💐このページをシェア

同じ日の日記

日記:7:19〜22:30の詳細な記録/UFO

建築を学ぶ大学院生として過ごすハロウィンの一日の記録

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年10月は、2022年10月31日(月)の日記を集めました。公募で送ってくださったUFOさんの日記です。

ハロウィンだというのに、私は今日もいつも通りだった。しかしいつも通りに今日を迎えられなかった韓国・ソウルの人々に心を寄せて、私の日常を詳細に綴ります。どうか貴方と貴方の大切な人が、今日も穏やかでありますように。
 
7:19 なんとかして起床。いつも叩き起こされてるのに、どう頑張っても起きられない。日照が足りてないのもあると思うんだよね。土日にお日様を浴びて起きる時は驚くほどすんなりと気持ちよく目覚めるから。昨夜用意しておいた洋服をモゾモゾ着ながら、体をどうにか巡らせようと枕元のマグから麦茶を摂取する。
 
7:30 着替えている間におばあちゃんが「目玉焼きでいい〜?」と聞いてくれるので、それに応えた後、一膳ずつ冷凍している玄米を温める。その間にバッシャバッシャと顔を洗い、日焼け止めを塗って髪を梳かす。おばあちゃんのファッションチェックが今日も入るけど、スカートが長いからokになったようだ。意外と時間がかかる解凍が済み、茶碗に玄米をよそうと、皿削減のためにその上に目玉焼きを乗っける。味噌汁もあっためてようやく朝食のスタートだ。と言っても8時に出たい気持ちなので、そんな悠長にはしてられずにかっこむ。そのあと歯磨きとトイレも済ませたけど、顔がまだ整備されてない。
 
7:50 自室に戻って卓上のiPadでテンションの上がる映画を流しながらメイクをする。気持ち的には『プラダを着た悪魔』の冒頭がピッタリなのだが、生憎どこのサブスクにも配信してない。メイクは日によって盛り具合が違うが、どちらにせよベースメイクは日焼け止めだけなので完了している。眉毛をいい感じにして、涙袋を中心にアイメイクを頑張り、シェーディングとハイライトをする。最近は鼻の真ん中あたりから目尻の下の方まで横一文字に入るチークにハマっているので、淡いリップを代用して入れたら、そのまま本物のリップも塗って完了。これで10分くらい。
 
8:03 コートを羽織ってラップトップとイヤホンを鞄にぶち込んで大きなボトルにお茶を入れたら、いよいよ出発。いつもギリギリ。20分間好きなラジオを聴きながらガシガシ駅まで歩いて、アホみたいな満員列車に揺られたら、また大学まで15分間ガシガシ歩く。ガシガシというのがポイントなのだ、時間がない時に優雅な気持ちに一瞬でもなってしまうと、とてもじゃないが辿り着かない。
 
9:00 やっと大学。教室に入ってコートと荷物を置いたら、トイレへ直行。電車に乗ると緊張でお腹が痛くなってしまうのは困りもの。そのままルーティンになっているTwitterのお洋服プロジェクトである#Recordofclothesをするために、全身鏡でパシャリとやったら、ジャンクフードの自販機前をうろついて食べたい気持ちを誤魔化す。教室に戻ったらラップトップを開いて、授業の資料をチェック。手帳を開いて昨夜の日記を軽く読んだり、今朝あったことを書き留めておく、今月の目標を目に刻むのも忘れずに。今度はスマホを開いて、最近信頼して使っているTickTickというタスク管理アプリで今日のタスクを確認。その頃には可愛いスウェットを着た准教授が登場するので微笑んで待つ。
 
9:20 授業開始。これは建築構法特論という授業で、プレゼンで成績がつけられることと先生のラフさが気に入って、専門ドンピシャではないけど取ってみた。蓋を開けてみれば毎回学生が順繰りにプレゼンにして彼がコメントするだけなので、自分の番以外は暇でしょうがない。ディスカッションで当てられないのを願っていたら、いつの間にか目が閉じてしまっていた。教室は暖かい。椅子がガタガタと引かれていく音で目が覚めて、私もすました顔で身支度をして出る。
 
