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創作・論考

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

わたしたちのことを映画にしてくれてなんとも言えない気持ちになる

全国公開中の映画『重力の光:祈りの記録篇』。これまで愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマにしながらさまざまなヴィデオ作品をつくってきた石原海監督が北九州に移り住み、困窮者支援をするキリスト教会に集う人々との出会いと交流から始まったこの映画は、人間の「生」の姿に迫り、「祈り」とは何かを問う、フィクションとドキュメンタリーを交えた実験的な作品です。me and you little magazineでは、北九州市・東八幡キリスト教会を訪れ、映画に出演した方々とお話しした様子をお届けします。

34年にわたって北九州市を拠点に生活困窮者の支援を行っているNPO法人抱樸。その理事長を務める奥田知志さんは牧師で、奥田さんのいる「東八幡キリスト教会」は、抱樸の施設「抱樸館」のすぐ向かいにあります。

この教会には、元ホームレスの人たち、元極道の人、虐待を受けていた人など、生きる意味を模索したり長患いに悩んだり、様々なバックグラウンドを持つ人々が集まっています。

そんな教会に集まる9人がイエス・キリストの十字架刑と復活を描いた受難劇を演じ、その練習風景やインタビューを収めたドキュメンタリー映画『重力の光:祈りの記録篇』。この地に移り住み、映画を撮ることになった石原海さんにとって、そして教会に集う人々にとって、東八幡キリスト教会とはどんな場所なのでしょうか? また、『重力の光:祈りの記録篇』は彼らにとってどのような体験だったのでしょうか? 石原海さんが「教会に集う、傷ついた愛すべき罪人たちの人生、星の輝きを宿した無名の人々を記録したいと思ったのだ」と表した本作の出演者の一人ひとりに会いに、北九州を訪れました。

週に何度も訪れる、お気に入りのショッピングモールへ

映画に出演した人々に話を聞くため、小倉駅から少し南西に位置する荒生田の住宅街へ。モダンなログハウスのようなその建物のなかに入ると、人々が集うホールと礼拝堂を繋いだ開放感のある空間が広がります。

東八幡キリスト教会の入り口

この日の夜、礼拝堂では祈祷会が行われる予定。

その前に、劇中で弟子・民衆・天使役を演じた下別府為治さんが、週に何度も足を運ぶというお気に入りのショッピングモールに連れて行ってくれることになりました。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

下別府為治さん。着ているのは、自身もボランティアを務める「NPO法人 抱樸」のポロシャツ

早速、石原海監督とともに、下別府さんのアテンドでバスに乗り込みます。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

東八幡キリスト教会が位置する荒生田から、ショッピングモールまではバスで向かいます

10分ほど先の停留所から少し歩くと、劇中で出演者たちが飲み食べし、プリクラを撮るシーンが撮影された巨大なショッピングモールが登場。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

近所のショッピングモールに行く、下別府さん

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

下別府さんはよく、ここの食品売り場でお酒を買い、フードコートで飲んでいるそう。「今日は祈祷会があるからお酒は飲まない」ということで、下別府さんはオーガニック玄米茶を購入。わたしたちにも振舞いながら、自身の人生について話し始めてくれました。

下別府

今は抱樸のボランティアの委員会とか交流会とかいろんな会議があるんだけど、みんなで話してるのが楽しいんだよね。だから仕事っていうか、わたしにとってはみんなと過ごす「遊び」。

ショッピングモールのフードコートには何度も来ています。顔見知りもいるんだけど、ここで飲むのはわたしひとりだけの「遊び」。フードコートには子どもがいたりするからいいよね。子どもを見てると羨ましいと思いますよ。

下別府さんは、「わたしは遊び上手なんだ」と笑いながら、これまでの人生を語ります。会社勤めをしていた頃は東京や大阪など各地で働き、その土地土地で飲み歩いていたこと。大きな病気が見つかり、長年勤めていた会社を辞めたこと。それでも「遊び上手」が高じて、地元である鹿児島の飲み屋で働くようになったこと。店のオーナーに勧められお見合いで国際結婚し、フィリピン人の妻との間に子どもにも恵まれたが、ある日妻子が帰ってこなくなったこと。その日の風景を今でも思い出すということ。

それをきっかけに事業もうまくいかなくなり、逃げるように福岡にやってきたといいます。自死を考えましたが死に切れずに6年間ホームレスとして生活した後、東八幡キリスト教会の牧師・奥田知志さんが理事長を務める困窮者支援を行うNPO法人・抱樸と出会いました。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

