前田エマ、韓国の服にあう。“外出用パジャマ”ブランド「Owb」ゴンウォンさん

コロナ禍を期に“ワンマイルウェア”が流行った。ワンマイルウェアとは家から1マイル（約1.6km）程度の「ちょっとそこまで」をテーマとしたファッションだ。部屋着のまま外へも出られて、快適で着心地よく、それでいてだらっとしすぎない、ちょうどいいファッション。

韓国アイドルの練習着や空港ファッションなどの影響もあるのか、日本でも韓国っぽい“ワンマイルウェア”が流行ったような気がする。

そういったワンマイルウェアとは一線を画しながらも、心地よさを大切にした“外出用パジャマ”をコンセプトとしたブランド「Owb」をひとりで運営するのは、モデルとしても活躍する20代前半のゴンウォン（GONGWON）さんだ。

「Owb」は日本でもポップアップストアを開催し、オンラインショップも展開している。ゴンちゃんの周りには日本の若いモデルやスタイリストが集まり、新しい世界が始まっていくようなワクワクした雰囲気で溢れている。

Q.Owbを始めたきっかけは何ですか？

幼い頃からイラストを描いてきて、いつかは工芸をやりたいというのが長年の願いでした。それらは私にとって、時間も空間も忘れて没頭できる唯一のことだったのです。
人間だけができるような技術の仕事。始まりから最後の仕上げまでを自分でできる仕事。そんなものが好きで、将来的にもそういうことを望んでいました。
「Owb」はその延長線上にあります。

Q.幼い頃からファッションが好きでしたか？ どんなことを考えながら生きてきましたか？

10代初めの頃、服を着たときの“気持ち良いかたちと着心地”を知り、服のシェイプと着用感へのフォーカスが始まりました。しかしファッションデザインをしたり、ファッション業界に携わったりしたい気持ちがあったわけではなく、ただ自分が作るものを偏執的に、頑固にこだわって作り出す職人になりたいと思いました。

現在、手仕事に結びつくような洋服を作るようになったきっかけとしては、これまでも作りたいと思うシルエットが頭の中に確実にあり続けていて、そういうことを考えるのを楽しんできたというのがあります。なので、洋服を作るというよりも、他のものと同じようにアイテムの一つとして捉えて作り続けています。

ファッションが好きと言えるかどうか正確にはわかりませんが、私は人間のシルエット、動くかたちと重さ、感触、そのようなものに没頭しており、バッグやテキスタイルアイテム、衣類などは、全てそういったものにつながるアイテムなのです。

Q.ブランドのコンセプトは？

最初は「外出用パジャマ」を想像してスタートしました。
Owbは空間と造形物の調和のとれた美しさを楽しみ作っていくアートワークブランドです。

例えばバッグを作るとき。部屋のドアのにかかっているバッグに植物や花瓶が入っていて、風に吹かれて気持ちよく動く姿が空間と調和している様子を想像して作ったりします。 洋服の場合は、人が着たときの形や動き。その美しさを楽しむ感覚を想像します。

Q.どんなものに影響を受けていると思いますか？

風に舞うもの。自然が動いている姿。自然物。好きな音楽。ダンサー。童話の本。好きな人。好きな人の話、日常での感覚などなど。

Q.今後の計画や夢はありますか？

私の好きな、私の日常の中で作りたいもの、描きたいものを作り続け、楽しみたいです。そのために学びながらいろいろな場所へ行き、洋服のパターンもそうですし、それ以外にもさまざまな学問を勉強をするために時間と労力を使っています。

素敵なシルエットの好きな服を着て、歩いて、踊って、美しさを楽しむ人たちと一緒に楽しんでいきたいんです。なので、自分だけの新鮮な感覚や魅力を発展させて、継続することが目標です。将来的には理想のアトリエとスペースを作りたいです。

🥱パジャマセット

メランジグレーのパジャマ。外出用パジャマで作った最初のアイテム。ほのかなパールが上品にきらめく。細い紐を多用しており、楽にサイズ調節ができる。

🥱シャイ・ドレス

顔をすっぽり覆うほどの2つ重ねの大きなフード。
より楽な着用感のためにワンピースをスカートと上着に分離した。縫い目が表になっていたり、切りっぱなしの裾などラフな仕上げ。

🥱クッションバッグ

破って縫い合わせた布を毛糸のようにして、形を整えながら編んだバッグ。ふわふわ枕のような感じで、クッションバッグと呼ぶことに。
服と違い、バックを作る過程で捨てられる生地が無い点が大きな魅力。ひとつひとつ生地はもちろん、ディテールなどが異なる。

今回、ゴンちゃんにお話を伺う中で強く感じたこと、それは「自分の感覚に素直なって制作を続けること」の強さだった。日常生活の中で感じる”自然な美しさ”に反応し、自分で手を動かし、その美しさを確かめていく。
「Owb」のアイテムたちに共通するゆるさ、柔らかさは、その”自然な美しさ”を突き詰めた先にある。
最近ではYOASOBIやNewJeansといった日韓のトップアーティストたちのヴィジュアル作りでも使われている「Owb」のアイテム。「Owb」の持つ空気感が、今の時代と合っているのだろうなと思う。まだ始まったばかりのブランドが、これからどんな未来を作っていくのか、楽しみだ。