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同じ日の日記

正月はハレの日だというけれど/黒木萌

2022年1月1日(土)の同じ日の日記

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。me and you little magazineのはじまりの日記は、2022年1日1日(土)。公募で送ってくださった黒木萌さんの日記です。

正月はハレの日だというけれど、私にとってはいつもと違うごはんを食べるだけの、日常の延長線上にあるふつうの日だ。むしろ子どもが四六時中うちにいて「どこか連れて行って」というので連れ出したりといつもより少しがんばらなければならない。
今日はブックオフへ行った。毎年恒例、正月は割引セールをやっているからだ。子どもは一目散に絵本コーナーへと向かう。しかしお目当ての仮面ライダーの本は一冊もなかったらしい。「かめんライダー、ない~」とふてくされている。
「こっちにあるかもしれないよ」と私はマンガコーナーへと誘導する。ほかでもない、私の今日のお目当てがマンガだからだ。子どもの欲しいものがあるとはあまり思っていない。しかし子どもはその奥にDVDコーナー、そのまた奥におもちゃコーナーがあるのを自分で発見して、タタタタッと駆けて行ってしまった。
「見るだけだよ~大事に見てね~」と声かけだけして私は本棚を見る。数日前、ゲオへマンガを借りに行ったのだが、私の読みたい1970年代に発表された少女マンガは軒並み扱われていなかった。だから電子書籍とブックオフで探そうと決めたのだ。
「お、『違国日記』がある!」目的以外の好きな漫画を見つけてしまう。110円に値付けされている1、2巻を棚から救出して次の作品を探す。そのようにして買ったのは、ヤマシタトモコ『違国日記』のほか池田理代子『ベルサイユのばら』全巻セット、川原泉『バーナム効果であるあるがある』だ。しめて1,300円。いい買い物をした。
子どもはおもちゃコーナーで歴代仮面ライダーのベルトたちに夢中になっている。

子どもはいま5歳だ。元日の夜は10~15年先、子育てがひと段落したときのことを私は考えていた。私はいまとある田舎町に子どもと二人で暮らしている。子どもがひとり立ちしてひとりで暮らすようになったとして、私はどこで生きてゆくだろうか。
いま住んでいる地元はかつて大嫌いだった。それで一度大阪へ行ったけれど、やむを得ない事情で結局戻ってきてそれからずっとここにいる。子どもが生まれてからはこの土地の人たちにずいぶんと支えられて生きてきた。
しかし私は文化的なことへの興味が強いから、一度文化的に成熟した土地で暮らしてみたいという気持ちもある。それが東京なのか、はたまた別の地方都市なのかは分からないけれど。ただなんとなく海外ではなさそうである。
私のやっていきたいことは、どこかに引っ越したって可能だろうし、ここにいたって可能だろう。それでも環境というのは大きいに違いない。もしここでない別の場所で暮らしたら? と考えることがおもしろい。
いま私は地元の人たちとのつながりに加えてオンラインで全国の人たちとつながっている。子育てがひと段落したら、まずその人たちに会いにゆきたい。どこかに引っ越すかは別として、いまある人とのつながりを大事にしてゆく先に、未来の居場所が見つかることだろう。

今年も私たちはそれぞれの興味関心を追いかけていくだろう。私は仮面ライダーの良さはちっとも分からないけれど、子どもは子どもなりの世界を生きていったらいいとそう思っている。
一緒にいられるのがあと何年先か分からないけれど、しばらくは二人で共にここで暮らしてゆくことだろう。

黒木萌

1987年宮崎県延岡市生まれ。2012年大阪大学卒業。企業で総務、人事・勤労業務を経験。通信制高校サポート校での勤務を経験。2018年からライター業を開始。「日向経済新聞」「relay」「朝日新聞withnews」等で執筆。関心領域は子育て・教育・福祉・家族・生き方・働き方など。
note
エッセイ「土に呼ばれて」

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