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「前向きな後悔だから、後悔ではない。言うなれば、悔前」(日記:conomi、返事:舟喜さとみ)

もし二人の日記が同じ場所にあったらそこはどんな香りがするのだろう

“まず日記をつけるリズムをつくること。そして個人的な日記を共有してみること”。そんなひそやかな試みを形にするべく、「日記をつける三ヶ月」というワークショップを「日記屋 月日」とme and youが開催しました(2022年9〜11月の全5回にわたり実施)。me and you little magazineでは、最終回でおこなった「ある人の日記を読み、別の誰かがお手紙を寄せる」という企画に参加いただいた方々の「日記文通」をお届けします。

日記をつけることは個人的な行為であるにもかかわらず、誰かの日記を読んでみると、他者であるはずのその人の感情や思考と、自分のそれが交差する驚きが生まれることもあります。わかりやすさを重視してならされた言葉ではないからこそ、そのときを生きる人たちの営みや世界のありようをより一層くっきりと映し出すこともあるかもしれません。今回は、ワークショップ参加者であるconomiさんの日記に、舟喜さとみさんがお返事を書いた日記文通をご紹介します。

※今回の「日記文通」は、me and youが隔週金曜日にお届けしているニュースレター「message in a bottle」(登録はこちらから)内で実施している企画をもとにしています。
※この記事は、「日記屋 月日」とme and youの「日記をつける三ヶ月」のワークショップで書かれた日記とお返事をほぼ原文ママで掲載したものとなります。

2022年10月20日(金)の日記/conomi

10/20(木) 秋晴れ 「代々木上原の林檎、シナモン」

昨夜寝る前に仲本工事さんの訃報を知った。最近こういう知らせが多くて少し動揺する。物心付いた頃からテレビスターとして馴染みがあった方々がお亡くなりになる年代に差し替かっている。(少し前は、訃報を聞いてもあまり知らない方が多かった)もうお姿を見れないということはやはりどこか寂しい気持ちになる。もう会えないという事実を知っているのと知らないのでは心の持ちようが違う。逆も然り。少し前のノマドランドで観た言葉を思い出す。「亡くなるのは旅に出るのと同じようなもの」。

色々な夢を見た。寝すぎた。伸びをして一日をゆっくり始める。

過ぎてしまったことに対して、どうすればよかったのか、本当はあのときどういう気持ちだったのかについてひたすら思考を巡らせる。自分の気持ちなのに、何層ものレイヤーに分かれていて、角度を変えるだけでいろな見方ができる。ぐるぐる。同じところの周回なんだけど、いつも違う発見がある。未練がましいなと思いつつも、未来のために過去と向き合うことは決して無駄ではないと思う。そんな時間も大切にしたい。後ろ向きな後悔ではなく、前向きな後悔だから、後悔ではない。言うなれば、悔前。(どゆこと?)

会社帰りに同僚とレセプションに行ってワインを飲む。そのあと代々木上原で降りてふらりと行きたかったお店nephewに立ち寄る。美味しいお酒とおつまみを頂く。ほわんといい気持ちで、カクテルも美味しくて、カウンターのお姉さんも優しくて幸福度が上がった。並んでいるジンのいくつかには個人的な思い入れがあって、それを眺めながら飲むお酒もまた良かった。気になってた仕出し屋さんのメンチカツは一口目からジューシーで、季節のりんごとピスタチオを混ぜたカクテルによく合った。いくらか前向きなラインのやり取りを見返す。来週会う人のことを想う。マスクの中はほんのりシナモンとりんごの香り。アイスを買って食べながら帰ろう。

お返事/舟喜さとみ

conomiさん、こんにちは。
人生で初めての日記文通、ドキドキしています。
著名人の方の訃報に動揺すること、私も最近ありました。
まさに、以前は知らない人が多かった、とも感じていて、これが歳を重ねるということなのでしょうか。
身近な人が亡くなる経験を経てからは、友人や知人と会う際、この先いつ会えるかわからない、となるべく思ったことは口に出して伝えています。
だけど一方的に知っている著名な方だとそんなわけにもいかないですね。
SNSの力で思いを伝えやすい時代にはなりましたが、他者との距離というのはきっと変わらないのだとおもいました。
いまこの手紙を書いているときも、conomiさんの人生でたった一度の一日に触れられたこと、手紙でお返事ができること、感じたことはなるべく伝えたいな、という意気込みです。
過去の見方が変わるというのは、素敵ですね。
前向きな後悔を、「悔前」という言葉で表現されているのも素敵です。
同じところを周回するconomiさんが着々と見方を増やしているご様子を想像して、なんだか元気をもらっています。
きっとこれからもその見方が増えて、そのたびに前向きな空気が増えていきそうです。
勝手ながら感じました。
わたしも自分の10/20の日記を読んでみたのですがどうやら焼き鳥を食べていたようです。
conomiさんの日記に流れていたシナモンとりんごの香りとは違う匂いがしそうで、もし二人の日記が同じ場所にあったらそこはどんな香りがするのだろう、とおもしろい気持ちになりました。
またどこかで文通したいです^O^
ふなき

2022年、ボーナストラックにおちていた
はっぱたちです!! in12月

conomi

出版社で働く会社員。4月からは地元に帰ってクラフトビールの会社で広報。
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舟喜さとみ

書店員。フェミニズムと子どものための本棚を中心に担当。
他、イベントやフェアの企画を行っている。
2021年より、「韓国ドラマファンクラブ」結成。
『私たちの賢い本屋生活』(Vol.1〜Vol.3)というZINEのシリーズを作っている。
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日記:「日記のなかでねむりたい」

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me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。

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