ー日本のメディアが取り上げる「Z世代」について違和感などがあれば教えてください。
竹田:Z世代を代弁する〇〇」や「Z世代を代表する〇〇」という持ち上げ方はZ世代的な価値観と矛盾していると思います。「Z世代に支持されている人」ならまだわかるんですけど。
ー価値観やあり方が多様だから、一人がアイコン化するのは理にかなわない。
竹田:価値観が多様で、流動的で、そして矛盾しているのがZ世代です。矛盾しているというのは、例えば「環境問題やばいよね」と言いながら、新しい服がほしくてファッション誌を買っていたりする。決して完璧ではありません。矛盾を抱えていて、常に自問自答している。「生きづらいなあ」と思っている。だから、Z世代はいい意味で、罪悪感を抱えて生きているなと思います。でもそれは間違うことに怯えているわけではありません。むしろ「自分たちはいつでも学んで改善できる」という姿勢につながっているんです。
ー自分自身が間違う可能性や矛盾を抱えながらも、それを自覚して学んでいこうという姿勢は年齢や世代を問わず重要だと感じます。
竹田:あとメディアの取り上げ方で嫌なのは、「Z世代に売るにはどうしたらいいか?」というようなマーケティング視点。Z世代を消費して、資本主義に回収しようとするのはZ世代的な価値観と相容れません。それから「Z世代は〇〇」みたいな、わかりやすい切り口の記事も反応はいいと思うんですけど、すごく表面的ですよね。Z世代的な価値観を学びたいのであれば、本質を伝えないといけないと感じます。
わたしがZ世代の企画をやらせてもらうときは、打ち合わせをしっかりするようにしているのですが、話を聞いていると、自分たちが思っていることをZ世代に代弁させたいんだなというのが、だんだん見えてくるんです。でもそれは裏返せば、その人たちも同じ価値観を共有しているということじゃないですか。Z世代と同じように、環境問題について変化を起こしたいと思っているし、理不尽な性差別やジェンダーロールに悩んでいる。「Z世代的価値観」が年代を問わず共有できるというのはそういうことです。だから、もっと広い世代に伝わっていいんじゃないかと思っています。
ーわざわざ代弁させなくても、同じ価値観を持っているんだから自分たちでやればいいですよね。
竹田:わたしは変化を見たいんです。今まではAだったものがBに変わった。その原因はどこにあるのか。もちろん全員がBになるべきと言いたいわけではないんですけど、AからBへの移行にはなにかしらの力学が働いているわけで。その変化のプロセスこそ、他のことにも応用できる本質だと思っているから、興味深いんです。
ーメディアは真新しい事象を単純化して伝えがちです。でも、その事象の真っ只中にいる当事者であればこそ、「そんな簡単なことじゃない」と思いますよね。
竹田:当事者が自分たちの世代について語るのは重要なことだと思います。どの世代であっても、世代論は上の世代から一方的に決めつけられがちです。「わたしたちの世代はこういう価値観を持っています」と胸を張って言うことはエンパワリングなことだし、その世代以外の人たちにとってもインスピレーションになるはずです。だからZ世代は自分たちが持っている良さに自信を持って、まわりの人たちを巻き込んでいくくらいでいいんじゃないかなと思うんですよね。
ーもしかしたら、Z世代がポジティブに語られるのは、自分たちのことを自らの言葉で語っているからかもしれませんね。
竹田:「bitch」や「queer」にはもともと侮蔑語として使われていた言葉を当事者たちがポジティブな意味合いに置き換えていった歴史がありますけど、「Gen Z」も似ているところがあるのかもしれません。まわりは変だと思うかもしれないけど、本人たちは「これでいい」と言える、というか。星占いに似ているなと思うこともあります。何座か知ることによって、自分と向き合うきっかけができるみたいな(笑)。
ー最後に、Z世代と先行世代が連帯するにはなにが必要だと思いますか?
竹田:上の世代には「若い子を応援したい」ではなく、「過去の自分にあげられなかった社会をつくりたい」と、いち当事者として考えてくれたらいいなと思います。みんな同じ社会で生きているんだから、どんな社会問題であっても、最終的には自分にも戻ってきますよね。