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生理の個人的なエピソードをグラフィックレコーディングで可視化。イベントレポ

折りたたまれた想いを話そう。murmo、SISIFILLE、Rinē主催「プリーツ倶楽部」、清水淳子がゲスト

生理や更年期など心身の調子のゆらぎを抱えながら日々を生きる人々が、それぞれのエピソードの共有を通して、日々を心地よく生きられることを目指すコミュニティ「プリーツ倶楽部」。発起人は、初心者向けの月経カップブランドmurmo(マーモ)代表・高島華子さん、オーガニックコットンを使った生理用品を作るSISIFILLEのブランドコミュニケーター・cumiさん、吸水ショーツとブラレットを手がけるNeith(Rinē)代表・信近エリさんの3名。異なる生理用品を展開するブランドが集まって、クラブ活動のようにカジュアルに支え合える場を作ります。

そんな「プリーツ倶楽部」最初のイベントとして、7月17日にトーク&グループセッション「折りたたまれた想いを話そう about『生理』」が開催されました。発起人3名によるトーク、清水淳子さんによるグラフィックレコーディング、来場者同志のグループセッション、さまざまな生理用品の展示……と、盛りだくさんな夜になりました。イベント終了後も、会場ではプロダクトを手に取って話したり、グラフィックレコーディングを眺めたりと、たくさんの輪が。来場者の声を中心に、イベントレポートをお届けします。

どんな生理用品を使ってる? 月経カップ、吸水ショーツ、紙/布ナプキン……素材の違いも

会場は、下北沢BONUS TRACKのギャラリー。下北沢と世田谷代田をつなぐ沿道から覗けるような、前を通る人にも開かれたスペースです。

まずは発起人3名のトークから始まります。「異なる生理用品のブランドだけど、互いに助け合い、仲間を増やせるようなコミュニティにしたい」と話すmurmo・高島さん。今回グラフィックレコーディングを導入した意図として、「話しておしまいにするのではなく、会話を可視化して残したい」と言います。

生理の個人的なエピソードをグラフィックレコーディングで可視化。イベントレポ

左から、高島華子さん、信近エリさん、cumiさん。奥でグラフィックレコーディングを行っているのが清水淳子さん

3人は、生理用品の開発を仕事にしていることから、「実際なにを使っているの?」と聞かれることがよくあるそう。まずは、それぞれが普段どんな生理用品を使っているのかを話すことに。

高島さんは月経カップをメインに使いながら、吸水ショーツと併用するそう。Neith(Rinē)・信近さんは、生理がはじまりそうなときから終わったか怪しいときまで、1週間通して吸水ショーツを穿くと言います。Rinēの吸水ショーツはかなり吸水量が多く設計されていますが、多い日はタンポンも併用することで経血を外に出さず、生理であることすら忘れられるそう。

出産を機に肌がかぶれるようになってしまったというSISIFILLE ・cumiさんは、一般的な紙ナプキンが使えないことから使い切りのオーガニックコットンナプキンと布ナプキンを併用しているとのこと。

3人ともそれぞれの身体に合ったプロダクトを選び、組み合わせることによって生理の期間を過ごしていることがわかりました。そこで来場者にも普段使っている生理用品を聞くことに。やはり一番使用されているのは、紙ナプキン。しかし、そのなかでも自然由来の素材のものを使用している人が半数と、支持の高さが伺えます。次いで人気だったのは吸水ショーツでした。

PMS、生理痛、排卵痛。個人差のある症状を、職場や家庭で共有するそれぞれのやり方

ここからは、事前に来場者の方から寄せられた質問に対して、会場全体で考えていきます。まずは生理痛やPMS(月経前症候群)について。会場では、メンタルとフィジカルの両方にPMSが出るという人が大半。信近さんは、悲しくてたまらないときがあればイライラして止まらないときもあり、その時々によってPMSの症状が変わるといいます。cumiさんは、数年前から排卵痛がくるようになったそう。排卵痛とは、卵巣から卵子が排卵されるときに生じる痛みのこと。生理の約2週間前に起こる症状で、個人差がありますが、来場者の一人は「生理痛とほぼ変わらない痛みを感じる」と話していました。

このような、完全にはコントロールできないPMSや生理痛、排卵痛とどう向き合うか、周囲の人とどのようなコミュニケーションを取るべきなのか悩む人も多いのではないでしょうか。cumiさんは、息子さんが3歳くらいのときから「ママ今生理だから、少しイライラしちゃうんだ」と言うようにしていたそう。高島さんも、職場で会議の際に「生理だからあまり調子が良くない」「顔が暗いかもしれないけど不機嫌なわけではない」と伝えていたと言います。家庭や職場は、小さなコミュニケーションの積み重ねが必要な場です。「今生理だから」と伝えることは、意図せぬすれ違いを防ぐことにもつながるように思います。

「いまだに生理のことが分からない」「生理に振り回されている」

続いて、トークを踏まえて来場者同士のグループセッションが行われます。さまざまな年齢やさまざまな環境。それぞれ、どのように生理と向き合っているのでしょうか?

