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姉妹でものづくりをするoliveの二人と『九月と七月の姉妹』鑑賞&お茶会レポ

一対一の関係、姉妹や母娘……支配や依存を描く映画を囲んで

10ヶ月違いで生まれた姉妹・セプテンバーとジュライのいびつな絆を映し出す、映画『九月と七月の姉妹』の公開を記念して、姉妹で食と衣のものづくりをする「olive」のさつきさん、ひとみさんと、me and youが一緒に、映画鑑賞会&お茶会をひらきました。

イベントの前半は、2025年9月5日の映画公開に先駆けて作品を上映。後半には、oliveのお二人が手作りした焼き菓子入りの巾着とBrew Tea Co.のアイスティーをお渡しし、さつきさんとひとみさんの姉妹によるミニトークをお聞きいただいた後、参加者の方々同士で映画の感想をおしゃべりしていただきました。この記事では、そんなイベントの様子をお届けします。

一心同体でありながら正反対な姉妹の関係描く、映画『九月と七月の姉妹』

映画『九月と七月の姉妹』は、イギリスの作家デイジー・ジョンソンの同名小説をアリアン・ラベド監督が映画化した作品。

わずか10ヶ月違いで生まれ、幼い頃から一心同体の姉妹でありながら、姉・セプテンバーは我が強く、妹・ジュライは内気で、性格は正反対。15歳の二人は母・シーラと暮らしながら、一つのスマートフォンを共有し、同じ学校に通い、時折、「セプテンバーの指示にジュライが従い、命令どおりにできなければジュライがライフをひとつなくしてしまう」という命令ゲーム“September says”で遊びますが、そこには支配関係が見て取れます。

左から、セプテンバーとジュライ。『九月と七月の姉妹』場面写真より
© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

ある日、姉妹は学校で起きた事件をきっかけに、母とともにアイルランドの海辺近くにある亡き父の実家「セトルハウス」に引っ越すことに。新しい生活のなかで、ただの戯れだったはずの命令ゲームは次第に緊張感を増し、外界と隔絶された家のなかには不穏な空気が漂うようになります。

「セトルハウス」に引っ越した後の姉妹。『九月と七月の姉妹』場面写真より
© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

この作品で描かれているのは、二人きりという関係性のなかにある、二人にしかわからないこと、姉妹や母娘という間柄に滲む毒性、支配や依存、家の閉塞感、曖昧になっていく自他の境界、おしゃれなファッションやインテリア、おとぎ話のような、悪夢のような空気感。さらに、生やしっぱなしの脇毛、羽つきのナプキンをつけた下着、脚の毛を剃ろうとしてカミソリで皮膚を傷つけ流れる血など、隠されがちな女性たちの日常も描かれています。

姉妹と母・シーラ。『九月と七月の姉妹』場面写真より
© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

「誰かに依存されている、していると思ったことは?」「二人だけのルールってある?」映画にまつわる問いからおしゃべり

イベントは代々木上原にあるhako galleryの2階スペースにておこなわれました。作中に本人役として出演しているモリー・ニルソンの楽曲が流れるなか開場。その後、映画の上映がスタートします。

終映後は休憩時間を挟んで、oliveのお二人が手作りした、映画をイメージした焼き菓子入りの巾着をお配りしました。

oliveのさつきさんによる焼き菓子は、映画の舞台であるイギリスの伝統的なお菓子であるショートブレッド。作中にある、セプテンバーの「もう赤い物は食べない」というセリフにちなんで、赤いクランベリーが混ぜ込んであります。

oliveのひとみさんによる巾着の柄は、セプテンバーとジュライが身につけていた洋服や、「セトルハウス」の寝具をイメージした全部で4種類。

当日は、焼き菓子入りの巾着と一緒に、代々木上原にある英国菓子ROSEYのご協力で、イギリス生まれのティーブランド・Brew Tea Co.の水出しアイスティーをお渡ししました。

こちらは、セイロンティーをベースにラズベリーとレモンが香るフレーバーと、グリーンティーをベースにエルダーフラワーとローズが香るフレーバーの2種類。

そんなお茶菓子を手に、oliveのお二人によるミニトークが始まります。

左から、ひとみさん、さつきさん

olive さつき

姉妹でそれぞれの好きなことを活かしたものづくりをしています。
姉のさつきです。お菓子をつくっています。

olive ひとみ

妹のひとみです。衣服を担当しています。

野村由芽

お二人はこの映画を観て、どんな感想を持ちましたか?

olive さつき

私は今日作品を観たのが二度目で、新たな発見がありました。特に後半の見方が変わったと思います。

それから、私たちには支配関係はないけれど、セプテンバーとジュライのように、二人だけの遊びはあったことを思い出しました。子どもの頃に、二人で金魚のキャラクターに取りつかれたようにはまったことがあって。姉妹でそのキャラクターにまつわるオリジナルの歌をつくったりして遊んでいたのを覚えています。

olive ひとみ

二人で金魚のキャラクターにはまっていたのは私にとっても思い出深いです。

映画の感想としては、セプテンバーとジュライの間にも愛情はあったんだろうと思いますし、こうした支配や依存は姉妹だけでなく、パートナーや親子、友達との関係でも当てはまることがあるんじゃないかと感じました。

