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同じ日の日記

主に八戸にいた/能町みね子

青森にプチ移住。トラベラーズノートに郵便局の風景印を押しながら、街を歩く

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年8月は、2022年8月15日(月)の日記を集めました。以前から好きだった青森へのプチ移住をはじめ、東京との2拠点生活を送っている能町みね子さんの日記です。

夢を見た、ストーリー展開は失念してるけど、小町が途中から少年のような少女になっていた。ピンクのアイシャドウをしていた。私はこの小町を抱っこするとなるとお姫様抱っこになっちゃうな、できるかな? と心配していた。
起き、小町のトイレ掃除、おしっこが少し。体重を測るが57.8kg、まるで痩せていない。小町のベチョベチョを買うのが間に合わず今日は品切れで申し訳ない、カリカリだけ食べてくれ。私は小山田煎餅のじゅねを食べ、野菜ジュースを飲んだくらいで今日は多少お化粧してでかけないとならない。トラマンドの赤紫のTシャツにSUKUのぶちぶちのパンツ、ワインレッドのマスクで出るも、エレベーターでその姿を鏡で見て、派手すぎるのでは? と思い、わざわざ折り返し白地のTシャツに着替える。小町がニャーニャー引き留めてきて、帰りが夜中になるので申し訳なく、小さな音でテレビつけておいてあげる。市のテレビのおくやみが流れている、家を出る。

自転車に乗り駅前に止め、ラビナでりんごのパティシエパイのチョコを2袋、ヴィドでサラダとチキンのピザみたいなパンを買い、青森行きに乗ろうとしたらなんと先日の大雨で浪岡〜新青森間が運休していて、新幹線に行き着けない。あわててタクシー乗り場に行き、新青森までタクシーで乗り付ける。十分に間に合った。駅はいつもより混んでいて、1階のデリカむつでにんにくコロッケをつい買ってしまう。そして新幹線に乗る。車内でパンを食べてから、風景印を送る友達に向けてハガキを書こうと思っていたのに、なんとペンを何も持っていない。仕方ないのでスマホを見ながら八戸に着く。
先日トラベラーズノートを買い、これを改めて風景印帳にしようと思っていたので、まず八戸駅前郵便局に行き、自分のノートに押してもらうと同時に、その場でハガキを書いて、わっさん、むぎさん、ゆみおの3人に風景印つきのハガキを出す。八戸駅前の風景印はイカの形をしていて面白いのだった。
バスに乗り、荒町というところで降りてまた八戸荒町郵便局で自分のノートに風景印をもらう。えんぶりの帽子の形をしていてここもおもしろい。そこから歩いて八戸ブックセンターへ。イベントは17時からだけど、早めに来てここのカンヅメブースを借りて、八戸ブックセンターから頼まれた原稿を書きたかったのだ。エアコンもつけてしっかり仕事体制にして、執筆に取りかかる、も、今日とても眠くて集中力がない、と気づく。
集中力がいまいちなので、しばらくして昼ご飯兼散歩ということで外に出る。中心街から南側に入って行き、ゴールデン街のようにぎゅうぎゅうの飲み屋街をぶらつく。昼なのでどこもやっていない。八戸中央通郵便局でまた風景印。ここには期間限定の馬場のぼる風景印もあったため、ついわっさんにも1通送付。中央通郵便局の入っているビルの他のフロアが飲み屋や夜の店だらけ、というのも珍しいが、ビルの名前は「POST CORE」で、大々的に郵便局をフィーチャーした形でそれも意外でかわいい。
さらに奥にずっと歩いて行き、奥に行くほど滅びかけた飲み屋があって惹かれる。また郵便局に行き当たってしまい、八戸吹揚郵便局でまた1つ捺印。壊れかけた昭和遺産という感じの建物をたくさん見て満足し、しかし、昼ご飯の場所が見つからない。食堂のようなものはあるけど、こういうところはたいがい量が多い。そんなにお腹が減っていないので気が向かず、ビルの中に純喫茶を見つけたと思って入ったら「ゲームしない人はダメなんですよ〜」と入店拒否されて驚いた。ゲーム台の並んだ、いわゆるゲーム喫茶と呼ばれるものだったらしい。客は満員に近かった。さらに、そば屋に入るももうランチは終わったと言われ、もう仕方なくなって、モスバーガーに入った。チーズがえらい入った白いモスバーガーのセット。歩き回って暑くなったので、シェイクも飲んでしまう。