劇中でも印象的なプリクラのシーンは、ショッピングモールで撮影/『重力の光 : 祈りの記録篇』©2022 Gravity and Radiance

テレビや新聞のインタビューで自身の半生や抱樸での活動を話してきた下別府さんですが、映画に出演するのは『重力の光』が初めて。「俺たちにもできるのかな?」という気持ちがあったといいます。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

左から監督の石原海さんと、下別府さん

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

「天気のいい日は、あの山を越えて歩いてショッピングモールに行くんですよ」と向こうの山を指さす下別府さん。約1時間、自身の人生を振り返りながら話してくださり、記事には載せきれない、たくさんの大切なお話がそこにはありました

自分も他人も弱さを出せる場所で。「ダメじゃなかったら教会に来ないよ。完璧な人間だったら教会なんていらない」

フードコートで隣に座っていた下別府さんのショッピングモール友達にも見送られ、バスに揺られてまた東八幡キリスト教会へ。

夜の祈祷会に向けて次々と集まる人々。劇中で弟子・民衆役を演じた川内雅代さん、天使役の“福ちゃん”こと石橋福音さん、ユダ役の森伸二さんにも話を聞きました。映画の撮影が行われた1年ほど前のことを振り返り、「日々の中で、ふとあのときのことを思い出すんですよ」と川内さんは言います。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

左から川内雅代さん、石橋福音さん

川内

撮影から1年も経ったって感じがしないんですよね。大阪、東京、福岡っていろんなところで映画が上映されると聞いて、あのときにつくった映画が生きているというか、続いているのがすごく嬉しい。観た人が何を感じるのかなあって思います。海ちゃんとはこの教会で知り合ったのですが、「すごく有名な人なんだよ」って事前に聞いていて。

石原

それは(奥田)知志がテキトーに大げさなことを勝手にみんなに言ってたんだよ(笑)。そもそも最初は抱樸の映画を撮りたいと思っていたんですよ。そんなときに川内さんに「聖書の勉強をしてみない?」って言われて。

初めは「勉強をする=クリスチャンになる」ことを意味していると知らずに勉強を始めたのですが、聖書を勉強していくうちにわたしがキリスト教の考えに惹かれていった。そして教会を撮ることに繋がっていったので、全てのきっかけになった川内さんにはまず出てもらわないと、と思っていました。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

『重力の光 : 祈りの記録篇』©2022 Gravity and Radiance

川内さんの場合は、初めは抱樸のスタッフとして週4日働いていて、その後、教会にも通うようになったそう。

川内

教会ってお互いのことを祈り合う場所というか。きっちり何かを守らなきゃいけないっていうことはなくて、来たら歓迎してもらえるんですよね。その空気感に引いちゃう人もいなくはないけれど、人を歓迎する、認めるっていうところがいいなってわたしは思っているんです。

だから海ちゃんに出会ったときに、自分が他の人からしてもらったように海ちゃんを歓迎したんです。わたしはここでみんなと一緒にいるから元気なんだなってつくづく思いますよ。

教会で行われる礼拝などの配信を担っているデザイナーの森さんは、石原海さんとの思い出をこう語ります。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

森伸二さん

海さんは、いろいろ賞もとってるし偉い人っぽいから、初めは距離を置いてた。僕はデザイナーだからちょっと意識するところがあって(笑)。

石原

だからそれは知志が……(笑)。わたしは森さんに懐いてましたよ。

『重力の光』でも触れられる、洗礼を受ける際に自身の信仰を書き綴る「信仰告白」という儀式。石原監督はそれまで話したことのなかった森さんの信仰告白を聞いて、「森さんに絶対ユダ役をやってほしいと思った」と話します。

僕の場合は、バプテスマ(洗礼)をしたのも、みんなと仲間になりたいという思いが大きかった。これまでは自分の弱さと折り合いをつけようともせずに、ただ苦しいと思っていましたし、こんなに苦しんでいるダメな人間はもういないほうがいいと思っていたんです。クリスチャンになるクラスを受け、石橋牧師や奥田先生と話しても、全然楽にならなくて。こんなにみんなに時間を使ってもらっているのに……と思っていました。

でも、奥田先生が「ダメじゃなかったら教会に来ないよ。完璧な人間だったら教会なんていらない」という話をされていて。「辛いものを抱えたまま生きていくしかない。人間ってそういうものだよね。もともと人間は罪があって当たり前なんだから」と聞いて、すっと腹に落ちたんです。

