「愛すること」は、しばしば幸福と結びついて語られます。けれど現実を生きる私たちは、うまく愛せなかったり、そもそも愛すること自体が難しくなったりする局面にたびたびぶつかります。
たとえば、瞬間的な感情が流れ出すSNSでは、自分には理解できない相手への「わからなさ」がそのまま「愛せなさ」へと傾き、それが「受け入れられないのであれば、排除してもいい」といった中傷や攻撃となって表れることもあります。さらに政治的な立場や信念、社会的な格差などとも結びつきながら対立や分断が深まっていく光景を、私たちは日常的に目にしています。
それでもなお、愛せない感情を抱えたままでも、価値観が相反したとしても、差別や抑圧を許さずに、共にあるための距離や関わり方を探ることはできないのか。何気なく幸福なものだと受け入れている「愛」の周辺に、どういった困難が存在しているのか。このシリーズではそのヒントをつかむために、「愛の難しさはいったいどこからやってくるのか」を手がかりに、さまざまな専門分野を持つ方の視点から掘り下げてきます。
・藤原辰史さん
歴史学の課題としての「愛」
「愛国心」や「家族愛」。技法化された「愛」の背景にあるもの


