3.11前後になると決まって心の具合が悪くなる
それは震災のことや父のこと、10年前に一気に引き戻される気になるからだろう。
またこの季節だ、と思う。
仕事に向かうため6:00に起床する、同居している彼が先に家を出ることが多いが今日は私が先に起きることに少しほっとする。
小田急線でずっと揺られた果てにある工事現場の撮影だ。
土のたくさん入ったフレキシブルコンテナバックの山があちこちにある。
10年後の同じ日に見慣れた黒い塊を写真に撮っているなんて皮肉だなと思う。
同じ日の日記
2022年3月11日(金)の日記
2022/5/24
毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年3月は、2022年3日11日(金)の日記を集めました。福島県生まれの写真家、草野庸子さんの日記です。
3.11前後になると決まって心の具合が悪くなる
それは震災のことや父のこと、10年前に一気に引き戻される気になるからだろう。
またこの季節だ、と思う。
仕事に向かうため6:00に起床する、同居している彼が先に家を出ることが多いが今日は私が先に起きることに少しほっとする。
小田急線でずっと揺られた果てにある工事現場の撮影だ。
土のたくさん入ったフレキシブルコンテナバックの山があちこちにある。
10年後の同じ日に見慣れた黒い塊を写真に撮っているなんて皮肉だなと思う。
震災の当時、高校3年の春休みで自室にいた。本を読んでいたのか、インターネットをしていたのかまあぼんやりとしていた。
大きな揺れで本棚が倒れたのを覚えている。
外に飛び出すと近所に住むおばあちゃん達が空に向かって拝んでいた。
一人でいるのが嫌で、当時アルバイトをしていた駅前のコンビニを目指すと飲み物や食材の棚は空っぽだった。店長がこれだけ持っていきなさいとペットボトルの水を3本くれた。
地面がくだけ液状化していて歩きにくい。地盤沈下なんて言葉を知らなかった気がする。
母親と合流できたとき以上の安堵をまだ経験していないしこれからもそんなことがあってほしくないと思う。
忘れない、と 忘れられないということ。
当事者と非当事者のグラデーションについて考える。
一日がかりの撮影が終わり自宅へ帰る。
ビールを飲み夕食を食べる。もう今日が終わる、2011年と2022年の3月11日。早く寝てしまおうと思った。考え続けなければならないことはたくさんあるのだ。
草野庸子
福島県出身。桑沢デザイン研究所卒業 2014年キヤノン写真新世紀優秀賞選出後、現在東京を拠点に活動している。
写真集に『UNTITLED』『EVERYTHING IS TEMPORARY』『Across The Sea(roshinbooks)』『YOKOKUSANO/MOTORA SERENA』。
プロフィール
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