それで自分の弱いところを認めた瞬間に楽になった。今までダメだと思っていた部分を十字架として背負って、他者に対しての思いを繋げていくということがクリスチャンになるということなんだと思います。人間って自分ひとりで自分のことを考えてもわからないじゃないですか。自分を理解するための鏡となってくれるところが教会じゃないかと思っています。

そもそも信仰を綴るとはどういうことなのか。この問いかけに、川内さんが「わたしは過去にこういうことがありました。辛い時期もあったけどイエス様と出会って、これからきっと生きていける、というようなことを書くんだよね」と説明してくれました。

川内

映画の中でインタビューパートがあるのですが、そこで語っている内容も、イエス様と出会って信仰告白をしたことで、人にも話せるようになりました。

わたしは22歳で病気になり、20年くらいはずっと大変で。人には「わたしは元気なんだ」って見せたかったから、病気のことは全部隠していました。でも、教会に来てから人に言ってもいいのかなって。今でも病気はあるんだけど、抱樸と教会を通じて人と出会って生きていくなかで、なぜか元気になってきたんですよ。教会以外の友達には病気のことをまだ話していないんですよね。わたしの場合は、この場所で人と交わったりすることで元気になれるんです。

「撮影は初めてだったから緊張した」と話すのは、福ちゃん。東八幡キリスト教会の石橋牧師の長男で、4歳から教会に通っています。物心ついたときから教会と共に生きている福ちゃんにとって、ここは家のような場所だといいます。

石橋

本当の自分の家と教会、二つ家があるみたいだと思っています。僕は喋るのが苦手だけど、みんなが楽しそうに話しているのを見たり聞いたりしているのが好きです。教会にはいろんな人たちが来て明るい感じ。僕もいつでもここにいられる感じがします。

石原

確かに教会って重いけど明るいって感じがする。自分も人も弱さを出せる場所だから、いろんなことが起きるし、いろんな話も聞くから、深いし重いんだけど明るい、みたいな。いろんな話を聞いても落ち込みすぎない謎の明るさがあるなと思います。

何気なく生活していたらお互いに出会うことのない人々がこの場所には集い、なんの隔たりもなく気さくに言葉を交わします。

菊ちゃん(イエス・キリスト役を演じた菊川清志)が、役のためにヅラをかぶろうとしたんだよね。そしたらおばちゃんみたいになって(笑)。それで坊主のイエス様になったのが印象的でした。菊ちゃんは元極道だし、できれば距離を置こうって思っていました。でも映画の撮影があって同じ場所にいるとそれなりに仲良くなりましたね。

女性の人権への提言や、国内政治やロシアによるウクライナ侵攻への批判。聖書を通して各々の意見を交換する時間

礼拝堂が少し賑やかになってきました。祈祷会が始まる時間です。石橋牧師の指揮により、伝道の書7章15〜29節の口語訳、新改訳、聖書協会共同訳の3種を読み、参加者が自身の解釈をそれぞれ述べていきます。

「女性に関する記述に偏りがあるのではないか?」といった意見や、国内政治の現状、ロシアによるウクラナイナ侵攻などの社会情勢と重ね合わせた考察を含めた、様々な声が真摯に飛び交います。

それを肯定するでも否定するでもなく、ただただ一人ひとりが感じたこと、考えたことを発表する場なのでしょう。奥田牧師が「みんなが好きなことを言うんだけど、星座のように繋がって何かが浮かび上がることがある」と祈祷会を表したように、聖書という教えから何かを創造するような時間が流れていました。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

東八幡キリスト教会の祈祷会は、聖書の解釈を一つに絞り込むのではなく、一人ひとりの解釈を交換し、尊重する空間のように思えました。祈祷会については、「石原海×奥田知志対談 善と悪の両方を掴みながら、その狭間で生き続ける」もあわせてご覧ください。

「わたしが目指してきたことは、居場所かな。キリスト教信者になる場所というよりは、まずは居場所」

祈祷会が終わったあと、さらに映画の出演者に話を聞きました。集まってくれたのは、奥田牧師の妻で、劇中では弟子・民衆役を演じた奥田伴子さん、その母で天使役の藤田信子さん、弟子・民衆・天使役の村上かんなさん、イエス・キリスト役の“菊ちゃん”こと菊川清志さんです。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

左から、奥田伴子さん、菊川清志さん、藤田信子さん

伴子

タイトルの『重力の光』ってどういう意味なんだろうってずっと思ってたんだけど、誰でも重力に引っ張られていくことってあるよねって。でも、一点の光があれば生きていけるっていうことをテーマにしたのがすごいと思いました。東八幡キリスト教会をそういうふうに見てくれたこともすごいし、わたし自身のなかにもそういう思いがある。ことあるごとに『重力の光』という言葉に励まされます。

