花とメメントモリ。Takako Noelの死生観が表れる、5つの質問

💐今回、ご自身が「花を写真で撮る」ときに大切にしたことや、「花を撮る」ことについて普段から考えていることがあれば教えてください。

今回のTシャツとスカーフのために撮った花々は、育った環境が違うようなお花をLANDさんに集めていただいて、自分の庭に咲いている雑草などを混ぜて撮りました。現実の特定の場所を彷彿させるのではなく、国境線の無い場所、死んだ後に自分がみたいと思うような景色を想像して撮りました。最近は花に限らずどの写真においても、死に近い生を撮りたいと思っています。必死なものを撮りたいです。死に近いからこそ、生がより強調されるそのコントラストの美しさを撮ることに今一番興味があります。

💐ご自身が写真に向き合ううえで、大切にされていることや、こだわりをもっている工程はなんですか？

撮影中に自分がどれだけその対象に対して夢中になれるかが重要だと思っています。光や色彩など自分が好きな条件を集めてその上でコントロールできない要素も入れること。

💐コラボレーションしたお花屋さんと、ご一緒したモデルさんに関して、どんなところが今回のプロジェクトに合うと考えたのでしょう？　また、そのお花屋さんとモデルさんのどんなところがお好きですか？

LANDさんの元々のお店のコンセプト「名も無い場所」というのが今回私が作りたいビジュアルのテーマとすごく共鳴しているなと思い、お願いしました。様々な色彩や形の、一見一緒にすると合わないかな？　と思うお花を大胆に美しくまとめていて、とても素敵だと思いました。

モデルは自分で、セルフポートレートで撮りました。裏テーマが自分のお葬式だったので。中世ヨーロッパでメメント・モリ（ラテン語で「死を忘れるな」）という格言がありました。そしてその言葉を忘れないためにスカルモチーフの指輪を戦時にいく兵隊たちがよく身につけたようです。いつか死ぬという事実を忘れないことで、今をもっと必死に生きれるような意味が込められていました。ありがたいことに、今の日本で、私は、そしてこれを読んでくださっている方の多くは日常的に身体的な意味での命の危険を感じることはあまりないかと思います。ただ、それで幸せかというと何故かそうでもなくて、精神的に危険に晒される感覚が必要になっている。日常が凹凸のないものになって、一生懸命に生きられたかという実感が希薄になると生きている手触りを自分の中で持てないからです。人間は自分自身に何か課題を与えてある程度の危険さというものを常に自分の中に持ち続けたい生き物のように思います。身体的な危険と同じくらい精神的に自分自身を危険に晒すタフさが必要になっている。昨日より好きな自分に近づけるように毎日昨日の自分自身をお葬式に出すというイメージで、それを忘れないため自戒も込めて、スカルモチーフの指輪の代わりになる装置としてTシャツのデザインを考えました。そこでのお葬式は暗いものではなく、新たな自分に生まれ変わるための祝福すべきお葬式になります。

💐普段身につけるものを通して、自身の写真を届けることについてどんな思いがありますか？

届く着地のイメージがポジティブになれることを心がけています。

Takako Noelさんと川村あこさん（LAND）がコラボレーションした花束Tシャツ「フォトグラファーコラボプリント クルーネックT_TAKAKO NOEL」（販売ページはこちら。2022年11月24日まで受注販売受付中）

Takako Noelさんと川村あこさん（LAND）がコラボレーションした花束スカーフ「フォトグラファーコラボプリント スカーフ_TAKAKO NOEL」（販売ページはこちら／2022年12月1日まで受注販売受付中）

💐me and youでは、この場所を通してこれまで触れていなかった考え方や作品に出会えるといいなと思っています。よろしければ、ご自身が影響を受けた作品や、インスパイアされるような活動をされている人とその理由を教えてください。

臨床心理学者の河合隼雄さんの考え方や言葉にとても影響を受けています。幸せとは何か、人はなぜ生まれてどこへ向かっていくのかという、とても膨大で答えがない疑問に対して迷子にならないようなヒントを教えていただきました。