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偶然を招き入れる/小さな不安を打ち消し、なにかしら前へ前へ

me and youのニュースレター「message in a bottle」vol.78

「me and youからのmessage in a bottle」は、個人と個人の対話を出発点に遠くの誰かにまで想像や語りを広げる活動を行なっていくme and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていることなどをみなさまと共有していくお便りです。

2025年3月22日に発行したvol.78では、せわしなくとも偶然を招き入れる余地を残すこと、不安に感じる状態が行動へと導いている奇妙な矛盾について日記文通でお届け。「me and you’s eye」では、『夏にあたしたちが食べるもの』、幡ヶ谷のFOREST LIMITで観たKate NVを紹介しました。

💌日記文通 – diary and letter –

me and you のふたりの日記と、お互いの日記から考えたことや感じたことにお手紙をそっとそえた「日記文通」のこころみです。わかりやすい言葉を少し脇に置いておいて、誰に見せるでもない自分のためだけの言葉をまず書いてみること。その言葉を親密な場所ですこしだけオープンにすること。朧げな自分の思考の輪郭を朧げなまま認識し、それを共有することで、個人が個人のままでいながら誰かと生きる未知の豊かさに迷いながら辿り着けるのではないか? という実験の記録です🚶

📗2025.3.8- 野村由芽:偶然を招き入れる

有楽町にさしかかり、高層ビルの窓拭きをしている人がいて、見惚れる。多くの人はそのまま賑やかに通り過ぎる土曜日だけれど、わたしが窓拭きの人、と思う前に、空中にカメラを向けている人がいて、あの人もたぶん、窓拭きの人を眺めていた人だろう。窓拭き選手権というのがあるんじゃなかったかなと調べると、日本ガラスクリーニング選手権大会というのが正式名称らしく、高層ビルの窓を拭くことに重きが置かれているわけではなく、窓を拭く速さときれいさを地上で競うみたいだった。わたしは蜘蛛みたいにロープを頼りに足を上手に使って窓を拭く、空中で窓を拭いている人の姿をぼうっと眺めるのが無性に好きだ。こういう景色は、おばあちゃんと見たいんだよなと思って動画を送る。「見惚れてしまう」とLINEが返ってきて、言葉遣いがおんなじじゃん、とぐらつく。同じであることにみるみる満ちていく胸のなかで、89歳の祖母にいま流れている時間と、38歳のわたしに流れている時間の速度は同じなのだろうか? と考えれば怖くなる。交換したいことが山ほどあることに焦る。

📕2025.3.21- 竹中万季:小さな不安を打ち消し、なにかしら前へ前へ

こんなふうに生きていくことの美しさを感じたと思いきや、夜になって冷え込んでくると不安が立ち込めていった。渋谷の街を歩きながら、日々の途方もなさにやられて泣き出しそうになってしまう。悲しみに大きな理由なんかなくて、いつも大体、ごちゃまぜになってやってくる。そのなかには個人的なものもあれば、たとえばイスラエルによる攻撃が激化していることなども入り混じっている。悲しみを背負った誰かと今すぐ話したいけれど、そういうときは大抵誰とも話せない。

毎年、3月はだいたいそうなのだ。過去の日記を読み返してみたら、9年前でさえ「最近は自分のいやなところばかりが浮かび上がってきちゃって悲しい」と書いていた。ほかの季節もこういったことはよくあることだけれど、気候がその感覚をより強めているように思う。4月頭に誕生日という節目が差し迫っていることも影響しているのかもしれない。

🐬me and you’s eye

  • クオンから刊行されている「韓国文学ショートショート きむ ふなセレクション」より、『夏にあたしたちが食べるもの』(著:ソン・ジヒョン、訳:金子博昭)
  • 幡ヶ谷のFOREST LIMITに聴きに行ったロシアのアーティストKate NV
  • 📮me and youの郵便箱

    「日記文通 – diary and letter – 」の感想や、「me and you の『アイスクリームが溶けても』」で取り上げたらおもしろいのでは?というトピック、そのほかme and youに伝えたいことなど、郵便箱にていつでも受け付けています。いただいたメッセージのなかからいくつかこちらのコーナーで返信をしていきますので、お気軽にお便りいただけたらうれしいです💐

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    me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。

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    売上の一部は、パレスチナと能登半島地震の被災地に寄付します。

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