「映画ができて、海ちゃんとかみんなの目がキラキラしてた」と話すかんなさん。初めはやりとげられるか心配だったけれど、撮影を完遂したことが嬉しかったといいます。劇中では、天使姿でタバコを吸うシーンが印象的でした。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

『重力の光 : 祈りの記録篇』©2022 Gravity and Radiance

石原

タバコを吸うシーンはもともとなかったのですが、かんなが天使姿でタバコを吸いたいと言ってくれて急遽あのシーンをつくりました。上映してから「タバコ吸ってる女の子すごく良かった」っていう感想ももらって。

かんな

そうやろ? 撮影するときはばりばり緊張しとったよ。一生懸命セリフ覚えて。でも、自分みたいな人を勇気づけたいって思った。菊ちゃんを叩くシーンがあるけど、痛そうやなって思ってた。大丈夫かなって。

1年前の撮影をそれぞれに振り返るみなさん。

菊川

撮影は暑い時期でね。みんな汗びっしょりになりながら撮影した。海は俺から怒られて涙を流してたよ。当時、海は聖書に馴染みがなかったから、「聖書とここが違う」と文句を言って、それで直した箇所も多々ある。そうしてつくり上げた映画。

いちばん俺がみんなに見てもらいたいのは、なぜイエスが十字架にかかったのかということ。そしてなぜ3日後に蘇ってきたのか。そこにはいろいろな意味が込められている。

海が涙を流しながらつくり上げた力作で、命を大切にしようということが詰まってます。芯から感動してほしいから、映画を観る前に、一度聖書を読んでもらえたらと思う。俺はこの間コロナにかかって寝込んでたんだけど、世間の冷たさがよくわかったんだよ。それで命の大切さをより一層噛み締めた。

かんな

どの口が言うとんのよ。

伴子

わたしたちがごはん届けてたのを言わずに、まず世間の冷たさって! 異論があるね(笑)。

「とにかく聖書を読んでほしい」と繰り返す菊川さん。石原監督とのやりとりを思い出しながら言葉を続ける。

菊川

海の最初の方針としては東八幡キリスト教会に通う人の生き様を撮りたいということだったんだよ。でも、聖書を通してやれと俺が言った。

伴子

菊ちゃん、盛ったらダメ!(笑) 最初から聖書の話だったけど、菊ちゃんは最初に海ちゃんが出してきた台本に対して、ここは違うよっていちいちいちゃもんつけてたんだよね。

伴子さんやかんなさんがツッコミを入れ、その場は笑いに包まれていました

菊川

海は孫のような存在だから、お前が撮るんやったらなんでも協力するぞって言ったんだよ。その代わり、俺がイエスなって冗談で言ったら、それが本当になって。俺は元極道で人の生き血を吸って来た人間だけど、イエスは人を救うために命を落とした人間だから真逆なんです。

奥田知志も自分のお金を使って弁当をつくって小倉駅の前で配っていた。2003年頃、俺は8年の刑期を終えてやっと北九州に帰ってきたところで、足は洗っていたけど根は極道。そんな時に俺とはまったく逆のことをやっている奥田知志に惚れてこの教会に来たんだ。当時、北九州には500人以上のホームレスがいて……。

伴子

マックス457人とかだから、500人以上はちょっと盛ってるかな(笑)。

菊川

伴子さんは狭い炊事場で大きな鍋を2つも3つもかけて、何百人の野宿者の弁当をつくって。

伴子

それは本当。

菊川さん曰く、奥田夫妻はみんなのお父さんとお母さん。伴子さんの親でもあり、祈祷会の際に取材陣が聖書に興味を示す様子を嬉しそうに眺めていた藤田信子さん夫妻は、みんなにとってのおじいさん、おばあさんだそう。母と慕われる伴子さんにとって教会はどんな場所なのでしょうか。

伴子

わたしが目指してきたことは、居場所かな。キリスト教信者になる場所というよりは、まずは居場所。わたしは出会った人たちみんながキリスト教徒になればいいとは思っていなくて。いろんな人が教会や併設しているシェルターで過ごしながら、1日だったり半年だったり人によって長さは違うけど元気に息を吹き返すことが大事。

そのうえで、その人にとって神様という存在を信じることが生きる力になるのならば、ここに教会があることに意味があると思っています。みんながみんな困窮者ではないし、それぞれにバックグラウンドがあるんだけど、お互いに共感する何かを持って過ごしながら、励まし支え合う場所です。

