こんこんと眠って、朝起きたら5時過ぎ。昨日の夜20時くらいから寝倒してしまっていたようだった。
空はピンク色に染まっている。今日も晴れで、なんだか安心する。
二度寝して7時過ぎに起きて、とりあえずお湯を沸かし、トーストをコンロのグリルにいれて、冷蔵庫にあったベーコンの残りと卵でベーコンエッグにする。トーストに、アボカドを切って乗せる。お湯が沸き、トースト、卵、マグカップにいれたミルクティー、ちょうど全部いっぺんに揃う。昨日夜食べていないのでお腹が空いていた。
朝ごはんが妙に好きだ。よその家にいくと、朝にかけてもいいと思える手間暇、食べる内容、分量が自分とは違っていて、ああこの人の家ではこれが当たり前なんだな、よその家にきたんだなと思う。その違いがいつも楽しい。
しかしなんでこんなにベーコンエッグとトーストの組み合わせって美味しいんだろうと思いながら食べる。
身支度をして、作業机に座って、昨日の夜に返そうと思っていたメールを返す。締切を勘違いしていた仕事の原稿を慌てて送る。12時からの本屋・生活綴方の店番に向かう。
久しぶりに店番に入る。平日だし暇だろうと思っていたら、開店早々からお客さんが多くきて内心慌てた。長年勤めていた会社を辞めて本屋さんを始める人や、漫画家をしながら「一箱古本市」にも出店している人、ご近所の雑貨屋の店主さんなど、今日は知っている人が多く来た。
最近ずっと家にこもっていたから、人と接したり会話するのに若干のタイムラグがあるような気がする。内心で、深呼吸、深呼吸、と唱えながら大したことは特に何もせず座っていた。
あるお客さんが、着けていたピアスを褒めてくれた。服にも合ってるよ、と。青とピンクのグラデーションの樹脂の大きなフープピアスに、青い巻きスカート。なんとなくこれにしようとして出てきたものだったけれど、嬉しい。外に出た甲斐がある。
みんな色々本を買っていく。戦争についての本だったり、日常の本だったり。
今日は3月11日。あの日も金曜日だった、と思い出す。
その頃はストレスの極みにいて、ほとんど自分自身の手綱を手放してしまったようだった。極度の疲労と、精神的にももうどうしていいかわからない状態。唯一、やっと金曜日だというのが救いで、返すのに精神的負荷があるメールを持て余しながら、週末はどこに行こうと考えていたのだった。
お客さんの波が途切れた頃、お店にいた三輪舎の中岡さんと、刊行準備中の本のことについて話す。鈴木店長が桜餅をくれた。食べて話をしていたら、店番でジャグラーの青木さんが来た。店に入るなり、「良い本いっぱい! 良い本一冊100円だよ」と、昭和の(?)叩き売りのマネを始めた。ここに来れば、誰かに会える店。
14:46には黙祷をしようと思って14:45にアラームをかけて、周囲にも「後1分ですよ」と言って、その時間を待っていた。店内は私もポートレートを撮ってもらった、写真家の矢部真太さんの個展をやっている。一人のお客さんが、長いこと展示中の写真を見ている。今週末に、店先でポートレートを撮ってもらえる撮影会もあるんですよと話しかけたら、なんとご家族だった。ええっと驚いて、皆で挨拶をしたりしているうちに、その時間は過ぎていた。店長とご家族の方が話すのを聞いていた。誰かを撮ろうとしている人の後ろ姿を、見ている、見守っている人がいる。
遅番のみうらさんがやってきて、お店番をバトンタッチする。書店員をやっている彼は、3月30日に発売される『毛布 – あなたをくるんでくれるもの』(玄光社)の注文も検討してくれていた。雑談をしながら、「安達さんの本をどうやって売ろうか今すごく考えています」とまっすぐな目で言われて、そうか、本を出すというのはこういうことなんだ、と思った。きっと彼の書店に来るお客さんで、私のことを知っている人は少ない。いたら奇跡かもしれない。そんな限りなく無名の新人の最初のエッセイ集を、いわゆる独立系書店と呼ばれるような本屋ではなく、一般書店の売り場で売ってもらうこと。そのお店を利用するお客さんに対して、本をどう売っていくか、真剣に考えてくれていた。