しずかな声も、騒がしい声も。ものづくりから始まるアクティビズム
アートやアクティビズムの多様なあり方を模索し、共に作っていくために。ZINEは、ひとりでも、言葉がまとまらなくても、ペンと紙さえあれば、そこに自分の声と言葉を残すことができます。そんなZINEや雑誌を作る人々が、しずかな声や騒がしい声を携えて集まったのが『NOISY ZINE & BOOK Activism / Feminism / Queer の交差点』です。
総勢68組が出店。ZINEや本や手芸、創作を通してつながるアクティビズム
2024/10/13
カルチャー、アクティビズム、フェミニズム、クィアが交差する1日限りのイベント『NOISY ZINE & BOOK』が東京都・下北沢のボーナストラックで2024年6月8日に開催されました。アーティスト・super-KIKIさんの初のPOP UPに合わせて開かれたこのイベントは、主催のFRAGENとsuper-KIKIさんのお姉さんである宮越里子さんによるキュレーション。ZINEや雑誌、レコードやアート作品などをつくる68組が参加しました。
書店によるブースから個人出店まで、日々さまざまなフィールドで活動する人々が集まったこの日。風が吹き抜ける広場で、ZINEやグッズを手に取りながら交流する様子が見られました。どのような思いと、どのようなものを持って集まったのか。出店者の声を紹介しながらイベントレポートをお届けします。
アートやアクティビズムの多様なあり方を模索し、共に作っていくために。ZINEは、ひとりでも、言葉がまとまらなくても、ペンと紙さえあれば、そこに自分の声と言葉を残すことができます。そんなZINEや雑誌を作る人々が、しずかな声や騒がしい声を携えて集まったのが『NOISY ZINE & BOOK Activism / Feminism / Queer の交差点』です。
POP UP会場を抜け、広場の入り口にブースを構えるのは、「さまざまな政治的感情を考察する」翻訳出版団体「Political Feelings Collective」。今回のイベントには、これから出る本を紹介するZINEを持ってきたそう。現在翻訳中の『How We Get Free: Black Feminism and the Combahee River Collective』は、1974年にボストンで結成されたブラックのレズビアンフェミニストによる組織「コンバヒーリバー・コレクティヴ」に関するもの。彼女たちが起草した「コンバヒーリバー・コレクティヴ・ステートメント」は、現在のフェミニズムやクィア理論のベースになったような考え方を先駆的に描き出しているそう。今回販売しているZINEは、この本を翻訳する中で出会った本やテキストを紹介していると言います。
他にも、海外のフェミニズム・クィア書籍の翻訳を手がけた方々が出店しています。野中モモさん、平岩壮悟さんが持ってきたのは、4月に出版されたばかりの『読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門』。ロシアのプロテスト・アート集団プッシー・ライオットの創設メンバーであるナージャ・トロコンニコワが2018年に刊行した『Read & Riot』を翻訳したもの。発売当初に読んだ平岩さんがXで「翻訳企画をやりたい」と呟いたところ、野中さんが手を挙げたと言います。
アナキズムとDIYをテーマに書籍やZINE、グッズを扱うショップ兼スペースIRREGULAR RHYTHM ASYLUMは、広島でBarbarian Farmという畑をやっている友人のZINEをメインに持ってきたそう。Barbarian Farmを運営するウィリアム・シャムさんが2019年にパレスチナに滞在し、現地の子どもたちにスケートボードを教えた日々の滞在記録と写真がまとめられたZINEが置かれています。
IRREGULAR RHYTHM ASYLUMで活動している版画コレクティブ「A3BC」は、反戦・反核・版画を掲げて10年が経ったと言います。10周年を記念し作られたZINEには、「今反戦を守らなくてはいけない理由」などについて対話した様子が収録されています。メンバーの中村さんは、「半年くらいかけて話し合いました。最初は質問に対して誰かが答えるという形にしようと思っていましたが、みんなで話し合って意見をまとめるという形になりました」と話します。
会場では、版画や手芸など、さまざまなものづくりを通して政治や社会と関わる様子が見られました。ペンと紙だけでなく、木や毛糸も声を発するツールになるのだということを実感します。ねむしんさんは、10年ほど編み物をしているそう。セーターを編んでいる間に考えたことや見たドラマについてZINEにまとめていると言います。
深夜営業のDJバーの上のレコード屋さんRawmen Recordsと共同ブースで出展したAmritaは、さまざまな国から集めた雑貨たちを置いています。「普段は夜に開くお店なので、太陽の下でみたい子たちを持ってきた」と言います。
会場には、この他にもさまざまな出店者が。一つ一つのブースでお話を聞いていると、広場に差し込んでいた光は、あっという間に落ち着いた西日に。
デモではない場所で、こんなにもメッセージTシャツを着ている人や、さまざまな「Free Palestine」のパッチを付けている人が集まっている、ということに高揚感が募る1日でした。
さらにPOP UP関連イベントとして、6月9日には、super-KIKIさんと宮越里子さんによるトークショー「社会運動とデザイン/アート 〜思想強めのブリコラージュ〜」が開催。ボーナストラック内にある本屋B&Bでは、「社会変革のためのブックフェア 〜わたしとあなたをかき乱す問いたち」が1ヶ月に渡って行われていました。アクティビズムや政治、フェミニズム / クィアにまつわる本が、super-KIKIさんとFRAGENの田代伶奈さんによってセレクトされました。
3日間のPOP UPに合わせて開かれた数々のイベント。創作を通してさまざまな人の声を聞き、何かを持ち帰ることで、声を上げ続けるためのエネルギー補給ができるような時間でした。来場者同士の軽やかなつながりができることはもちろん、イベント目的で来ていない通りかかった人にとっても、ふらっと足を運びやすい場所となっていたように思います。
株式会社FRAGEN
社会のなかで、問い、行動しつづけるために、みなさんと伴走するための存在。Webキャンペーンや広報、ブランディング、イベントコーディネートが得意。主な活動フィールドは、政治、アクティビズム、カルチャー。D2021運営。映画『重力の光』配給/制作。上映会や読書会、勉強会や音楽パーティなども主宰している。
Reina Tashiro / Mizuki Kimura
宮越里子
デザイナー/アクティヴィスト 『ミュージック・マガジン』『10代に届けたい5つの“授業”』『布団の中から蜂起せよ』『BLの教科書』『ウーマン・イン・バトル~自由・平等・シスターフッド!~』など、装丁、エディトリアル/グラフィックデザインを中心に手がける。共同制作フェミニズムZINE『NEW ERA Ladies』編集・デザイン担当。『ユリイカ』パク・チャヌク座談会、カルチュラル・タイフーン、ワークショップや寄稿など、幅広く活動中。
プロフィール
11月1日(金)〜3日(日) 銀座東急プラザにてFRAGEN MARKETが開催。ZINEブースやアートピース、 “政治的衣服 SUPER-KIKI POP UP”も出展。SUPER-KIKIの一点もの古着リメイク/定番アイテムをお見逃しなく。
イベント情報
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