再エネ100%と公正な社会を目指すプロジェクト「ワタシのミライ」が企画
2024/12/2
猛暑に豪雨災害。「昔はこんなじゃなかった」という声をよく耳にします。着々と私たちの日常を変えていく気候変動。あまりにも大きい地球の問題に、私たちはどのように近づき、環境破壊の手を止められるのでしょうか。
毎年9月、世界中で国連未来サミットに合わせた気候アクションが行われます。再エネ100%と公正な社会を目指すプロジェクト「ワタシのミライ」は9月14日〜9月29日に「気候アクションウィーク」を開催し、全国でさまざまなイベントやアクションを実施。東京では「地球のため わたしのため」と題して、9月29日に東京都・下北沢BONUS TRACKにてマルシェイベントが行われました。色鮮やかな野菜や地元の食材を使った料理のほかにも、ZINEや古着、アクセサリーが並ぶマルシェ。さらに、トークを通して気候変動について学ぶ場も。
イベントの企画をした、写真家であり環境アクティビストの立山大貴さんへのインタビューとともにイベントレポートをお届けします。小さな選択、小さな目線から変えていく一歩になるように。
2023年、国連のグレーテス事務局長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と気候変動の深刻さを訴えました。そして今年、日本では2023年を上回り、平均気温が最も高い7月を迎えました(※1)。日々肌で感じるようになった気候変動。世界中で洪水や森林火災、干ばつなどさまざまな影響が起きていますが、これらはただの自然災害ではなく、私たちの生活によって後押しされたもの。気温上昇を抑えるためのタイムリミットと言われる2030年が近づく中、私たちはどのように気候変動と向き合うことができるのでしょうか。
気候変動の大きな要因である化石燃料。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに転換することは、喫緊の課題となっています。環境NGOを中心に、多様な社会問題に取り組む団体が集まったプロジェクト「ワタシのミライ」は、再エネ100%と公正な社会を掲げ、これまでもさまざまなアクションを行ってきました。去年の「気候アクションウィーク」では気候マーチをしましたが、今年はマルシェイベント。
本イベントの企画を行った立山大貴さんは、気候変動が生活と地続きであることを感じてもらうために、文化やアート、音楽と繋げたいと思い、マルシェをやることに決めたと言います。
立山:マーチは一緒に声をあげることで、権力に対してアピールすることができるし、連帯によるポジティブな希望を感じられる場です。ただ、個というよりも群として訴えかけるので、方向や長さの違う矢印を一つに整えるようなエネルギーの持っていき方ですよね。マルシェだと、一人ひとりの矢印の違いや興味の違い、個性やユーモアが発揮されやすいように思います。来た人同士が食べたり話したりしながら交流することができる、マーチとは異なる一過性で終わらない場所もつくりたいというのがありました。
また、マーチやデモの場ではなかなか集まれない人とも思いを共有したかったと話します。
立山:普段マーチに来ていない人やSNSで発信していない人は、気候変動に対して同じ思いではないように見えてしまうことをとても寂しく思っていました。今回マルシェで呼んだ人たちは、地球を消費しないあり方を仕事を通して体現しているけど、そもそもマーチのない地方に住んでいたり、お店の営業があってマーチには行けなかったりする。そういう人たちと一緒に考えていくために、声を出すだけじゃない連帯や表現の場所になってほしいと思いました。
マルシェに集まったのは、ヴィーガンフードや古着、ZINEやアクセサリーとさまざま。フードのほとんどはヴィーガンで提供されていました。牛の排出するメタンガスや牧草地拡大のための森林伐採など、畜産業は環境破壊の大きな要因のひとつであるため、肉食に頼らない食生活は環境負荷を下げることにつながります。
代々木にお店を構えるCIMI restorantからは、SHO Farmの野菜を使ったヴィーガンミネストローネと鹿の煮込みが。プラントベースの料理をメインとしたレストランですが、生態系の変化により数が増えてしまった鹿は害獣として駆除されることが多く、その命を無駄にしないようにと鹿肉を使ったメニューもあるそう。
会場で提供されるフードは、すべてリユース容器もしくは紙の容器で提供。リユース容器をシェアすることでプラスチックゴミを削減するサービス「Megloo」の返却BOXが設置されていました。
