自分のことを好きな日もあるし、嫌いな日もある。芯を大事にしながら変化を肯定する
2026/7/1
歳月とともに、すべてのものは変わってゆきます。樹木が育つごとに年輪が刻まれるように、生きて積み重ねてきた自身の軌跡について、俳優の千葉雄大さんは、「答え合わせをしているような年月だった」と振り返ります。
そんな千葉さんは、2026年7月に開業10周年を迎える仙台PARCO2のキービジュアルのモデルを務めました。仙台の街の移ろいとともに10年の歩みを重ねてきた仙台PARCO2と、そのときどきの自身と向き合いながらしなやかに進んできた千葉さん。
窮屈に感じることも多く、休みがちだったという高校時代のこと。「あざとい」「かわいい」といった自身への形容に感じていたこと。家族との関係。キービジュアルのテーマでもある「ルーツを見つめながら、 自分なりに変化していくこと」を中心に、30代後半を迎えた今の千葉さんの思いをお聞きしました。
―まずは今回の撮影について、感想をお聞きしたいです。仙台が「杜の都」と呼ばれることなどから着想された、植物の装飾が印象的なセットでしたが、いかがでしたか?
千葉:緑に囲まれて、腕にも蔦が巻かれていて、スナフキンみたいな気持ちでした(笑)。最近、メットガラに来ている人たちの服をずっと見てたから、こういうコンセプチュアルな撮影ができて嬉しかったです。
―千葉さんは、仙台市のお隣、宮城県多賀城市のご出身ですが、仙台PARCOに行かれたことはありますか?
千葉:あります。僕が上京する前にはなかったので、仙台PARCOができてから駅前が一気に都会になった感じです。僕の中でPARCOは都会の象徴だったので、仙台にできたのはすごいなと思いましたし、そこに飾られるなんて緊張しちゃいます。
―地元にはどのような思いを持っていますか?
千葉:学生時代は世界が狭いこともあって、どちらかというと窮屈に感じることも多くて。だから高校を卒業して東京に出て、いろんな人がいることに僕はすごく救われたんですけど、上京してからの時間の方が長くなってきてからは、地元に帰ったときに良さを再認識するようになりました。緑も多いし、都会だし、住みやすいと思うんですよね。東京にも1時間半ぐらいで行けるし。あと、慎ましくて優しい県民性な気がします。
―今、地元についてのお話を伺ったのですが、今回のキービジュアルのコピーには「ルーツ」という言葉が入っています。千葉さんにとって、ルーツといえるような物事や場所はありますか。
千葉:いくつもある気がします。生まれた場所だけじゃなくて、上京してできた居場所もルーツだし、この仕事もそうだし、「木」みたいなイメージです。
―木のようにたくさんの根っこから栄養を蓄えて、いまの千葉さんができあがっているんですね。
千葉:そうですね。僕は結構、その場面の感覚で生きていて。芯みたいなものは大事だと思うんですけど、明日には考え方が変わることもあるから、このインタビューも今日と明日では、もしかしたら答える内容が違うかもしれない。だから、そのとき思ったことを大事にしています。もちろん「これはいい」とか「これはいやだ」という価値観は自分の中にあるけど、それも年々変わっているかもしれないです。しかもいやだと思っても、やらなきゃいけなかったらできちゃうこともあるし。だから、ネガティブなことをどう楽しめるかは、大事にしているかもしれない。悩むだけだったら誰でもできるし、そこからどうするかが大事だと思うから。
―悩んで立ち止まったままになってしまうことは、あまりないですか?
千葉:あんまりないかも。
―それは、お仕事をする中で切り替える方法を身につけていったんでしょうか?
