💐このページをシェア

連載

シネマヴェーラ渋谷(東京・渋谷):連載「あの映画館に行こう」

フィルム独特の粒子感やモノクロの陰影の美しさを味わって

映画館でスクリーンを見つめるとき、わたしたちは、他者の背景にある日々やその連なりを、社会の一面を、複雑さや曖昧さを、ひいては自分自身を見つめているのかもしれません。

この連載では、me and youがおすすめしたい映画館をご紹介。独立系のミニシアターを中心に、me and you little magazineで記事を制作した作品やカルチャートピックスページでおすすめした作品を上映している映画館から、つくる人をバックアップする映画館、地域に根ざした場づくりをおこなっている映画館、その場ならではの鑑賞体験ができる映画館まで、さまざまな映画館で働く人たちの声を集めます。

今回ご紹介するのは、2006年に開館したシネマヴェーラ渋谷。旧作を中心に、特集形式で、海外映画と日本映画の両方を上映しています。支配人の内藤由美子さんに言葉を寄せていただきました。記事の最後には、「あの映画館へ行こう」のGoogle Mapも埋め込んでいるので、お散歩や旅のおともにぜひご活用くださいね。

サイレント映画からスタジオ黄金期の作品、独立系の作品まで

シネマヴェーラ・内藤由美子さん(支配人)

1.どんなことを大切にしている映画館ですか?

コンクリート打ちっぱなしのビルでクールなイメージです。劇場内はステージが広く、最前列でも観やすく設計されています。

基本的に旧作を上映する映画館で、日本映画はフィルム上映がほとんどです。35mm、16mmなど今では観る機会も少なくなったフィルム独特の粒子感を楽しんでいただけます。またモノクロ作品が多く、陰影の美しさを味わってほしいと思っています。

2.上映作品を選ぶとき、プログラムをつくるときのこだわりは?

洋画と日本映画の両方を、監督、俳優、映画本の刊行記念など特集形式で上映しています。サイレント映画から、映画会社がハリウッドで大規模な作品を量産したスタジオ黄金期の作品、独立系で小規模のいわゆる“B級”作品まで、作品が素晴らしければ何でも上映するというのが編成の基本です。洋画は字幕も新たに作成しており、日本未公開作も少なくありません。有名作からレア作まで、映画にはまる人を増やすべく編成にいそしんでいます。

3.「わたしとあなた」というテーマで、これまでに上映した作品やこれから上映予定の作品からおすすめしたい映画を1本教えてください。

『イタリア旅行』

イタリア映画の巨匠、ロベルト・ロッセリーニと主演女優イングリッド・バーグマンのコンビによるロードムービー。冷え切った仲の英国人夫婦がイタリアを訪ねるが、旅によって互いへの不満が高まっていく。「一緒にいても孤独な二人」をロッセリーニが見事な即興演出で描く。

フランスの映画批評誌カイエ・デュ・シネマが選ぶ映画史上のベストテン入りし、本作で「男と女と車があれば映画が作れる」ことを学んだゴダールが『勝手にしやがれ』を撮ったことでも有名。

ロッセリーニとバーグマンが不倫関係に陥ったことは全米を揺るがすスキャンダルになったが、結婚した後も意思の疎通に悩んだという二人の関係が『イタリア旅行』に反映されているのかもしれない。映画の中の夫婦(「わたしとあなた」)と、ロッセリーニとバーグマン夫妻(「わたしとあなた)が二重写しになるような不思議な感覚にとらわれる。

📽️映画『イタリア旅行』

2025年11月1日(土)〜11月14日(金)
特集「イングリッド・バーグマン 演じることは生きること」内で
シネマヴェーラ渋谷にて上映

脚本:ビタリアーノ・ブランカーティ、ロベルト・ロッセリーニ
監督:ロベルト・ロッセリーニ
出演:イングリッド・バーグマン、ジョージ・サンダース、他

特集ページ

📍映画館情報
シネマヴェーラ渋谷
住所:〒150-0044 東京都渋谷区円山町1‐5 KINOHAUS(キノハウス) 4F
電話番号:03-3461-7703
営業時間・休館日:上映スケジュールに準ずる

Website
X(Twitter)

🚶‍♀️映画館を訪れてみよう
me and youがご紹介したい映画館を地図にまとめました。
シネマヴェーラ渋谷さんのほか、全国の映画館を都度更新していきますので、おでかけのお供にチェックしてみてくださいね。

me and youの「あの映画館に行こう」マップ

特集上映「イングリッド・バーグマン 演じることは生きること」

特集期間:2025年11月1日(土)〜11月14日(金)

Website

Support us

me and you little magazineは、今後も継続してコンテンツをお届けしていくために、読者のみなさまからサポートをいただきながら運営していきます。いただいたお金は、新しい記事をつくるために大切に使ってまいります。雑誌を購入するような感覚で、サポートしていただけたらうれしいです。詳しくはこちら

*「任意の金額」でサポートしていただける方は、遷移先で金額を指定していただくことができます。

あわせて読みたい

newsletter

me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。

me and you shop

me and youが発行している小さな本や、トートバッグやステッカーなどの小物を販売しています。
売上の一部は、パレスチナと能登半島地震の被災地に寄付します。

※寄付先は予告なく変更になる可能性がございますので、ご了承ください。

shopを見る