「地球のことを考えることは何かを我慢するイメージがあるけど、ポジティブで豊かなものでもある」と立山さんは話します。古着やアクセサリー、新鮮な野菜が会場を彩り、思わず「なにこれ!」と立ち止まってしまうような、高揚感で満たされていました。
マルシェに立ち寄った人が学びを持ち帰れるようにと、さまざまなトークも開催されました。「Let’s Talk About Environment」をモットーに活動するオープンコミュニティSpiral Clubは、「地球とわたしの豊かさについてみんなで考える」をテーマに参加型のトークセッションを行いました。まるく円になり、「朝起きて最初になにを思ったか」を共有する自己紹介からはじまります。一人ひとりの生活が垣間見えたあとには「地球とわたしの関係性」を丸い紙とクレヨンで思い思いに表現します。
立山さんもメンバーであるSpiral Club。気象予報士になるために大学で気象学を学んだことで気候変動について知り、何かアクションができないかと思い見つけたのがSpiral Clubだったと言います。Spiral Clubのメンバーが気候変動へのアクションをはじめた理由はさまざま。食べ物をケアしはじめたことや動物福祉の観点、海外旅行で実際にダメージを受けた土地を見たことなど、それぞれのきっかけがあると言います。
今回のイベントの「地球のため わたしのため」というタイトルは、少しでも自分と地球のつながりを感じてもらいたいと思い決めたそう。教育の機会の少なさや住んでいる環境によって、気候変動を自分ごとにできない現状に問いを投げかけます。同じくSpiral Clubのメンバーであり、本イベントの広報を務める小林七海さんは、クィアやフェミニズムとのつながりについて話します。
小林:私はこれまで主にクィアやフェミニズムの運動の中にいて、そこではさまざまな問題を知っていると同時に心を痛めることができていました。一方で、気候変動の問題に関して涙が出たり、痛みを感じるということは少なかったんです。Spiral Clubのメンバーとともに住み初めてから、やっと地球や生き物、植物が傷ついていることに心で痛みを感じるようになり、そこではじめて自分ごとにできたと思いました。クィアもフェミニズムも気候変動もそれ以外も……、コミュニティを超えて集まって話すことによって、痛みや怒りなど感情の共有がもっとできたらいいなと思います。
大学まで地元の熊本で過ごした立山さん。近所の大きい川が氾濫するなど、豪雨災害による被害を身をもって実感していたと言います。
立山:地域や家がダメージを受けてはいるけど、それに慣れている分回復する力が強くて、豪雨が増えていることが人間の社会活動が原因だということに意識が向きづらかったり、そもそも知らなかったりする。ニュースにも出てこないし、本屋も少ない。あったとしても気候変動について学べる本はなかなか置いていません。東京に出てきたら話せる場があったり、インディペンデントメディアが発信したりしている一方で、気候変動を実感できる機会はあまりないですよね。情報は東京に集まっていて、実感は地方にある。どうやったらそこをつなげられるのか、ずっと考えてきました。
今回のイベントも、移動時のCO2排出量を考えるとローカルの出展者で揃えた方がいいけど、地方に住む人と関われる機会を作りたくて、熊本、徳島、群馬、福島、茨城からも参加していただきました。地方のみんなの実感と東京の情報やアクティビズムが交わる機会となれば嬉しいです。
また、「再エネ100%」も地方と都市の非対称性を抜きにしては語れません。
立山:原発が都市には建たないように、風車も太陽光パネルも地方に建てられます。メガソーラーとなると、広大な土地のある北海道や地元熊本の阿蘇山などで開発が進んでいます。しかし、基本的には、そこで作られた電気はその土地ではなく、都市部のために使われてしまいます。東京でも設置が進められていますが、見た目が良くないから美しい建築には付けたくないという人が多いですよね。それが地方の山や畑ならいいとされている。そういう搾取の構造はかなり課題で、そこを考えずに、都市部に住む私たちがただ再エネを増やして欲しいと訴えるのは違和感があります。
今回アイスクリームを出店しているARBOL ICECREAMのある熊本県山都町は、九州でも最大規模のメガソーラーがある町で、お店のすぐ近くの山が太陽光パネルで覆われています。アイスを買って話すことでメガソーラーの存在を知れるというように、まずはそこに住む人の顔を思い浮かべられて、搾取していることを見えるようにすることが大事だと思います。