千葉:徐々にそうなり始めたのは高校生ぐらいからで、仕事を始めてさらにですかね。別に嫌なことがあったとかでもなく、なんとなくだったんですけど、僕はあんまり高校に行ってなくて。誰とも話さずに1日が終わるような時期を経て、やりたくないことや嫌なことは、なるべく避けたいと思うようになったんです。
でも大学に入って、スカウトされてこの仕事を始めてからは、好きなことをやるために、どんなステップを踏まなきゃいけないのかを学んで、自由には責任が伴うと知りました。ただ、やりたいことのためにやらなきゃいけないことがあるとき、いやいややるのはつまらないから、「あの人面白そうだからちょっと話してみよう」とか「この台詞、こういう風に言ってみたらちょっと変わるのかな」とか「このお仕事のお弁当美味しかったな」とか、なんでもいいんですけど、そういうことを思いながらやっていますね。
―お話を伺っていて、千葉さんは変化するということを肯定的に捉えられているように感じました。
千葉:仕事を始めたばかりの頃によく、「変わらないでね」とか「そのままでいてね」と言われることがあって。だんだん怒られることも減っていくから、自分で自分の手綱を引く必要があるし、人に何かを言わなきゃいけないことも増えたりして、変わらざるを得ないことが多いから、その言葉の意味もわからなくもないなとも思います。
ただ、基本的に早く歳をとりたいんです。僕自身は若さに固執する感覚があんまりわからなくて。白髪も育ててるし、皺はあんまりできないですけど、ちょっと欲しい。体格も昔とは全然違う。でも、自分がそうしたくてしてるんだったら、なんでもいいんじゃないかなって。
ー年齢を重ねることやそれに伴う変化について、ネガティブに感じざるを得ないような言葉や情報も少なくないなかで、千葉さんが早く歳をとりたいと思うのはどうしてですか?
千葉:30歳から35歳がすごく楽しくて、生きるのが楽になったんです。でもこの頃また窮屈になってきて、これはもう40歳にならないと変わらないんじゃないかなと思って。
ーまた窮屈になってきた理由に心当たりはありますか?
千葉:いろんなことに緊張しなくなってきたのが、自分の中であんまり良くないなと。あんまり人に好かれたいとも思わなくなったし、言えなかったことも言えるようになってきたけど、逆に伝え方が難しくなってきたりして。感覚的なものなので言語化が難しいですけど、とにかくもう30代に飽きた(笑)。
ー人に好かれたいという思いが減ってきたというお話がありましたが、もともとは違いましたか?
千葉:昔は嫌われるのは嫌でしたし、完全に人の顔をうかがって生きていた気がします。でも、100人中100人全員に好かれるのは無理だと思うようになって。今はなんで無理に好かれなきゃいけないんだろうと思うし、好きになってくれる人だけ好きになってくれればいいかなと。友達もちゃんとできたから、そういう人たちが周りにいれば、外で戦っても帰る場所があるし、それでいいかなって。
ー揺らがない部分が自身の中でできたんですね。
千葉:あとはなんだか、定期的に芽を摘みたくなるんですよね。僕の心は、いろんなことが固まってきちゃったと思ったら、バーンって崩したくなるんです。飽きっぽいのかも。
ーそれはたとえば人からの見られ方についての話だったりしますか? それこそ「かわいい」とか「あざとい」みたいなこととか。
千葉:そうそう。ふるまいを期待されるとなんて返すのが正解なんだろうと思うし、そう言っておけば喜ぶ人だと思われてるのかなって。くくられることが嫌だという気持ちがありますね。窮屈なのは全部嫌かも。
ー早く年齢を重ねたいというお話も含め、千葉さんはある種の固定概念的なものから自由でいたい気持ちを持っているのかなと思いました。
千葉:そうですね。ただ、そう言うとすごく刺激的な人みたいに思われるかもしれないけど、僕、生活は全然安定派です(笑)。仕事とか社会とかについて、窮屈なことは嫌だと思っています。
ー仙台PARCO2は今年10周年を迎えるのですが、10年前よりも今の自分の方がいいなと思える部分はありますか?
千葉:いわゆる「自己肯定感」みたいなものが、あんまりわからなくて。自分のことを好きな日もあるし、嫌いな日もあります。ただ、わんこを飼い始めてからわりと家族に優しくなったのは僕にとって良い変化ですね。もともと全然連絡もしなかったんですけど、預かってもらうために会う機会も増えたし、生きものを育てる立場になって、「もしかしたら家族はあのときこういう気持ちだったのかな」みたいなことも、なんとなく感じるようになって。答え合わせみたいな年月だった気がします。
ー人間以外の生きものに助けられて、人との関係性が柔らかく変化することってあるように思います。
千葉:本当にかすがいだと思います。一緒にしないでと思われるかもしれないけど、子育て番組とか見ているとすごく共感します。
ーさきほど「場面の感覚で生きている」とおっしゃっていたので、もしかしたらあまりそういうことは考えられないのかもしれないのですが、今後の10年、個人として、あるいはお仕事の面で、こんな風に過ごしていきたいというイメージがもしあれば、最後にお聞きしたいです。
千葉:10年でしょ、なんだろう……、1曲当てたいですよね。
―音楽ですか?
