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「まだお別れしたくなかったので、サイゼへ移動」(日記:下田理沙子、返事:白鳥菜都)

思い出話が盛り上がる時は、同じ気持ちを共有していた時間が過去にあったから

“まず日記をつけるリズムをつくること。そして個人的な日記を共有してみること”。そんなひそやかな試みを形にするべく、「日記をつける三ヶ月」というワークショップを「日記屋 月日」とme and youが開催しました(2022年9〜11月の全5回にわたり実施)。me and you little magazineでは、最終回でおこなった「ある人の日記を読み、別の誰かがお手紙を寄せる」という企画に参加いただいた方々の「日記文通」をお届けします。

日記をつけることは個人的な行為であるにもかかわらず、誰かの日記を読んでみると、他者であるはずのその人の感情や思考と、自分のそれが交差する驚きが生まれることもあります。わかりやすさを重視してならされた言葉ではないからこそ、そのときを生きる人たちの営みや世界のありようをより一層くっきりと映し出すこともあるかもしれません。今回は、ワークショップ参加者である下田理沙子さんの日記に、白鳥菜都さんがお返事を書いた日記文通をご紹介します。

※今回の「日記文通」は、me and youが隔週金曜日にお届けしているニュースレター「message in a bottle」(登録はこちらから)内で実施している企画をもとにしています。
※この記事は、「日記屋 月日」とme and youの「日記をつける三ヶ月」のワークショップで書かれた日記とお返事をほぼ原文ママで掲載したものとなります。

2022年9月8日(木)の日記/下田理沙子

9時半起床。今日は高校の友達2人と浅草に行く。前日までの天気予報は雨で不安だったが、くもりで抑えてくれた。この2人と遊ぶ時が晴れの日は珍しい。毎年恒例で富士急ハイランドへ行くが、雨でメインの乗り物は乗れない。晴れたかと思えば、豪風で乗り物がストップしてしまうなど散々。フードコートで過ごす時間の方が長い。こんなにも天気に恵まれないことは、普段の行いの悪さが原因であることはこの3人では自明のこと。もう慣れきっている。

上野駅から歩いて浅草駅に向かう。仏壇系のお店が多かった。なんでだろう。

浅草駅集合のはずが、集合時間にはみんなバラバラの場所にいて、結局雷門前集合。外国人が多く、着物の人もいて、観光地を感じた。お参り、おみくじを引き、ローヤル珈琲店へ移動。マロンパフェとロワイヤル珈琲を注文した。店員さんがメモを取らずにオーダーを通していたので、ここで私はバイトできないと思った。久しぶりに生クリームとアイスを食べて脳に甘さが電撃した。珈琲にも生クリームが入っていたので、胃の中がクリームした。3人で話していると、声のボリュームがわからなくなってしまい、店員さんに注意される。こんなオシャレな場所で20越えの大人が普通に指摘されるのも恥ずかしいし、他の人達も同じくらい(だと思う)の大きさで話していたので、しょんぼりした。すみませんでした。
気まずいので店を出た。隅田川に移動。ベンチで今度行く大阪・京都旅行の計画を立てた。いつもお店を決めてくれる子が今回も計画を進めてくれる。私はどこに行きたいとか決められないし、選ぶのも面倒くさいので付き合うならこのようなタイプがいい。結局東京の観光地に行っても、やることは地元のフードコートで事足りることがわかった。他には将来、犬、高校の思い出などを話した。
いい時間になったので、牛かつを食べに行く。私のリクエスト。高校生ぶりに食べた牛かつはやっぱり本当に美味しい。一切れ一切れ大切に食べていたら、最後の二切れで火が消えてしまった。高校生の時は挑戦しなかった良いツンとしたわさびもゴリゴリの岩塩も味わうことが出来た。他の2人はこれがはじめての牛かつらしく、絶賛してくれて牛かつ経験者の私は鼻が高かった。
まだお別れしたくなかったので、サイゼへ移動。ドリンクバー単品でうるさいし迷惑な客達。嫉妬しちゃうインスタ女子の特徴、最近のファッション(真夏のニットアームカバーなど)はわからない、高校の思い出などを話した。
21時頃お別れした。いつも話すことは同じだし、おばさん達になってもフードコートやファミレスでうるさくしているし、天気は悪いと思う。

お返事/白鳥菜都

しょんぼりして、鼻が高くなって、まだお別れしたくないと感じた回の日。素直な気持ちを書きたくなるくらいステキなお友達が2人もいるのがうらやましいです。フードコートやファミレスに行くと、たくさんの人がいて、ついつい私は盗み聞きばかりしてしまいます。目の前にいる2人との会話がどんな風に始まって、どんな風に終わるのか想像してしまいます。ベンチでもサイゼでもしちゃう高校の思い出話が気になる…。思い出話が盛り上がる時は、同じ気持ちを共有していた時間が過去にあったからだよなあと勝手に思いました。雨でもくもりでも、フードコートやファミレスで元気に盛り上がることのできるおばさん達は、見ている側も元気になるのでぜひ続けてほしいし、続くといいですね。

P.S.
私も胃の中をクリームしたい!!!

白鳥菜都

下田理沙子

好きな色は黄色。好きな食べ物は餃子。水は1日2リットル以上飲みます。
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白鳥菜都

ライター・インタビュアー・編集者。本当は書くよりも喋るよりも、聞くのが好きです。
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me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。

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