2025年3月1日。2月の“お迎え会”(作品のオンライン販売会)が終わり、今日はゆっくり自由に過ごすことにした。
自営業を始めて以来、自分は休みをうまくとることができない、とすごく苦手意識を持っている。父親も同じく自分で物を作って自分で売る、というスタイルを取っている個人事業主で、わたしは幼い頃からその姿を見て育ったけれど、その父は土日はきっちりと休むという働き方だ。朝も決まった時間に早起きして、ウォーキングやシャワーや朝食を済ませ、夕方にはきっちりと仕事を終わらせ夜はゆっくり休み、さっさと風呂に入り早く寝る。そのサイクルは何か行事ごと等で大きくスケジュールがくるわない限り毎日続けられる。
一方わたしはというと全く、一切仕事をせず、ちゃんと休みをとったのは果たして最後はいつか? はっきりしない程だ。休みであろうと朝目が覚めると同時にすぐに制作や、やらなければならない仕事について頭の中で整理し始め、それがうまくいかないうちに一日が始まってしまい、そうこうしているうちに夕方になり、夜になり、結局のっそりと作業を始めてしまうといった始末……。
今日は休み! そう決めたんだ! と(いつもの休日と同じく)強く心に決めてきっちりと休む努力をまじで本気でやってみることにした。
急に思い立ち、午前中のうちからひとり高円寺(大好きな街!)へ出掛け、ある古着屋に向かう。そこには様々な時代の洋服やアクセサリーやラグやブランケットやぬいぐるみなどなどが並んでいた。既製品、どこかの誰かが手作りしたもの、破れたもの、キラキラしたもの……整頓されスッキリとしており至極静かな店内だが、ひとたびラックの品々を一つまた一つと眺めると、購買意欲を掻き立てるような香りや音楽などその他の要素を必要としないほどに賑やかに感じられる。
わたしは手編みのニットのパーツやオーガンジーらしき素材や貝殻を加工したような柄のサークル型のビーズがたくさん縫い繋げられたコラージュ作品のような、不思議で美しいブルーのジャケットで手を止めた。まるで何光年も前から輝き続け今やっとわたしの視界に届いた星の煌めきのように、現在に辿り着くまでの時間の移り変わりを感じさせるようで輝いて見えた。釘付けになった。ただ古く美しいだけでなく、こんなジャケットを作ることができる、時間の流れがまるでゆったりとうねる大きな海のように感じられるそんな時代がもしかしたらあったのかもしれない、そんなことまで想像させた。そしてそれは今もこの世の、いやこの宇宙のどこかにもしかしたらまだあって……などとわたしは更に妄想を膨らませた。
すぐにそのブルーのジャケットを買い、そのまま羽織って店を出た。
歩きながらぼんやりとわたしの作った誰かに迎え入れられたたくさんの縫いぐるみたちのことを思った。それらは誰かにとって、ほんの少しでも煌めく星や大きな海のような存在になっているだろうか。もしくは、まだ見ぬ、いやわたしが見ることのないほどの遠い未来でどこかの誰かの星や海になれているだろうか……。
今日は仕事をしないし考えない! と決めていたので、わたしは縫いぐるみたちについて考えるのをやめた。そしてどこの喫茶店で遅めの昼食をとろうかということに考えをシフトし集中することにした。薄手のはずのジャケットはとてもあたたかく、わたしを早々とうまく休日を過ごせた気分にさせてくれた。一日の足取りを、気持ちを軽くしてくれた。