千葉:全然予定はないんですけど、お金ほしいから(笑)。冗談ですけどね。
ーたとえば俳優として今後演じてみたい役柄などはありますか?
千葉:役に関してはあんまりないんですよね。でも家族ものの作品はやりたいかも。最近あんまりなくないですか。
ーそれはさきほどの、わんちゃんを迎えてからご家族とのコミュニケーションに変化があったというお話とつながりがあったりはされますか。
千葉:役を通して、自分が言えなかったことが昇華される経験をしたことがあって。『小さな神たちの祭り』という東日本大震災がテーマになったドラマで、震災について思っていることを吐露するシーンがあって、すごくすっきりしたんです。そのとき演じた子は、震災で家族がみんないなくなってしまって、自分だけが助かって、街はどんどん復興して変わっていくけど、自分はなにも変われないという役柄で。僕自身は震災のときには上京してこの仕事を始めていたから東京にいて、家族と何日間か連絡が取れなかったり、そういう不安は経験しているけど、震災についてコメントを求められたときに、自分より大変な人たちのためになにを言ったらいいんだろうと思ったりしていました。そういう思いが役とリンクして、すごく救われたんです。
―そうだったんですね。
千葉:最近は、ポップなことで言うと、昔買えなかったものを買ったり、これまでできなかったことをどんどん取り戻している感じがして。さっきも言ったように、答え合わせをしているような感覚があるんです。その一環に家族との関係もあって、昔は言えなかったけど、今やっと言えるようになったことがあって、これまでの思いをどんどん清算している感じです。そういう中で家族ものをやってみたいと思うのは、『小さな神たちの祭り』での経験があったからですね。
ー千葉さんはショートフィルムの監督、脚本も務められていますが、つくることと、演じることで思いの昇華のされ方に違いはありますか?
千葉:違います。僕は脚本を書くときはエンターテインメントにすることが大事だと思っているから、結構いろんな視点を入れるので、全部が全部、自分が言いたいことではないんです。役を演じる場合は、もうちょっと規模が小さく、高い密度で1人の気持ちに寄り添う感覚が自分の中であります。表現する手段はいっぱいあった方がいいと思うから、なんでもできるようでありたいんです。だからさっき冗談みたいに言ったけど、音楽がもしかしたらその一つに入ることもあるかもしれないなと思っています。
千葉雄大
1989年3月9日生まれ。宮城県出身。
2010年『天装戦隊ゴセイジャー』アラタ/ゴセイレッド役で俳優デビュー。
映画『殿、利息でござる!』で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。
近年の主な出演作に、『アンメット ある脳外科医の日記』(2024)、『ダメマネ!-ダメなタレント、マネジメントします-』(2025)、『おコメの女―国税局資料調査課・雑国室―』(2026)など。
プロフィール
【PARCO2 10th Anniversary Campaign】
HUG ROOTS, NEW ROUTES
かさねるほどに、新しく
緑豊かなこの街で、仙台PARCO2は10周年を迎えました。
木々が、長い年月をかけて年輪を刻んでいくように
都市も人も、時をかさねて豊かに育っていく。
10年の年輪を重ねた仙台PARCO2は、
この街で培った「根っこ」を大切にしながら
より自由に、新しい枝葉を広げていきます。
うつろう日々を歩むあなたの、都市の木陰になれるように。
時をかさねることを楽しもう。
かさねるほどに、新しく。
HUG ROOTS, NEW ROUTES.
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Producer, Creative Director & Copywriter:野村由芽(me and you)
Art Director & Designer:サリーン チェン
Photographer:藤田一浩
Flower Stylist:橘優子(橘)
Stylist:壽村太一
Hair & Make-up Artist:鈴木かれん
プロジェクト情報
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me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。
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me and youが発行している小さな本や、トートバッグやステッカーなどの小物を販売しています。
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