連載
ないならつくる。たとえ世界を変えられなくても
2025/3/5
一冊の本に出会うことは、新しい扉をひらくこと。たとえば頭や心にもやもやと霧がかかっているようなとき、世界の未知の側面に手を伸ばしたいとき、旅に出たとき、いつもは歩かない街に行ってみたいなとふと思ったとき……。そんなとき、本屋を訪れてみるのはいかがでしょう?
この記事では、me and youがおすすめしたい本屋さんをご紹介します。me and youが出版している小さな本を取り扱ってくださっている独立系の書店を中心に、自分の意思でお店を立ち上げたり、心地よい方法を日々工夫しながら、その土地に根づいた場所づくりを行っているお店たち。つくり手の表情が見える本屋は、そこに集まった人たちが想いや考えを交換したり、学びあうような場になったりしていることも。訪れればきっと、さまざまな形の居心地のよさに出会えるような本屋たちです。
今回は、名古屋でブックショップ&ギャラリー・ON READINGと出版レーベル・ELVIS PRESSを営む、黒田義隆さん、黒田杏子さんに言葉を寄せていただきました。記事の最後には、『あの本屋に行こう』のGoogle Mapも埋め込んでいるので、お散歩や旅のおともにぜひご活用くださいね。
1.どんなことを大切にしている本屋ですか?
ないならつくる、で、本屋を始め、出版を始め、ギャラリーを始めました。
世界を変えられなくても、せめて自分たちのいる場所はすこしでも耕すことができればと思いながら本屋を営んでいます。
2.選書のこだわりは?
本と本のあいだにあるものが立ち上がってくるように棚を作っています。
3.お店の空間のこだわりは?
空間や本棚などは、自分たちでできる範囲で少しずつ手を入れています。
どの本とも目が合うように、ということを意識して本を並べています。
大きな窓からたくさんの光が入ってくるところが気に入っています。
4.「わたしとあなた」というテーマで、おすすめしたい本を1冊教えてください。
『庭とエスキース』(著:奥山 淳志、発行:みすず書房/2019年)
いなくなってしまった人のことを想う。多くの言葉を交わし、ともに時間をすごし、心に触れた(ような、気がする)人が、どう生きていたのかを。
著者は20代で、北海道の丸太小屋で自給自足の暮らしをしながら絵を描いている「弁造さん」に出会い、14年にわたって写真を撮りつづけた。
本書は「弁造さん」の死後、残された大量のエスキースと自身が撮った写真、綴った文章を通して、「弁造さん」というひとりの人間の生と、それを追いかける自身を見つめた一冊。
「あなた」を“本当に”知るというのは答えの出ない大きな問いで、輪郭が見えたと思ったらその瞬間から淡くにじんでいく。それは描いても描いても完成することのない、エスキースのようなものなのだろうと思う。
📍書店情報
ON READING
住所:〒464-0807 名古屋市千種区東山通5-19 カメダビル2A & 2B
名古屋駅より地下鉄東山線で15分、 東山公園駅下車。2番出口より徒歩1分。
ビルのスロ-プ上がり2階へ。
営業時間:12:00〜20:00
定休日:火曜
URL:
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🚶♀️本屋を訪れてみよう
me and youがご紹介したい本屋を地図にまとめました。
ON READINGさんのほか、全国の本屋を都度更新していきますので、おでかけのお供にチェックしてみてくださいね。
黒田義隆・黒田杏子
『ON READING』店主、『ELVIS PRESS』代表。
2006年に、書店『YEBISU ART LABO FOR BOOKS』を、名古屋・伏見にオープン。2011 年に名古屋・東山公園に移転し『ON READING』としてリニューアル。様々な作家の展覧会も開催。
2009年に、出版レーベル『ELVIS PRESS』を立ち上げ、これまでにおよそ30タイトルをリリースしている。主な出版物に『Knitting ’n Stitching Archives. /宮田明日鹿』『WALL OF SOUND/OKATAOKA』『生活フォーエバー/寺井奈緒美』『骨になる/山口洋佑』『The Kings / 平野太呂』『世界をきちんとあじわうための本』などがある。
プロフィール
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