東八幡キリスト教会に集う、まったく違う一人ひとりの人々。それぞれの言葉から見えてくるのは、ここがただ「いる」ことを許される場所だということ。誰もが何かしらの重力のもとに生きていて、時には一人ではとても耐えられないほどの重力が、まるで襲いかかるようにのしかかることがあります。インタビューで奥田知志さんが話していたように、「人間は相対的な存在」であり、何かに依存しなければ生きていけません。そして自分自身に困難がふりかかっているときほど、何が起きているのかひとりで向き合い、対応していくのは容易ではありません。

だからこそ、森さんが言うように「人が鏡になる」、川内さんが言うように「お互いに祈り合う」、伴子さんが言うように「人が励まし支え合う」、インタビューで知志さんが言うように「何かを解決しなくても一緒にいる」……そんな関係が築ける居場所が必要なのではないでしょうか。水圧にも波にも暗闇にも背を向けず、重力を背負いながらも深く差し込む水中光芒のような光。そんな光が、東八幡キリスト教会にはいくつも灯っていました。

『重力の光』の出演者に会いに北九州へ。ここは元気に息を吹き返す居場所

『重力の光 : 祈りの記録篇』©2022 Gravity and Radiance

石原海

1993年東京都生まれ、北九州在住。アーティスト/映画監督。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとドキュメンタリーを交差しながら作品制作をしている。

個展『重力の光』(資生堂ギャラリー/2021)『頭のいかれた悪魔の泥沼』(TAV Gallery/2017)主な上映に『重力の光』第14回恵比寿映像祭(東京都写真美術館/2022)初長編映画『ガーデンアパート』短編映画『忘却の先駆者』ロッテルダム国際映画祭(2019)主な助成に英国テレビBBC/BFI『狂気の管理人』監督(2019)リクルート財団(2018~2020)ポーラ美術振興財団​​(2023) 主な受賞に現代芸術振興財団CAF賞 岩渕貞哉賞受賞(2016)

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奥田知志

NPO法人抱樸理事長/東八幡キリスト教会牧師
1990年、東八幡キリスト教会牧師として赴任。同時に、学生時代から始めた「ホームレス支援」に北九州でも参加。事務局長等を経て、北九州ホームレス支援機構(現 抱樸)の理事長に就任。これまでに3700人(2022年3月現在)以上のホームレスの人々の自立を支援。その他、共生地域創造財団代表理事、全国居住支援法人協議会共同代表、国の審議会等の役職も歴任。第19回糸賀一雄記念賞受賞など多数の表彰を受ける。NHKのドキュメンタリー番組「プロフェッショナル仕事の流儀」にも2度取り上げられ、著作も多数と広範囲に活動を広げている。

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東八幡キリスト教会
NPO法人抱樸

菊川清志……役:イエス/森伸二……役:弟子(ユダ)、民衆/下別府為治……役:弟子、民衆、天使/村上かんな……役:弟子、民衆、天使/奥田伴子……NPO法人抱樸ボランティア部部長/東八幡キリスト教会・役:弟子、民衆/川内雅代……役:弟子、民衆/藤田信子……役:天使/石橋福音……役:天使

『重力の光 : 祈りの記録篇』
(2022年/日本/72 分/カラー/16:9/ステレオ)

監督:石原海/撮影監督:八木咲/撮影補助:杉野晃一/美術:中村哲太郎、前田巴那子/音楽:荒井優作/録音・整音:川上拓也/照明:島村佳孝、伊地知輝/メイク:宇良あやの、竹中優蘭/衣装:塚野達大/翻訳:Daniel Gonzalez/題字:石原邦子/コーディネート:谷瀬未紀(pikaluck) /制作:柿本絹、木村瑞生/プロデューサー:AKIRA OKUDA/出演:菊川清志、森伸二、⻄原宣幸、村上かんな、下別府為治、奥田伴子、川内雅代、藤田信子、石橋福音、奥田知志/撮影協力:枝光本町商店街アイアンシアター、東八幡キリスト教会、NPO法人抱樸、株式会社FRAGEN、桑島寿彦、つかのみき
配給:「重力の光」制作運営委員会 ©2022 Gravity and Radiance

劇場情報:
神奈川・横浜シネマリン
2022月12月17(土) 〜 2022年12月31日(土)

沖縄・桜坂劇場
2022年12月24日 (土) 〜 2023年1月6日 (金)

山口・山口情報芸術センターYCAM
2023年1月13日(金)〜2023年1月15日(日)

公式サイト
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