさまざまな活動を行うコムアイさんの日記です。

北九州にいる。
三日間のツアーに参加するためだ。
北九州を拠点に、生活困窮者や社会から孤立状態にある人々の支援をしているNPO抱樸の活動を覗かせてもらうツアー。
ここが友人の実家だったことで、その存在を知った。知れば知るほど、日本で最も愛があり、おそろしく大変なことに取り組んでいる人たちなのではないか、という印象がみるみる強くなっていって、行かなければ行けない!! と思っていた場所だった。

今日、一緒に作業をさせてもらったおじいさんたちの中でもひときわお洒落で背の高いおじいさんが、お話をしてくれた。東京でたくさん犯罪をしてきたと言っていた。いろんな種類の。何度も刑務所に入り、このNPOに出逢った。おじいさんは今でも、東京に行って友達に会って、また犯罪を犯してもいいなあ、と思う時があると言っていた。踏みとどまる理由は、数十年ぶりに涙の再会をした実姉の、この教会のお花に水をやり、トイレを掃除し続けなさい、という言葉(NPOは東八幡キリスト教会に隣接している)。そう言われたから通っている、と言っていたけど、おじいさんが踏みとどまれるなら、それが理由でもいいなあと思った。

おじいさんには、定期的に通っている場所がある。近所の認知症のおばあさんが一人で住んでいる家で、彼女のことが心配でたまに様子を見に行ったりするそうだ。おばあさんから夜中に電話がかかってきて、声が聞きたかった、と電話がかかってくると言っていた。少し話したら、安心しておばあさんは眠るらしい。おばあさんの通帳が家からなくなったと電話してきたとき、おじいさんは駆けつけようとしたけれど、職員の人に止められたそうだ。前科があって警察に怪しまれてしまうから、一人で行くのはやめたほうがいいと。結局ふとんの間にあったそうだけれど。

人を人たらしめるのは、人でしかないと思った。
誰かを裏切りたくない、悲しませたくない、愛したい、支えたい、という想いが、人を人にするんだと思った。

コムアイ

声や身体表現を主とするアーティスト。日本の郷土芸能や北インドの古典音楽に影響を受けている。主な作品に、屋久島からインスピレーションを得てオオルタイチと制作したアルバム『YAKUSHIMA TREASURE』や、奈良県明日香村の石舞台古墳でのパフォーマンス『石室古墳に巣ごもる夢』、東京都現代美術館でのクリスチャン・マークレーのグラフィック・スコア『No!』のソロパフォーマンスなど。水にまつわる課題を学び広告する部活動『HYPE FREE WATER』をビジュアルアーティストの村田実莉と立ち上げる。NHK『雨の日』、Netflix『Followers』などに出演し、俳優としても活動する。音楽ユニット・水曜日のカンパネラの初代ボーカル。

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