11:10 研究室に到着。建築専攻の院生である私は、建築学科棟と呼ばれる建築学科・専攻専用の立派な建物に吸収されていき、自分の研究室で席につく。新棟のラウンジの椅子の柔らかさや空気の清浄さは、一人でのタスクをするのに最適の場所だけれど、今日はその場所の快適さを差し置いても会いたい人がいた。お目当ての人はまだ来ておらず、先輩に軽く挨拶を、雑談もして色んな誘いを断りながら、ようやくラップトップを開く。イヤホンもして完全に臨戦体制で先ほどの構法のプレゼンを作っているのに、度々話しかけられる、う〜んやはりラウンジにいればよかったかな。そう思っていたら、お目当ての先輩が来たので歌った。バースデイソングを。この研究室の先輩で一番の仲良しさんなのだが、ハロウィンが誕生日なのだ。散々歌って、各々忙しいのでやはり作業に戻る。
 
13:05 両手を上げて喜びたくなった。ここ2週間弱、調査・作成していたプレゼンがようやく終わったのだ! この構法のプレゼンは「木造建築と◯◯」というお題で30分のプレゼンを作らねばならないものだった。私は修復・保存・アーカイブなどに興味があり研究分野としているので、そこと被らせようと「木造建築遺産の保存論」をテーマにした。良い参考文献も先行研究もあったため、Notionで要旨はまとめていたのだけれど、プレゼン作成媒体に悩んでいた。PowerPointは凝りさえすれば色々なことができるのはわかっていたけれど、UIがあまり好きじゃなくて50ページのプレゼン資料を作成するのに使いたくなかった。Apple純正のKeynoteは、シンプルで好きだけれど単純なデザインしか作れない感じがピンときていなかった。そこで今回はFigmaを起用してみることにしたのだ。最初はレイヤー感が掴みにくかったが、慣れてしまえばUI/UXも気に入り、十分に分かりやすくデザイン性の高いプレゼン資料が作れたのであった。嬉しい! とっても嬉しい!!
 
13:10 私の嬉しさを感じ取った先輩たちが「ご飯いこっか」と言ったので、ちょうどキリだと隣の棟のCafeに向かった。寒い中でOLごっこをしながらランチを買うのが最近のマイブームだ。今日のランチはビビンバ丼/カレー/パスタの選択肢らしい。迷わずビビンバ丼と、寒いのでホットの紅茶もゲットしていそいそと研究室に戻る。Takeout用の容器を開けたら、ビビンバ丼なのにブロッコリーが入っていて、学生に野菜を食べさせたいという強い意志を感じ、笑えた。
 
15:15 気づいたら寝てた食べて、容器を片付けて、トイレに行って、ラップトップを開きながらESを前にウンウン言ってたのは覚えている。そこから記憶がない。2時間弱寝ていたらしい。これはナルコレプシーという突発的に気絶するように寝てしまう持病によるもので、仕方ないけどやりたいことがあったからちょっと悲しい。
 
15:30 パタパタと身支度をしてふたつめの授業へ向かう。ユニバーサルデザイン特論という授業なのだが、デザインの授業かと思いきやバリアフリー法制度を主旨とした授業なのだ。教授の関西弁によるオープニングトークからの鮮やかな授業内容への誘導が目当てでとり始めたが、内容も知るほど興味深い。私は中高で社会系の科目をあまり受けられず、暗記自体も苦手なため、三権分立のことを子どもに説明できないくらいには法学・政治に疎い。この教授は、法律と条例の違いを説明できずピンときてない私の顔を見て、憲法・法律・条例などの関係と決定する人たちの説明までしてくれた。申し訳ない。今日も面白いトークを聴きつつ、愛用の手帳兼ノートに書き連ねていく。
 
17:10 授業を終えて放課後、自由の時間だ。かなりの坂道を登って駅に戻らねばならないので、気合を入れようとAirPods Proを耳に入れてお気に入りのラジオを流す。ジングルに合わせて足を上げながら、息を切らしていく。
 
17:25 さて、今日はたまたま夕食が自由選択の日であった。というのも、いつも家庭を切り盛りし、キッチンの長として君臨する祖母が5回目のコロナワクチンを打つため、夕食は必ず外で各自食べて来いとのお達しだったのだ。各々自炊するんじゃダメなのかなぁ、と提案したが、キッチンを汚されると掃除するために動きたくなるから駄目らしい。「ならば仕方ない、一人呑みだ!」と、いつの間にか夕食のお達しを一人呑みの時間に解釈して、街を彷徨う。
 
