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同じ日の日記

布団カバー/和田彩花

2022年2月22日(火)の日記

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年2月は、2022年2日22日(火)の日記を集めました。2月からフランスに留学しているアイドルの和田彩花さんの日記です。

2月からフランスに来ている。フランス語を習得するために、芸術文化の都で経験を積むために、社会的な性役割からいかに解放されるかを間近で見るために、個人主義を知るために、自分がこれから生きていく場所を探すために、私はフランスにきた。理由は一つに絞れないけれど、運よくフランスと縁のある環境で育ち、フランスの近代絵画を自分の価値観の軸として生きてきた私にとっては、この土地に来るべくしてやっと辿り着いたと思ってしまう。

今日も、朝から午後まで語学の授業を受けて帰宅した。自分の部屋に戻ると、家を出る前まではポップな赤色だった布団カバーが、白地に羽の模様が施された布団カバーに変わっていた。「おおお」と声を出して驚いた。

私は今、フランス人夫婦の家の一部屋を借りて生活している。布団カバーがサプライズみたく変わっていたのは、夫婦がやってくださったことだった。おそらく、私をイメージして選んでくれた布団カバー。

大好きなフランスでの生活はもちろん楽しく嬉しいものだけど、夫婦の家と学校以外の場所では、言語、文化の面で外国人への理解がいつでもあるわけではないし、ときどき不安がつきまとったりする。ときどき。

フランスに来て一ヶ月ほどしか経っていない私にはまだ安心できる場所は少なく、この布団カバーを見るたび、ここが安心できる場所だと感じる。安心は、周囲にいる人たちの心遣いや尊重する気持ちによって作られるんだと改めて感じた。自分もそういう人間でありたい。

同時に、この土地に来てからは何者でもない自分がいることも知る。日本で表に出続けた私にとっては、何者でもないことは気楽に思えたりするけど、この土地での学びや経験をゼロから作らなければいけない状況では、自信も負担も何もないと思った。

住む場所が変わったとしても他者を尊重する気持ちと、自分がどうしたいかは結局自分にしか決められないという現実は、これからも変わらなそうな唯一のものだと思った。

和田彩花
1994年8月1日生まれ。群馬県出身。アイドル。
2009年4月アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。
2010年5月「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。
2019年6月18日をもって、アンジュルム、およびHello! Projectを卒業。
アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。
特技は美術について話すこと。
特に好きな画家は、エドゥアール・マネ。好きな作品は《菫の花束をつけたベルト・モリゾ》。特に好きな(得意な)美術の分野は、西洋近代絵画、現代美術、仏像。
趣味は美術に触れること。
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和田彩花『私的礼讃』
2021年11月23日(火)発売
和田彩花『私的礼讃』

和田彩花『私的礼讃LIVE Album』
2022年1月31日(月)発売
和田彩花『私的礼讃LIVE Album』

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