食後の気持ちを切り替えるために香木(パロサント)を炊く。
14:00 コトバトフクで販売する新作ワンピースの制作。ワンピースの肩紐と前身頃部分の本縫い。
イメージを形にするとき、頭の中と現実にずれができる。頭の中のイメージは掴みどころがなくて綺麗で完璧。こんな詩的で可憐なワンピースが形になればいいのに。手から形作られる途端に、イメージがこぼれ落ちる。綺麗にならない。良さの基準がわからなくなる。
前身頃部分に70年代のアメリカで作られたヴィンテージのパッチワークキルト生地を使用する。キルト生地を粗裁ちし、ボディに仮止めする。色や存在がなんだかぼんやりしていると感じる。新品の布で差し色を配置し、バランスを考える。ヴィンテージの布は擦り切れたり穴が空いたりしているので、一旦全部解いて弱いところは芯地を張って補強し、再度同じ形に作り直す。解く作業中埃がもくもく立ち込める。くしゃみをする。作業机があっという間に埃だらけに。解いたりアイロンをかけたり縫ったりする。作業に夢中になる(私は徹底して細かく作業すること、一枚の服としての完成度を高めることに興味と関心がある)。手元のヴィンテージパッチワークキルトを作った70年代のアメリカの人と交信している気分になる。
骨董屋さんの隅でひっそり売られていたほつれだらけだけど魅力的なキルトの生地が新しい息吹を与えられてSINA SUIENの服に生まれ直す。不思議な縁だといつも思う。
渋谷のシアター・イメージフォーラムで以前観たドキュメンタリー映画『掘る女 縄文人の落とし物』が、手元の作業とオーバーラップして想起された。
この映画は縄文遺跡の発掘調査に携わる女性たちを3年間にわたって記録したドキュメンタリー映画で、映画に登場する発掘に取り憑かれた女性たちの生き生きした表情が印象的な作品だった。日常生活と地続きの発掘作業。作品に登場する女性たちは縄文土器が好きなのはもちろん、“発掘すること”に興味があるのだと思った。発掘というのはほとんどの時間が退屈な穴掘りで、お洋服のリメイクと発掘は似ていると思った。
縄文時代の生活の跡を掘り起こす映画の中の日常と、70年代のアメリカでパッチワークする誰かの日常と、私の絵に描いたような自宅作業の日常は一つの線となって特別な光を放つ。
17:00 肩のストレッチ
あっという間に窓の外が黄昏色に。
19:00ごろ、急に血糖値が下がったのを感じる。少しフラフラする。
あと1時間、作業を頑張る。
20:00 きりの良い所まで作業を進められたので出来たパーツをボディに待針で仮止めして夕ご飯の準備。
夜ご飯はお昼に作ったものを詰めたお弁当と具沢山のお味噌汁。1日賞味期限が切れたお豆腐と薬味たっぷり(この後お腹が痛くなったので、この時期の賞味期限についてはシビアに考えた方が良いかもしれない)。Netflixでアニメ作品の『メダリスト』話を視聴したり(ちょっと泣いて鼻水が垂れた)ボディに仮止めしたパーツを眺めながらご飯休憩。
食後の気持ちを切り替えるために、また香木(パロサント)を炊く。
20:45 夜の作業。
夜ご飯を食べながら考えた軌道修正案に沿ってワンピースのパーツを作り直す。
あっという間に時が過ぎる。
22:30 お風呂を追い焚きして(お湯2日目)バスオイル(エキナセアの香り)を垂らし1時間程入浴。フェイスパックしながらストレッチ。日記のメモ。
撮影前で(6/5にイベントのイメージ写真を撮影予定)作業ばかりして人と会話しない日が続き、話し方を忘れそうになっている私のかなり普通な1日が「同じ日の日記」のおかげで特別な日常になる。