夢の中で:呼吸をするたび耳の奥の方でごそごそと何かが気持ちわるく蠢いている。知らない街の知らない部屋の中でわたしは仰向けになり、特にもどかしい左耳を下にするようにゆっくりと体勢を変えた。何も変わらない。今度は机の上に置かれていた、だらしなく栓の空いた鯨の密造酒をティースプーン1杯、耳に垂らした。三呼吸ほどして耳に手を添えると透明の液体がとろとろと出てきて、眺めていると密造酒は蒸発し、きれいな結晶が現れた。光に当たるとうつくしい薄紫のその子たちを小さなガラスの瓶に入れ、横にゆっくりと振る。ぶつかり合いながら澄んだ音を出す結晶とわたしは涙目に遊んでいた。
昼:ここ数日、世界と自分にひどく落ち込んで暗く染まりかけていたものだから、きれいでヘンテコな景色に出会えて嬉しい。夢はへんてこが普通の顔していて楽しいな。友人が誕生日祝いに贈ってくれたすみれのリキュールをティースプーン1杯、お気に入りのグラスに垂らし、たっぷりの水で溶く。夢で出会った結晶と同じ色にしたあと、少しずつからだに流し入れた。