会場入り口で配られるパンフレットには、さまざまな団体の情報が。Spiral Clubに出会ってはじめてアクションができるようになったという立山さん。「いきなり気候変動の話を聞いても難しいし、受け止めきれないと思います。お店をフォローしたり、自分に合ったコミュニティに行ってみたりするところからはじめてほしい」と言います。
Spiral ClubのメンバーがシェアハウスをするSpiral Houseでは、気候変動に限らず都知事選やパレスチナについてなど、日頃からさまざまな話題について話しているといいます。危機的な地球環境に心理的不安や絶望感を抱える人も増えていますが、不安なことやモヤモヤしていることを、安心できる場で吐き出せることが精神的なケアにつながっていると立山さんは話します。
地球規模の問題は、世界の政府や企業が動かなければ解決できません。しかし、そのほかのさまざまな問題と同じように、一人ひとりの行動が着実に風潮を変えていきます。
立山さんは、「気候変動は自分が影響をもたらす感覚がないと思いがちですが、一人ひとりの仕事や暮らしと繋がっています」と話します。たとえば、明日の朝ごはんについて。きれいな景色が広がっていた山や川について。暮らしとつながっているからこそ、話すきっかけもたくさん散らばっているはず。
気候変動を加速させないために、自分の生活を見直すこと。それを周りに共有してみること。そうして輪をつないでいき、より大きな変化を求めて声を上げていきたいと思いました。
※1…気象庁「日本の7月平均気温偏差の経年変化」より
イベントで配布されていたパンフレットより、「地球のため わたしのため」がおすすめする今すぐできるアクションとコミュニティを紹介。詳しくはこちらからパンフレットをご覧ください。
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立山大貴
写真家/Spiral Clubのメンバー。写真家である前に一人の人間であることに立ち返り、暮らしをみくびらないことを大切にしている。日々の中で自然と沸き起こる感情に身を委ね、1年間撮り続けた写真を手製本した写真集「灯」を2024年1月に発行。南方書局工作部にて額縁の製作も行なっている。
小林七海
2000年生まれ、東京在住で編集者として働く。最近はSpiral Clubでの活動に注力中。ノンバイナリーとしてLGBTQ+の権利、フェミニズムに関する発信も行う。自然、生き物、人が大切にされる社会を楽しみながら作っていきたい。(They/Them)
プロフィール
『地球のため わたしのため』
日時:2024年9月29日(日)11:00-19:00
会場:下北沢ボーナストラック、世田谷代田仁慈保幼園
主催・運営:ワタシのミライ
出店:AIueO、ARBOL ICECREAM、Appartement、CITYLIGHT BOOK × TWO VIRGINS、DEPT、FarmMart&Friends、HAIYO、RANKO、Sakumag、SHIMAI VINTAGE、yaow、パタゴニア日本支社、青栁龍宙/和蝋燭Yagi-
ポップアップレストラン:CIMI restorant
トーク:コムアイ × 太田光海 × 清水イアン、松野玲子(パルシステム東京 理事長)× 酒向快(SHO Farm)× 林恵美、黒部睦 × 二ノ宮リム虹 × 藤尾歩実(Frindays For Future Tokyo)、Spiral Club、350 Tokyo、森の学校みっけ
パフォーマンス:Kana Sakatou+Lisa Tsuchiya
こども広場:こども服と絵本の交換会、かるたや絵本で気候変動を学ぼう!
展示:下司悠太
イベント情報
ワタシのミライ
国際環境NGO FoE Japanやグリーンピース・ジャパンを筆頭に、さまざまな社会問題の解決に取り組む団体が連帯し、再エネ100%の公正な社会をめざすプロジェクトとして、2023年に発足した学生や市民による運動です。
<運営事務局>
国際環境NGO FoE Japan、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、350.org Japan、ほか
プロジェクト情報
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me and youの竹中万季と野村由芽が、日々の対話や記録と記憶、課題に思っていること、新しい場所の構想などをみなさまと共有していくお便り「me and youからのmessage in a bottle」を隔週金曜日に配信しています。
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