あるグループでは、cumiさんの話ではじめて排卵痛を知ったと盛り上がる様子も。子宮内に装着することで月経がこなくなったり経血量が少なくなったりするミレーナを使用している人は「生理はこないのにお腹が痛くなるのが不思議だったけど、排卵痛だったんだ」と気づいたと言います。「痛みの場所によって、どちらの卵巣から排卵されているのかわかる」という人も。排卵痛がない人からは驚きの声が上がります。

そして生理がはじまってから何年、何十年と経つのに、いまだに生理のことが分からない、生理に振り回されているという声はどのグループからも聞こえてきました。さらに、振り回されているという状況は共有しつつも、それぞれの体質や年齢、環境によって異なる具体性が。

生理が3ヶ月に1回起きるようになるピルを服用している人、外出先ですぐに吸水ショーツを交換できるように生理期間中はなるべくスカートを履いている人、閉経間近になり、少量の経血のためにナプキンをたくさん持ち歩くことにわずらわしさを感じて、吸水ショーツを使うようになった人など、数人集まっただけでもまったく違う症状と対策が集まりました。

これからも続いていく私たちの「生理」。それぞれの差異について丁寧に考え続けていく

イベント終了後は、完成したグラフィックレコーディングに来場者が付箋でコメントや感想を貼って、イベントの記録をつくっていきます。「同棲していないパートナーの家にナプキンゴミをおくのが気まずくてコンビニ袋に入れて持ち帰っていた……」「生理前の落ち込みがPMSだと気づいてからは冷静に受け入れられるようになった」というこれまでの経験や、「murmoの月経カップがドイツ製のものよりも薄くて入れやすかった!」という情報まで、どんどん書き加えられていきます。

「生理と合理性をテーマに話してみたい。フェムテックは合理性と結びついていると思うが、それは資本主義に巻き込まれている感じもする」という声や、「自分には生理があるし、“フェムテック”が必要だけど、ノンバイナリーで“女性じゃない”ことで輪に入れないことが多い……」という声など、フェムテックのこれからを考える上でも重要な声が集まりました。

会場では、murmoの月経カップ、Rinēの吸水ショーツ、SISIFILLEのオーガニックコットンを使ったナプキンの他にも、さまざまな選択肢の提案としてHIKARI underwearの布ナプキンや台湾のブランド・フルムーンガールの月経ディスクも展示されました。プロダクトを手に取りながら、使い方の説明を聞いたり、自分の症状と照らし合わせたりする様子も見られました。

さまざまな人たちが声を上げ、想いを形にし、少しずつフェムテックが盛り上がってきたおかげで、日々の選択肢が広がりつつあります。こうしたらもっと暮らしが快適になる、煩わしい生理を忘れて仕事に集中できるという情報が増えてきましたが、「生理」を考えるときに重要なのはプロダクトだけではありません。一言で生理と言っても、生理と付き合う私たちの身体も心もそれぞれに異なります。どうやって周りの人と話したらいいんだろう? 生理のどんなところが面倒くさいと感じるんだろう? そういった生理にまつわるそれぞれの差異について丁寧に考え続けていくことも、私たちの「生理」に含まれるはず。

イベント終了後も来場者同士が輪を作りながら話していた姿に、ゆるやかなつながりを実感しました。また、グラフィックレコーディングを眺めながら新しい話題が生まれる様は、我慢したり翻弄されたりしがちな状況を打開するための、みんなで参加する会議のようでもありました。「プリーツ倶楽部」のこれからが楽しみです。

プリーツ倶楽部
「プリーツ倶楽部」は、生理や更年期など日々変化する心や体のゆらぎと共に生きる仲間たちと集い、心身にまつわるエピソードなどについて対話したり共有することで、ゆらぐ日々を心地よく生きられることを目指すコミュニティです。

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murmo代表 高島華子

映像プロデューサーとして、ドキュメンタリー番組制作やブランドのコンセプトムービーの企画制作などに従事。その後、月経カップやフェムテック製品との出会いをきっかけに、今年4月に月経カップブランド「murmo/マーモ」をローンチ。生理の不快や我慢を減らし、生理ライフが楽になる未来を目指し、活動している。

murmo

SISIFILLE ブランドコミュニケーター cumi

幼少期をインドネシアで過ごし、大学卒業後はアパレルでPRなどに従事。2015年に株式会社パノコトレーディングよりオーガニックコットンブランド「SISIFILLE」を立ち上げ、生理用ナプキンの企画を担う。現在はサンフランシスコベイエリアを拠点に、人と人とのつながりやコミュニティーづくりにフォーカスをしてブランド内外で活動している。

SISIFILLE

Neith代表 信近エリ

2004年よりシンガーソングライターとして自身の作品をリリース。女性が女性特有の悩みによってパフォーマンスを左右されることなく、心身ともに健やかに過ごすサポートをしたいという想いから2020年12月に株式会社Neithを創業し、吸水ショーツや吸水ブラレットなどを販売するRinē(リネ)を展開している。

Rinē

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