2022年6月23日木曜日 台北 燈里
スナネコのメッセージの通知で目が覚めた。9時、ということは日本は10時か。先週の金曜日に台北から尼崎に送ったプレゼントが届いたみたい。今日、木曜日が休みのスナネコは、早速贈ったピーナッツバターを色々な食材に添えて食べたようだった。Spotifyのリンクで曲をたくさん送ってくれている。上から順に再生していき、それをBGMに1日を始めた。
10AM、コーヒーを淹れてiMacの前に座りメールを開ける。先日、あるインドの会社から翻訳の仕事のオファーがあり、試験を何なく通過したところだった。研究機関と連携して学術論文を専門に扱う翻訳会社で、まさにやりたい内容の業務、自由で風通しの良い企業文化、柔軟で多様な働き方。ただ、会社が提示する給料のレートがあまりに低く、昨日希望額とその根拠を出して賃上げの交渉をしていた。その返事があり、私の経験を考慮して最初の提示額よりも30%レートを上げるということだった。実はそれでもまだ低いんです……。とりあえず先に今日締め切りのデュオリンゴの翻訳を急ぎで仕上げ、校閲に出した。残りの業務はまた夜に。専門性を活かして複数の面白いプロジェクトを掛け持ちできるフリーランスの働き方が好きだ。
下午2點半からは中国語の授業。毎週木曜日に台湾人のAnn先生と1対1で1時間中国語を練習する。一昨日は先生の誕生日だったので「生日快樂」と言って小さな教室に入った。朝の英語から一転、発音と声調と漢字の合致を確かめながらゆっくりふにゃふにゃ喋る。挨拶代わりに「上週末做什麼?」と聞かれた。……插花、と短く答える。「你喜歡插花嗎?」喜歡……插花培養我的美感。花を生ける時、素材固有の美しさを見極めて花材を選び、その組み合わせや調整で花の潜在的な美しさを引き出す。生け花を始めてすぐに町の草花の見え方が変わった。年中湿潤な気候の台北は緑が多い。公園がどこにでもあり、道路は街路樹が太い幹をくねらせて葉を広げ、アパートのベランダには必ず植物が置かれ、家の前には植木鉢の花や木が並び、コンクリートの道端さえ雑草と苔がびっしり生えている。葉の青さや枝のしなり、零れ落ちそうな花弁が目に止まるようになった。花器に挿す花材の繊細な美しさを発見して、その目を持って町に出ると、実はどこにもここにも美しさはあったのだ、と驚く。