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同じ日の日記

ぼやけてきた1日の始まりと終わり/小原晩

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を書き直す真夏の1日

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2024年8月は、8月19日(月)の日記を集めました。2022年の自費出版『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』が話題となり、2024年11月に商業出版で増補版を発表した、作家の小原晩さんの日記です。

夏は暑すぎて夕方頃に起きるのだけれど、それがどんどんと後ろ倒しになって夜の8時に目が覚めた。
1日の始まりと終わりがどんどんとぼやけてきた今日この頃である。
1日というのは自分が起きたらはじまりで自分が眠れば終わる、というのはみんなそうだろうけど、街も会社もインターネットも朝は目覚めて昼間は生活をして夜は眠るための仕組みになっているから、起きた瞬間、街から何から終わりの雰囲気で満ちているような気がしないでもないので、多少さびしい。
そんなことをいうのであれば、早起きしてはどうかと思うこともあるけれど、夏の昼間は過酷だし汗も気力も搾り取られるような感じがあってどんどん元気がなくなるから極力眠っていたい。ほんとうは夏ごとスキップしたい。
しかし、ものは考えようと思いなおす。夜の8時に起きたのだから、朝の8時に起きたと考えればいいのではないのか! 外は真っ暗だけど。
だんだんと午前中に起きれたときの気持ちになってくる。爽快である。さて今日はなにをしよう。仕事をしよう。
自転車を走らせ新宿まで行く。西新宿の喫茶店ピースに入って、アイスコーヒーをのむ。

2022年に自費出版した『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』が商業出版されるにあたってエッセイを書き足さねばならないので、そういう作業を日々やっている。実際にはもう第一稿を出した後であるので、これ以上大幅な書き直しはしないでほしいと言われているのだが、なんだか、このままではいけないような気がしているので、大幅に書き直している。編集さんには申し訳ないと思っている。しかしこうするほかないのである。許されたい。アイスコーヒーを細くて白いストローからつうつう吸いながら、イヤホンから音楽を聞いていたら、閃いたものがあった。
ピースに閉店時間がやってきたので、次の喫茶店へ移動する。
歩いているうちに腹が減ったような気がして、焼肉屋に入る。ネギタン塩とロース、烏龍茶と白飯を注文し、30分ほどで平らげて、すぐに出る。

珈琲貴族エジンバラに入ろうとして、かなり待つようだったので、諦めて自転車を走らせ、下北沢のガストへ。ソフトクリームとドリンクバーを注文し、先ほど閃いたものをかたちにしていく。さらさらと書き終わる。さらさらと言っていたわりにはもう深夜4時を過ぎている。自転車を走らせ、家まで帰る。

小原晩

1996年、東京生まれ。作家。
2022年、自費出版にて『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を刊行。2023年9月に『これが生活なのかしらん』(大和書房)を刊行。2024年11月中旬に商業出版にて『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』(実業之日本社)を刊行。

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『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』

著者:小原晩
発行:実業之日本社
発売日:2024年11月14日(木)
価格:1,760円(税込)

『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』│実業之日本社

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