何度か日記を書こうとしたことはあるけれど、続いたことはない。1ページでも、1行でも、特別な日でも、平凡な日でも。日々の詳細を書き記し、残し、振り返るということが、きっとあまり得意ではない。「紗良は未来志向だね」と、友達から言われたことがある。もし本当にそうだとしたら、日記を書けないのはそのせいなのかもしれない。確かに私の頭の中は、これから「やりたいこと」と「やるべきこと」でいっぱいで、すでに「やり遂げた」ことや「やってしまった」ことへの関心はそれほど強くない。私が過去に関心を持つとしたら、それを踏まえて未来を考えることと必ずセットだ。
言い訳が長くなったが、そんなこんなで「4月14日の日記」を依頼されてから、ちょっとだけ意識的に4月14日を過ごし、そのままふわふわと時が過ぎて、5月14日を迎えている。これは、過去にあまりとらわれない私が、思考を巡らせ1ヶ月前のことを思い出し、せっかくならばそれを踏まえてこれからのことを考える、そんな日記だ。あのとき私、何してたっけ?
そうそう、4月14日は大学で一番仲の良かった女の子の誕生日だ。午前0時をまわってすぐに、サークルのグループLINEが動く。おめでとう!……といっても彼女は今フランスにいて、まだ向こうは前日の夕方5時である。向こうでは26歳、こちらでは27歳の彼女に、祝福の言葉が飛び交う。同じ時に存在しながら、違う時を生きている不思議。彼女がフランスへ留学に行って、もう3年になる。つまりこのコロナ禍とぴったり重なるわけだが、そんな中でもたくましく異国で暮らしている姿に、いつも感心してしまう。去年までは、誕生日に日本から贈り物をしていた。海を超えてプレゼントを贈るというロマンに駆られているところもあったのだが、やはり時間と送料がとてもかかること、そして向こうの配達システムは日本ほど整っておらず、相手が受け取るのも一苦労ということを学んだ。幸い、今年は久しぶりに彼女が日本に帰ってくる予定だ。その時に何を渡そうか、今からわくわくしている。
友達を祝って、眠りについて、起きて。この日の午前はとある講習を受けていた。というのも、私はこの3月に創作の新たな拠点として会社を立ち上げたばかりなのだ。あんまり大きな声で言っていないけど、26歳、会社の代表1年生。1年生が色々手続きをするために、受けることを推奨されている講座がいくつかある。この日のテーマは「販路開拓」。マーケティングやらプロモーションやら、ビジネスの基本が右から左へ流れていく。これは会社を立ち上げて改めて痛感したことだが、この世は経済成長を前提に、様々な競争のもと成り立っている。「あなたの会社が他社より優っているところはどこですか?」「物事をどれだけ効率的にできますか?」「それは早くて安くて簡単ですか?」そんな問いかけを浴び続けるうちにうんざりして、ぼんやり空とか眺めたくなる。成長より成熟を、競争より共生を目指して、「とおまわり」なんて名前を掲げている場合ではないのか。これが資本主義かぁ……と思わず肩を落としたくなるけれど、この社会の歯車でどうにか「ときめき」を見出し、生き延びる術を考えたい。そのための会社ではないか、と再び奮い立つ。私は未来志向かもしれないけれど、ビジネス的な観点での計画性はめっぽう弱い。いつかもう少し余裕ができたら、私の代わりにその辺を考えてくれる人を隣に置くべきかもしれない。
ランチに野菜がたっぷり添えられた、大豆ミートのそぼろごはんを食べた。この日唯一撮った写真なので貼っておく。見た目からして、心と体に優しい。私はビーガンではないけれど、時々ビーガンのお店で食事をする。ビーガン料理は食材や調理法にこだわり、食を大切にする気持ちが細やかなところまで行き届いていると感じることが多いからだ。美味しさとは、心遣いである。