17:30 ちょうど、先輩にお薦めされたカレーとエスニックとビールの店があったので、恐る恐る入ってみる。白漆喰で仕上げられた半円状の柔らかい地下では、なんかしらの香辛料が香っていて、癖の強いけど目尻の優しい店主が案内してくれた。とりあえず今日のクラフトビールを頼んで、フードメニューをじっくりと眺める。私はとにかく食が好きで、食べることそのものも、食に関する記述や写真を見ることも、人が食べるのを見ることも、メニューやレシピを店で眺めるのも大好きだ。初めて来た店だし、これは気合を入れなきゃ。10種類くらいの興味深いカレーたちがメインとして並ぶけど、2軒目のご飯が入らなくなると嫌だから今度ランチで来ようと思っていると、パクチー鶏揚げなんてものが。ガツンとしてそうでIPAに合うなと即座に決めて、揚がるまでのつなぎとしていぶりがっこも頼む。いぶりがっこが自家製で、しっかり燻されているのを感じられる香りで美味しい、これは酒に合うぞと、グラスに注がれたビールが進む。常連客らしい女性が六本木でのモテと渋谷でのモテの違いについて店主に語ってるのを聞きつつビールを飲んでいるとパクチーが来る。唐揚げ系かと思ったらフライドチキンに近い感じで、チリソースとパクチーがこれでもかとかかっている。薬味大好き人間としてありがたくいただくが、これはパクチーがなくても美味しいくらい揚がり方が最高であった。ビールと帳尻を合わせ、ちょっと疎外感がつらいなと店を出る。
 
18:30 なんとなく知ってる場所で落ち着きたくて行きつけの居酒屋(元はバーらしい)に行くと、いつものカウンターに案内された。とりあえず鍛高譚(しそ焼酎)をロックで頼み、壁に映されている知らない映画を観ながらのんびりする。久しぶりに来たからかちょっとメニューが変わっていて「本日のなめろう」という大好きなものがなくなっていた。店員さんにもないか確認してから、しょんぼりしてマグロとアボカドのタルタルにした。お通しの牛頰肉の煮込みをつまみながら、紫蘇の香りに身を傾けていたら、お隣さんとカウンター向こうの店主が話しかけてきた。前髪だけ金髪のジョン・レノンみたいな男がいるなぁとは思ってたけど、理系大学生のファッションとか、院進の価値とか、建築業界の今とか、興味深い話をたくさんした。途中できたタルタルはとても美味しくて、ついにこにこしてしまった。鍛高譚が切れて、今度は三岳をお湯割りで頼む、入り口が開いてて少し寒い。焼酎を2回連続で頼んだら、「女の子なのに珍しいね、お酒強いの?」と聞き慣れたワードを言われてそろそろ帰る算段をする。ただの夕食の割には時間も経った。彼が店主と酷いことを話し始めたし、私が人間から「女の子」として扱われ始めたのを感じたので、お会計を。店を出よう!
 
19:30 なんとなく宙ぶらりんになったような気がして、街をうろつく。暗い空に覆われると、ぽろぽろと涙が出てくる。10分くらい過食衝動を抑えながら店の合間を練り歩くと帰りたくなる。

お母さんからのメールも溜まっているしと駅に向く。帰路に着く時ってどうしてこんなに虚しいんだろう。
 
20:30 おうちに着いたらママが待ってた。どこのお店にも行く気にならなかったらしくて、デパ地下ご飯を広げている。私もまだお腹が空いている気がして、中華屋さんのイカときゅうりの葱塩和えをつまみ食いする。デパ地下のご飯ってこんなに楽しいのかしらね、デパ地下ご飯を山ほど買って家でパーティしたい。したいことが山程ある。まだ死ねないな。
 
22:30 お風呂に入って、珍しく化粧水を塗る。薬を飲んで、ベッドに身を横たえた。早めに寝て、それでは来る明日に備えましょう。

UFO

精神疾患と発達障害を抱えながら建築を学ぶ大学院生。毎日違うコーディネートをし、文化を摂取し、日記を書く毎日。私の分厚い手帳に感謝を。

Twitter

newsletter

me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。

support us

me and youは、共鳴を寄せてくださるみなさまからのサポートをとりいれた形で運営し、その一部は寄付にあてることを検討中です。社会と関わりながら、場所を続けていくことをめざします。 coming soon!