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同じ日の日記

舞台の稽古場でゆく年くる年/山中志歩

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。
me and you little magazine & clubのはじまりの日記は、2022年1日1日(土)。公募で送ってくださった山中志歩さんの日記です。

その部屋にはテレビがなかったから、BさんがiPadで流してくれている去年の『ゆく年くる年』を聞きつつ、タッカンマリの残り汁にそばつゆを合わせたものを蕎麦につけて食べた。
「今年の分は来年見よう、一年間楽しみにしている」と言っている人がいて、『ゆく年くる年』基準の一年の楽しみ方もいいな、と思った。
上京してから、毎年お正月は五反田団の「新年工場見学会」に参加していて、五反田のこのアトリエにいる。もう6年目だ。親戚の集まりのようで楽しく、ここでしか会えない人もいる。五反田団では毎年「〇〇」のニセモノというパロディの形式の演劇をしていたけれど、去年から映画を撮るようになった。去年は「2021年に延期となったあの“大規模スポーツイベント”」の映画を撮った。架空の競技パーチャリーで怪物と戦う映画だ。今年は料理系の映画を撮っている。
久しぶりにお酒を飲み、ここ数日撮影していた編集中の映画を出来たところまで見せてもらう。ゲラゲラ笑った。
深夜2時前に一人で抜けて帰る。最近、一人で帰りたいときに帰り、残りたいときに残るということが出来る大人になった。
2022年の目標を考えながら、乗り換えの渋谷駅で降りる。タクシー乗り場にたくさんの人が並んでいたり、大きな声で何かを叫んでる人たちがいる。井の頭線に行くとシャッターで入れず。しまった、お正月ダイヤだから新宿駅で乗り換えだったか。すぐに戻る。
新宿駅に着いたが、さっきのロスで乗り換えに失敗し、一時間ほど駅で待つ。パイレーツ・オブ・カリビアンの着メロの人がいた。着メロ懐かしい。あけおめメールはいつの間にか来なくなった。

結局、4時に家に着き、すぐさま眠る。
12時前に起床。お風呂(といってもシャワーですが)に入り、新年だから特別に試供品で貰った良いシャンプーとリンスを使う。髪がさらさらになった。13時に家を出て、11分の電車に乗り、昨日と同じ場所へ。撮影はまだまだ続いている。
14時から、皆んなでお屠蘇を飲む。これも毎年恒例の行事だ。赤い立派な器(屠蘇器というらしい……初めて知った)ではなく、急須に小皿で飲む。コロナ前はでかい小皿で回し飲みだったが、年齢順に別皿で飲んでいく。「もうそんな歳になったの!」とお互い驚き合った。このイベントは15年以上の歴史がある。時間が経つのは早い。

舞台の稽古場でゆく年くる年/山中志歩

お正月の撮影をしていたときのケータリング

呼ばれるまで、別室で自分が企画した舞台の台本の構成の続き。夜頃まで作業。
目途がついて、撮影部とは別にケータリングの夕ご飯の鍋作りの手伝いをし、野菜が煮え立つまでダンサーの友人と暗黒舞踏について語る。私は暗黒舞踏が好きで、大学時代にDVDで大野一雄さんの『花』を観て、とてつもなく感動したんだ! と熱弁を振るう。「身体の形一つ一つに意味があり、ポーズで色んなことを表現しているんだよ」と友人に教えてもらう。
めちゃくちゃ勝手な偏見なのですが、舞踏家の皆さんは舞台上以外でもストイックで修行僧のような生活をしているイメージがあり、そんな舞踏家の方々が、もし暗黒舞踏で「だらだらとした生活の踊り」を表現したら、どんな風になるんだろうかと想像した。足でポテトチップスの袋を掴んだり、寝ころびながらスマホをいじって顔に落ちて激突したり、冷蔵庫の引き出しを足で蹴って閉めるとかをどう踊るんだろう。
生活の中の「だらだら」も暗黒舞踏で表現されることによって、人間の生命の根源のような崇高な出来事に思えるのかもしれないと考えた。私は映画や本に詳しかったり、健康のために運動や食生活に気を使っていたり、毎日充実しているような人たちをSNSで見ると、自分と比べてしまい、だらだらとした生活をしてしまう自分が嫌になったりするんだけど(それでもだらだらしちゃう……)、舞踏家の方の身体で表現してもらったら、少しはこの生活にも希望を見出せるかもしれないな……とぼんやり思った。
夜10時くらいに早めに抜けさせてもらう。
帰りの電車の中で読みたかった本を図書館のサイトで予約する。ないと思っていたので、借りられて良かった。
明日は朝から舞台の場当たりだ。がんばるぞ。

山中志歩
俳優。1993年生まれ、三重県出身。
大阪芸大卒業後、無隣館を経て、青年団に所属。
近年の主な舞台出演作に、ゆうめい『娘』『姿』、アンカル『昼下がりの思春期たちは漂う狼のようだ』(作・演出 蓬莱竜太)、月刊「根本宗子」『今、出来る、精一杯。』『墓場、女子高生』などがある。また、出演したBOOKOFFのCMで注目を集め、映像作品にも多数出演している。
山中志歩 / Shiho Yamanaka │ note

ゆうめい『あかあか』
作・演出:池田亮
日時:2022年5月〜6月
場所:川崎市アートセンター アルテリオ小劇場・三重文化会館 小ホール(ツアー)
ゆうめい

LINE NEWS VISION『人類最後の〇〇』
監督・脚本・撮影:宮部一通 
主演:大原優乃 
LINE NEWS VISION『人類最後の〇〇』│ YouTube

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