ブックセンターのカンヅメブースに戻り、しかしシェイクなんか飲んだせいで眠気に襲われて仕方ない。さらに効率が悪くなり、ランチの選択は失敗だった。あまり進まず、そのうち外にお客さんが集まり始めたようで、16時半でブースを片づけ、しかしここは楽屋的なものもないので、お店の太田さんあたりと話しながらウロウロしているうちに津田さんも来た。今日は津田さんのポリタスTVのイベントに呼ばれたのである。
17時開演、その前にもうステージに上がって、アイドリングトークとして猫の話を、ただ親バカというだけのゆるい話をする。そして開演後は、最近の政治の話からいま住んでいる青森の話、趣味の喫茶店や散歩の話に至るまで、かなり硬軟取り混ぜた形の雑談となった。なにせこの日は終戦記念日なので(この日になったのは2人の予定が合ったからというだけで深い意味はなく、逆に意味ありげになってしまったのが少しやりづらくもあったが)、私も少し戦争の話をしたいと思って、青森大空襲の話をした。私は青森に住むまで、青森大空襲の話を知らなかった。綿密に調べたわけではないのでその場ではかなりうろ覚えで話してしまったが、終戦直前の7月末、青森は狙われた。もちろん空襲自体がひどいことなのだが、さらにひどいのはその時の県知事金井元彦で、空襲が近く起こることを予測しながら市民に退避することを禁止し、市内に戻らない場合は配給を切ると言ったらしい。さらに米軍が撒いた、空襲を予告するビラも回収され、結果として青森は大空襲をまともに受け、1800名弱の犠牲者が出たという。金井元彦はその後公職追放されたものの復帰し、兵庫県知事や参議院議員を務めたらしい。私はこのことを、青森に来て、たまたま市民センターでの展示を見て知った。それまでまったく知らない事実だった。
そういうような話をした。
配信は有料だけど現地に来るのは無料で、イス席は10席だけなので、そこにさらに20名ほどの立ち客が出て、ありがたかった。
最前列にいたひとりのお客さんがずっと退屈そうにしていて、始終爪をいじったり、下を向いたりしていて、態度からして私たちに反感でもあるのかと気になったが、質疑応答になったらいの一番に手を挙げてきたので驚いた。質問が、私に対するかなり基本的なものだったのでこれもまた面食らった。
そのあとはサイン会があり、八戸在住のご夫婦で、過去に私が出たイベントなどの配布物やチケットなどを額装までして大事に取っている方にお目にかかり、こんな熱心に見てくれる人がいるとは、ありがたい、がんばっていかなあきまへんな、という気分になりました。TVブロスの前田さんもわざわざ来てくれた。
終わって軽く打ち上げ、という段になると大雨が降っていた。津田さんの会社の方々と、ブックセンターの太田さんと、南部民芸料理の蔵というお店に行き、ホヤフライ、そばかっけ、せんべい汁など、南部らしいものをたくさんいただく。芸能ゴシップなどだいぶゲスな話ばかりして、そのうち、ツアーをやれるミュージシャンってうらやましいよね、という話になり、津田さんとツアーをやろう、四国に行こう、なんて話にもなる。
青森への終電は23時過ぎの新幹線なので、22時半あたりでおいとま、タクシーに乗る。まだ雨は強く降っていた。八戸の駅はがらんどう。定時から数分遅れの新幹線で新青森に帰るが、大雨被害の影響で、新青森→青森の電車が走っていない。代行で臨時バスが出ていて、そんな珍しいものに乗って青森駅へ。もう雨はやんでいた。お酒のあとだからちょっとアイスを食べたい気持ちもあったけど、お昼にシェイクを飲んでるし、体重が増え続けているのでがまんする。

帰ると小町がニャーーーーーと長い不満を述べるのでべたべたたくさん触ってご機嫌を伺う。スマホをのぞきながら小町をなでまわしたりおもちゃを振ったりしていると、1年以上連絡していない昔の男友達から急にLINE。しかも深夜1時に「電話いい?」と、これはなにかただごとじゃないなと思い、電話を受けると、「最近『結婚の奴』読んでたら、たまたまウチの子が『なに読んでんの』って言ってきたから、アタマの方を読んでやったんだけど、これ子供にものすごくウケがいいね」なんて言ってくる。「結婚の奴」は冒頭がウンコ漏らす話なので、そりゃまあ小学生男子にはウケもいいだろうね。しかしそれは本題じゃなかろうと、ゆっくり話を聞いていると、奥さんの不倫が発覚してたいへんなことになっていて、こんなときどうしたらいいか分からないと思い、相談する相手も思いつかず、私が『結婚の奴』という本を書いているのを思い出して読んでみて、「確かに1対1の結婚生活という制度に問題があるのかもしれない」などと思って、相談に私に電話をかけてきたらしい、まさかあの本がこんな役立ち方をするとは、思わぬところで人のたよりになっていることなんてたくさんあるんだななどと思いながら長々と電話を聞いて、2時くらいになってからお風呂に入って寝た。

能町みね子

北海道出身。文筆業。著書に、『鉄道小説』(共著・交通新聞社)、『雑誌の人格』シリーズ(文化出版局)、『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、『お家賃ですけど』(東京書籍)、『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎文庫)、『結婚の奴』(平凡社)など。

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『結婚の奴』

著者:能町みね子
発行:平凡社
価格:1,650円(税込)
発売日:2019年12月

結婚の奴│平凡社

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