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同じ日の日記

薄緑色のような気持ちで、海へ/菜実

ハート型の石、オパールの遊色の中にいるみたいな帰り道の空。誰もいない海で

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2025年7月は、7月20日(日)の日記を集めました。生活している盛岡の自然を愛しながら、たびたびエンターテイメントのため東京に行くという菜実さんの日記です。

7月20日は選挙の投票日で、朝から薄緑色のような気持ちでいた。

SNSを埋め尽くす、それぞれの政党を支持する声や特定の政党に対する危惧の声。同じ国に住む人たちが目の前の暮らしや未来のことを考える日は、大きな流れがざわざわと蠢いている。

今年は期日前投票をすることに決めて投票は済ませていたので、前日友達に「海にいこうよ」と連絡をして、私たちは海へ出かけた。

内陸の街から海へは片道約2時間、往復4時間。

私たちは寄り道が好きで、集まるとまずはコンビニでコーヒーを買い、今回の旅の「道草」について話し合う。今日は途中の道の駅にあるおいしいジェラートをたべ、お昼はたっぷりの海藻が乗ったうどん、沿岸のローカルスーパーで買ったお刺身をたべたいということになった。食いしん坊の我々は道の草だけではなく海の藻もたべたいのだ。

作戦通り、土曜で賑わう道の駅でジェラートを注文。コーンの底までたっぷり詰まったダブルをたべ切ることにやや苦戦。隣接する産直でトマト、なす、ズッキーニ、きゅうりなどを爆買いし、念のためにと思い持ってきたエコバッグをいっぱいにして海へと再出発した。

そこからは山間を開通する三陸道をびゅんと駆け抜けること、約1時間。
山の隙間から海が見えてきて「海だあ〜!」とはしゃぐ。

道中にお刺身コーナーにて熟考の上、たこ、白身、鰹の叩きを購入(3パック1000円!)近くに並ぶルビーのような鱗の鯛や、玉虫色にぴかぴか光る鯵がきれい。詳しくは割愛するが、もちろん海藻たっぷりのうどんもたべた。

やっと海に到着。
海開き1週間前の海は空いていて、私たちしかいなかった。

ぷはー、と大きく伸びをして、潮のにおいをいっぱいに吸い込んだ。
夏の始まりの海風は、まだひんやりと湿気っている。

波に近づき裸足になると、足の指に湿った砂がもにゅっとめり込んで、足首のあたりまで冷たい波が戯れてくる。足元に転がる色とりどりの石に目を惹かれ、1時間ほど石拾いに熱中した。石は物心ついた時から大好きだ。

しばらく遊んだあとはさっき買ったお刺身をたべ、その後しばらくは美味しい刺身の話で会話が持ちきりになった。

ハートの形の石を見つけた

日も暮れそうなので、そろそろだねと海を出る。
帰り道の空はオパールの遊色の中にいるみたいだった。

遊び疲れて帰宅し、同居人と選挙速報を見る。
あれやこれや言い一喜一憂しながらも、声は届くんだと勇気が出た。

日々の尊い営みが続いていくことを願いながら、今日も眠りにつこう。

菜実 natsumi

岩手県盛岡市生まれ。食べること、美味しいお酒を飲むこと、明るいうちに入る温泉が好き。盛岡市在住。

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