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連載

Stranger(東京・菊川):連載「あの映画館に行こう」

カフェ併設、話題の新作から独自の特集企画まで、DJイベントやオリジナルマガジンも

映画館でスクリーンを見つめるとき、わたしたちは、他者の背景にある日々やその連なりを、社会の一面を、複雑さや曖昧さを、ひいては自分自身を見つめているのかもしれません。

この連載では、me and youがおすすめしたい映画館をご紹介。独立系のミニシアターを中心に、me and you little magazineで記事を制作した作品やカルチャートピックスページでおすすめした作品を上映している映画館から、つくる人をバックアップする映画館、地域に根ざした場づくりをおこなっている映画館、その場ならではの鑑賞体験ができる映画館まで、さまざまな映画館で働く人たちの声を集めます。

今回ご紹介するのは、2022年に東京・菊川で開館したカフェ併設型ミニシアター・Stranger(ストレンジャー)。話題の新作上映から独自の特集企画までおこない、映画と関連したイベントやオリジナルマガジンも制作しています。番組編成の鈴木里実さんに言葉を寄せていただきました。記事の最後には、「あの映画館へ行こう」のGoogle Mapも埋め込んでいるので、お散歩や旅のおともにぜひご活用くださいね。

東東京唯一のミニシアター。文化の発信拠点としての役割も担っていきたい

Stranger・鈴木里実さん(番組編成)

1.どんなことを大切にしている映画館ですか?

Strangerは、「映画を知る」「映画を観る」「映画を論じる」「映画を語り合う」「映画で繫がる」という5つのコンセプトを軸に、2022年9月に設立されました。49席というマイクロミニシアターですが、その分、1作品1作品の映画との距離が近くに感じられるかと思います。

物理的にもスクリーンと客席との距離が近いですし、カフェを併設しているので映画鑑賞の前後にゆっくり過ごしていただくこともできます。これから観る/今観終わった映画に思いを巡らせていただけるのはもちろん、気さくなスタッフが多いので、お客様と感想を話し合ったり、観たい作品や企画のリクエストを伺ったりと、心理的にも映画との距離が近いと感じます。

席数は少ないですが、各列に十分な段差があり、前の人を気にせずに鑑賞できます。シアターの椅子も座り心地がいいとご好評をいただいているので、スクリーンに没入できる環境であると思います。

菊川というと初めは「どこ?」と言う方もいらっしゃるのですが、新宿から20分程度で、駅からもとても近いので、一度いらしていただけると「意外と近い」と思っていただけるかと思います。

2.上映作品を選ぶとき、プログラムをつくるときのこだわりは?

話題の新作から良質なアート系の作品、お子さんとも一緒に鑑賞できる作品、またStranger独自の特集企画など、多彩な作品を上映することで間口を広く持ち、映画に接していただける機会を増やせるよう、いい意味で「雑多」でありたいと思っています。

東東京唯一のミニシアターなので、文化の発信拠点としての役割も担っていきたい、ここから映画を発信して行くぞということは常に考えています。

Stranger独自で企画している特集では、有名な監督でもよく知られている面とは違う別の一面を提示できたらと思っています。たとえば今年開催した「ハル・アシュビー特集」では、アメリカン・ニューシネマの名作で知られるアシュビーの、不遇だった80年代の作品を中心に、また「ヴィンセント・ミネリ特集」では、ミュージカル監督として有名なミネリの知られざるメロドラマを特集しました。映画史の裏街道というか、人間って一方から見ただけでは判断できない複雑な面があるよね、ということをStrangerの特集では意識しています。

また、上映作品に関連したDJイベントを開催したり、特集に併せてオリジナルのマガジンを制作したりしているので、映画を「観る」ことはもちろんですが、観ることから聴くこと、読むこと、論じること、語り合うことなど、そこからいくつもの窓が開いていったら嬉しいですね。

映画館へ行けるコンディションって、本当に人それぞれだと思うんです。行けない時や行きたくない時はもちろん無理して行かなくていいし、行きたいと思った時にいらしていただけたら何よりで、今映画観たいな、どこに行こうかな、と思ったその先にStrangerがあったらなと。その選択肢の一つでありたいと願っています。

3.「わたしとあなた」というテーマで、これまでに上映した作品やこれから上映予定の作品からおすすめしたい映画を1本教えてください。

少し先ですが、来年1月からStrangerオリジナル企画として「ロバート・アルトマン×アラン・ルドルフ特集(仮)」を開催します。

アルトマン監督はご存知の方も多いと思いますが、アルトマン作品で助監督や脚本を務めていたアラン・ルドルフという監督がいまして、実は私自身数ヶ月前に知ったのですが、これはもっと広く観ていただきたい、知ってほしいと強く思って企画しました。アルトマンからの影響ももちろん感じられるのですが、ルドルフ作品の持つ独自の雰囲気が他に類を見なくて、すごくいいんです。

その中の1本『ロサンゼルス・それぞれの愛』という作品は群像劇なのですが、登場する人物みんながみんな、どうも上手くいかなくて空回りします。愛してほしい人には愛されなくて、思ってもいない方向から思いを告げられて、矢印が双方に向くことがない。ただその分、自己を強烈に感じるんです。他者を通して自分を直視しているというか。70年代のアメリカにこんな映画があったのか、まだまだ自分の知らない映画史がある! とゾクゾクして嬉しくなりました。

📽️映画『ロサンゼルス・それぞれの愛』

2026年1月16日より特集「ロバート・アルトマン×アラン・ルドルフ特集(仮)」内で
Strangerにて上映
脚本・監督:アラン・ルドルフ
製作:ロバート・アルトマン
出演:キース・キャラダイン、サリー・ケラーマン、ジェラルディン・チャップリン、他

特集ページ

📍映画館情報
Stranger
住所:〒130-0024 東京都墨田区菊川3丁目7−1 1F
電話番号:080-5295-0597
営業時間・休館日:上映スケジュールに準ずる
Website
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🚶‍♀️映画館を訪れてみよう
me and youがご紹介したい映画館を地図にまとめました。
Strangerさんのほか、全国の映画館を都度更新していきますので、おでかけのお供にチェックしてみてくださいね。

me and youの「あの映画館に行こう」マップ

鈴木里実

墨田区菊川のミニシアターStrangerの立ち上げメンバーで、特集上映等の企画を担当。
特集に併せてStrangerが発行するオリジナルの批評誌『Stranger MAGAZINE』の二代目編集長も務める。また、趣味ではじめた映画にまつわる刺繍「シネマ刺繍」が秘かな注目を集め、刺繍作家としても活動中。

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「Masterpiece OZU 2025 小津安二郎特集」

特集期間:
2025年12月5日(金)から12月25日(木)まで

上映作品:
『風の中の牝雞 4Kデジタル修復版』
『晩春 4Kデジタル修復版』
『麥秋 4Kデジタル修復版』
『東京物語 4Kデジタル修復版』
『東京暮色 4Kデジタル修復版』
『彼岸花 デジタル修復版』
『お早よう デジタル修復版』
『秋日和 デジタル修復版』
『秋刀魚の味 デジタル修復版』

特集ページ

『ゲット・クレイジー』

上映期間:
2025年12月26日(金)から12月31日(水)まで

作品ページ

「ロバート・アルトマン×アラン・ルドルフ特集(仮)」

特集期間:
2026年1月16日(金)から

上映作品:
『ロサンゼルス・それぞれの愛』1976/アルトマン製作×ルドルフ監督
『わが心のジミー・ディーン』1982/アルトマン監督
『チューズ・ミー』1984/ルドルフ監督

特集ページ

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