2022年2月22日22:35
ヴィクトリア調の分厚い3年日記に、
書いた詩のこと、ヌードの被写体のこと、始めたばかりのバンドのこと、生活のことなんかをだらだら綴りながら、コンビニで買った皮むきのりんごを齧ってる。
適当に選んだプレイリストから
ドレスコーズのピーター・アイヴァースが流れた。
あ、今わたし恋に落ちたな。
カレンダーを見たら、ひとり暮らしを決意した日から今日できっかり半年だった。
この半年間は毎日新品の気持ちだったから、自分の気持ちについていくのが大変だった。どの場面でも音楽が鳴っていた。
高円寺駅前の広場で弾き語りをやってる友だちと、缶チューハイ片手に話したのも音楽のことだった。 東京に大雪が降った日、銀座のビルの屋上で決行したヌード撮影はカメラマンの子ともやっぱり好きな音楽の話をしながら寒さに耐えた。
冬に少し付き合った人と別れようと思ったのは、ジェンダー観と音楽性の不一致が理由だった。
ミッシェル、ナンバガ、銀杏、ノベンバ、来る日も来る日も誰かと話してた。
ひとり暮らしを決めた日は、観にきてと言われたライブに大遅刻した。
のちにその子をめちゃくちゃ好きになってしまい、ずっと動揺してたら前みたいには会わなくなって気づいたら私たちは友だちになった。
その子のやってる音楽に感化されて、自分も音楽を始めた。
それまでの私は社会的構造と痛みについての詩だけを書いてきたのに、好きな子の詩も書くようになった。
もう次に誰かを好きになれるのはずっと先になるなと思っていたら、まぬけな顔でりんごを食べてたらふいに始まった。
あの子が毎朝聴くと言ってた曲が流れたときだった。
日だまりみたいな声で歌うあの子みたいになりたいな。
あれだけ望んでひとりで暮らすことを決めたのに、持て余してしまう夜は否が応でも来る。
でも夜の隙間を無理に埋めるのをやめて、代わりにずっと詩を書いていたら自分の気持ちの輪郭がクリアになった。
恋に落ちる瞬間を自覚するようになるなんておもろいな。
そんなことを思いながら火をつけるラッキーストライク。二度と同じ日は来ない。iPhoneのメモを開いて、詩をまたひとつ書いて自分を抱きしめながら眠った。