原作の装丁にあわせ、それぞれ水色とピンクの衣装を着たoliveのお二人。
こちらのお洋服はoliveが活動をスタートした頃にひとみさんがつくったものだそう。

野村由芽

oliveは2020年9月に活動を開始し、今年で5周年だそうですが、姉妹でものづくり活動をはじめたきっかけは何でしたか? また一緒に活動することで、子どもの頃から知っているお互いの関係や見方に新しい気づきがあったり、変化があったりしましたか。

olive さつき

もともとは、私もひとみもそれぞれ好きなことがあったので、それを一緒にみんなに見てもらえるといいなと思って、oliveを始めました。5年前にお互い前職を辞めたこともあり、タイミングも重なりました。

olive ひとみ

最初は二人の遊びのような感覚もありましたが、今は仕事でもあるので、そのあたりが5年間の変化だと思います。

olive さつき

たしかに。二人の関係も、家族であり姉妹であったのが、仕事のパートナーにもなりました。

olive ひとみ

とはいえ、お菓子と衣服という別のジャンルでものづくりをしているので、お互いに干渉はしないんです。ただ、それぞれが『全部一人でやりたい』という思いは共通しているのかな。

野村由芽

oliveの世界観には、生活を自分の手でちゃんと愛しながら彩っていくところや、たとえばクラシックな感覚など、お互いの好きなことがぎゅっと詰まっている魅力があると感じます。そんなお二人から見て、『九月と七月の姉妹』のなかで、美術や衣装、映像的に好きなシーンがあれば教えていただきたいです。

olive さつき

私は「セトルハウス」のキッチンが好きでした。お花があしらわれた壁紙や木の戸棚、シンクの近くに窓があり、その上からレースのカーテンがかかっているのも可愛くて、憧れる雰囲気でした。

olive ひとみ

二人で海に行くときにセプテンバーが着ていたジャンプスーツが好きでした。古着でキルティングのジャンプスーツなど、私も買い集めています。

ミニトークの後には、巾着に同封したタグに書かれた以下のキーワードごとに、5つのグループに分かれておしゃべりしました。

🤍誰かに依存されている、していると思ったことはある?
(家族、パートナー、友達など……)

🤍二人だけのルールってある?

🤍女性の日常のリアルって?

🤍子どもの頃好きだった遊びは?

🤍一対一の関係のむずかしさを感じたことある?

映画好きの方から、原作を読んで今作の公開を楽しみにしていたという方、oliveのお二人のファンの方、普段からme and youのイベントに参加してくださる方まで、さまざまな方々が集まり、映画『九月と七月の姉妹』とこの空間を共有することができたひととき。映画を囲むことで、初めての人同士の間にも親密さが生まれる、楽しみの多いイベントとなりました。

映画『九月と七月の姉妹』予告編。ナレーションは吉澤嘉代子さん。

olive

2020年9月より活動開始。姉妹それぞれの好きなことを活かし、自分たちの考える衣と食に関するものづくりをしている。姉のさつきが食、妹のひとみが衣を担当し、作ったものを発表するイベントを不定期に開催している。

Instagram

『九月と七月の姉妹』

監督・脚本:アリアン・ラベド
出演:ミア・サリア、パスカル・カン、ラキー・タクラー
原作:デイジー・ジョンソン『九月と七月の姉妹』(東京創元社刊)
配給・宣伝:SUNDAE
公開日:2025年9月5日(金)
渋谷ホワイトシネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国ロードショー

© Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation,ZDF/arte 2024

公式サイト
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Instagram

STORY
─セプテンバーはゲームをする。
彼女のいうことはなんでも聞かなくてはいけない。
命令どおりにできなかったら、わたしは命を一つなくしてしまう。─

生まれたのはわずか10か月違い、一心同体のセプテンバーとジュライ。我の強い姉は妹を支配し、内気な妹はそれを受け入れ、互いのほかに誰も必要としないほど強い絆で結ばれている。しかし、二人が通うオックスフォードの学校でのいじめをきっかけに、姉妹はシングルマザーのシーラと共にアイルランドの海辺近くにある亡父の家<セトルハウス>へと引っ越すことになる。新しい生活のなかで、セプテンバーとの関係が不可解なかたちで変化していることに気づきはじめるジュライ。「セプテンバーは言う──」ただの戯れだったはずの命令ゲームは緊張を増していき、外界と隔絶された家の中には不穏な気配が満ちていく……。

映画『九月と七月の姉妹』を観て、おしゃべりするお茶会 by me and you × olive

日時:2025年8月28日(木)19:30〜22:10(開場:19:00)
場所:hako gallery 2F(東京都渋谷区西原3-1-4)
参加費:2,000円
※別途システム利用料がかかります。

https://meandyou.net/news/21699/
※このイベントは終了しています。

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