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同じ日の日記

酒とは一瞬のきらめきを手にするために/藤原麻里菜

頭のなかに浮かんだ不必要な物をつくる「無駄づくり」の作者

毎月更新される、同じ日の日記。離れていても、出会ったことがなくても、さまざまな場所で暮らしているわたしやあなた。その一人ひとりの個人的な記録をここにのこしていきます。2022年9月は、2022年9月25日(日)の日記を集めました。頭のなかに浮かんだ不必要なものを発明のようにつくりあげる「無駄づくり」の活動をしている藤原麻里菜さんの日記です。

最近、私は暇だ。時間があるからといって、何か面白いことをやるわけでもなく、ただただ時が過ぎるのをじっと耐えながら待っているという最悪な状態だ。何か新しいことをやりたいけれど、何も思いつかない。とりあえず酒でも飲むかといった感じである。

酒量が増えた。時には昼間から飲むときもある。よくないなと思いながらも、午前11時くらいになると、コンビニまで行って缶チューハイとかビールやワインなどを買い込み、一人でウチで飲んでいる。13時くらいにはベロベロに酔っ払っており、その状態で友達などに「もう私はダメだ」などと連絡をし、迷惑を溶かして固めた塊になり、布団の上でウゴウゴしている。このまま行けば私は友達を失うこと待ったなしな上、アルコールに脳を毒されて何も考えられなくなってしまう。危ない。私は酒を辞めたい。しかし、その気持ちに抗いながらもコンビニに行って酒を買ってしまう。私は何かの病気とか、中毒なのだろうか、そう思うときもある。

酒とは一瞬のきらめきを手にするために飲むものだ。酒を飲んだ先に何か新しい発見があったり、楽しいことがあるはず。そんなことを期待して酒を飲む。1%くらいの確率でそんなことが起きる。道を歩いていたら好みのタイプからプロポーズされるくらいの確率。そんな確率を当てにして私は酒を飲んでいる。不毛だけれど、止められない。ちょっと危機感を感じながらも、まあ、こういう時期だってあるもんだと楽観的に考えている部分もある。10月からは新しい仕事が始まる。そうなったら、多分、こうやって昼間から酒を飲むこともなくなるだろうとの期待がある。というか、この酒の進み具合は、10月から始まる仕事のプレッシャーから来ているに違いないのだ。それさえなければこんなに酒を飲まなくてすんだ。呪うべきは酒を飲む私ではなくてプレッシャーのある仕事だ。私は悪くない! そうやってまた酒を飲む。

どうやったら酒を辞められるのだろうと、断酒に成功した作家の本などを読んで、なるほど。そういう風に考えれば酒を辞められるのか。と、酒を飲みながら考えている。最近は、そんな日々。きっと長い人生でこんなこともあったのだろうと思い出すだろう。

藤原麻里菜

1993年生まれ。コンテンツクリエイター、文筆家。
株式会社 無駄 代表取締役。
2013年から頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeを中心にコンテンツを広げている。
2016年、Google社主催の「YouTubeNextUp」に入賞。2018年、国外での初個展「無用發明展- 無中生有的沒有用部屋in台北」を開催。25000人以上の来場者を記録した。2021年「考える術(ダイヤモンド社)」「無駄なマシーンを発明しよう(技術評論社)」を上梓。
「総務省 異能vation 破壊的な挑戦者部門 2019年度」採択/「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」文化庁メディア芸術祭エンターテイメント部門審査委員会推薦作品に選出/ 2021年 Forbes Japanが選ぶ「世界を変える30歳未満」30 UNDER 30 JAPANに選出される。青年版国民栄誉賞TOYP会頭特別賞受賞。

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