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同じ日の日記

東京の郊外から鎌倉に引っ越してきて/小田原のどか

ハラスメント報道と「われわれの責任」、夢中なレシピ、黒染めしたワンピース

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2026年8月は、8月27日(木)の日記を集めました。彫刻家・彫刻研究・評論家としての活動と並行して研究・執筆を行い、現代美術に携わるアーティストによる労働組合「アーティスツ・ユニオン」オブザーバーや、自由で平等な表現の場の構築を目指す「表現の現場調査団」メンバーであった小田原のどかさんの日記です。

8時30分起床。目覚ましがなくてもだいたいこの時間に起きてしまう不思議。今日は日本学生支援機構の奨学金の引き落としの日。全国の奨学金返済中のみなさんもきっと毎月27日は憂鬱であるはず。私もです。

ゴミ出し、植物に水やり、メール確認、朝食を食べつつ、原稿。一押しのカフェ、横須賀の「cafe antiques月印」の盛り付けを真似して、お皿にティーカップと食べ物を一緒に載せる。月印はお菓子と食事が格別においしい。写真撮影は禁止、Instagramも削除してしまったようで、情報が少ないのもまた良い。東京の郊外から鎌倉に引っ越してきて、活動範囲が変わり、もちろん鎌倉もたのしいし、横須賀もめっぽうたのしい。アトリエ兼ショップが多い横須賀・上町の雰囲気が好きで、コミュニティがしっかりとあるのもいいなと思う。

原稿は、日本女性学習財団が刊行する『月刊We learn』の研究レポートとして寄稿を依頼されたもの。同誌には2023年に「表現の現場調査団」のジェンダーバランス調査について、「77.1% ―表現にまつわる「賞」における男性の審査員の割合」という題で寄稿している。今回はジェンダーバランスの可視化の「その先」を書きたい。具体的には、ハラスメント告発のこと。ベルギー出身の振付家・ダンサー、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルに対するハラスメント報道について。

ドゥ・ケースマイケルが1983年に女性たちだけで立ち上げた舞踊団「ローザス」。18歳から40歳の今日まで、私にとってずっと大切な舞踊団のひとつで、日本公演はすべて見てきた。2024年にベルギーで元ローザスのダンサーらの告発をめぐる新聞報道があり、2022年の調査に基づいて、元ダンサーやスタッフらへの恐怖の不安を伴う権威的指導、外見への品評(Body shaming)、杜撰なコロナ禍対応などが記事になった。本人は反省と謝罪を述べ、自身とローザスの変革とWell-beingの実現を約束した。

これとともに、ブリュッセルのアートセンターも声明を出した。アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルのもとで働いてきた複数の人々が、長年にわたって経験してきた傷つきと苦しみ、彼女の有害な行動(toxic behavior)が長期にわたって及ぼしてきた影響を認め、それを可能にしたシステムの一部に私たち自身も加担していたことも認め、これを遺憾に思う、という内容だ。有害な創作文化(toxic culture)を温存してきた自分たちの制度そのものの見直しが必要であり、それが「われわれの責任」だと。

この件について、日本の演劇・現代舞踊界からの応答は私が知るかぎりなかった。今年の日本公演でも、ローザスで過去に起きたことやこれへの反省について発言する人は多くはない。そうした日本国内の反応に鑑みれば、私もまた、ドゥ・ケースマイケルの長年のtoxic behaviorを可能にしたtoxic cultureのシステムの一部に加担してきたと思う。ドゥ・ケースマイケルがフェミニストであることは免罪符にはならない。被害者の救済とドゥ・ケースマイケルとローザスの変化を、ベルギーの現代舞踊界とともに、日本においても注意深く見守りたいと思いながら、原稿を書く。

昼食は長谷川あかりさんのレシピを参考に鶏肉をベーコンに変えてオムライスをつくった。焦がし醤油のオムライスは、すっきりとした味わいでとってもおいしい。少し前はウー・ウェンさんのレシピに夢中で、最近は長谷川さんのレシピに夢中である。ベーコンは酒蒸しハンバーグであまったもの。基本的に料理は連れ合いの担当となって久しいが、このところは大学が夏休みで比較的時間があるので、こぞってつくっている。

天気が怪しいが外出する。落ちない染みができてしまい黒染めに出していたinjiriのワンピースを着る。白色の服が好きなので、着古したものや染みのできてしまったものは黒染めに出している。京都の呉服店が運営するかなり高価な黒染めなども試して、安価かつ品質の高い業者をようやく捜し当てた。injiriのワンピースは新規に依頼した業者の黒染めから戻ってきてすぐ、チェルフィッチュの観劇で池袋の芸術劇場に行った際に着て、大雨でたっぷりと濡れたのだけれど、いっさい色落ちしなかった。今日も大雨になりそうだけれど、恐れはない。

15時から横浜市南図書館と打ち合わせ。4月に作品制作のためのスタジオを都内から横浜市南区に移して、スタジオ近くのお寺や図書館と関わることが増えた。横浜市南図書館とは、私の研究室と共同で、1923年に横浜市内で起きた関東大震災直後の朝鮮人や中国人の方々の虐殺事件の現場を検証するフィールドワークとレクチャーを企画しているので、その打ち合わせをする。

打ち合わせが終わり、案の定、大雨に。警察署に勾留中の友人の面会に行く予定だったが、悪天のため予定を変更。面会は明日にして、糖分を摂取することにし、ベイカフェヨコハマで季節限定のミルフィーユをいただく。パイ生地のさくさく感が絶妙で、クリームも絶妙。幸せである。

夕飯用に、横浜駅の地下街で豚肉、オクラ、クリームチーズを買う。横浜駅付近の生鮮食品店はどこがよいのか、答えはまだ見つからない。

帰宅後、19時からオンラインの打ち合わせを終えて、オクラと豚肉のしょうが炒めとコンキリエのサラダ(いずれも長谷川レシピ)、つくり置いているピクルス、玄米で夕食。連れ合いといろいろ話す。

夜は原稿の続き。脱稿したので、読書、そしてYouTubeを見る。明日は歯医者、打ち合わせ、そして警察署に行き、夜は東京都現代美術館で内覧会がある。抽象彫刻で知られる多田美波の回顧展がついに開催される。社交が苦手なので、内覧会というものにはじつはあまり行きたくないのだけど、関連イベントへの登壇と寄稿の予定があるので、いずれにしても内覧会とは別にしっかり見に行く時間を取らないといけない。朝食は何にしようか、何を着ようかと考えながら、就寝。

小田原のどか

彫刻家、評論家。芸術学博士。版元主宰、横浜国立大学教員。1985年宮城県生、神奈川県鎌倉市在住。彫刻を起点に著述・作品制作・社会運動に取り組み、ジェンダー、脱帝国主義、公共性の観点から理論と実践の両輪で美術史を再検討する。主な個展に国際芸術センター青森[ACAC]、つなぎ美術館、塩竈市杉村惇美術館など。主な単著に『近代を彫刻/超克する』(講談社)、『モニュメント原論:思想的課題としての彫刻』(青土社)。2026年度国立アートリサーチセンター客員研究員。『東京新聞』『芸術新潮』で美術評を連載。

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11月8日、東京都現代美術館で開催中の「多田美波―光、凛と ゆれる」展関連イベント「ゆれる光:戦後美術における女性彫刻家の実践を中心に」に登壇します。東京都現代美術館とAWARE: Archives of Women Artists, Research and Exhibitionsとの共催による国際シンポジウムです。

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