年末年始はどこか焦る。年越しそばにおせち料理など、食べなくては良い年を送れないような気持ちにさせる食べものがあるからか。私は何にも手をつけられなかったので、せめてお雑煮を作ろうとしたけれど、冷蔵庫に消費期限当日の鮭があったので、お餅無しのお雑煮のようなものと焼き鮭と漬物と白米を朝食にした。昼食は昨夜のすき焼きの残りをすき焼きうどんにして、夕食はカレーライスを作った。冬籠りに気合いを入れて食材を買いすぎたので、余すまいと作っては食べるばかりの元日だった。
一つ、楽しみにしていたのは指輪である。大切な友達とお揃いの指輪を買ったのだ。私たちは二人とも同じ7号を薬指に嵌めた。寝ても覚めても身につけていると、指輪が身体の一部になるような初めての感覚がする。これを御守りに2022年を生き抜こう。
初夢の中で、私は小学生だった。片思いをしている教師が突然生徒たちに「先生は来週結婚します」と報告したので、胸がピリリと傷ついた。きっと私の方が先生のことを好きだけれど、まだ子供だから……その結婚相手には敵わないのだわと思った。すると、傷心の私に歌人の雪舟えまさんがアップルパイを焼いて学校へ届けに来てくれた。私はたちまち嬉しくなり、早く食べたい早く食べたいと校舎を駆けまわりながら目が覚めた。そんな夢をみたのは、ちょうど雪舟さんの歌集『たんぽるぽる』の文庫化にあたり解説文を書かせていただいているあたりだったからだろうか。あのアップルパイ、食べたかったな。